1581話・南湖監獄(3)
魔導宝珠の索敵に因り、この監獄が4つに分かれている事が分かった。
つまり東西南北に監獄庁舎が独立して存在するのだ。
そして4つの庁舎を中央で結ぶ形で、管理棟が孤島の中央に聳え立っていた。
それをガリーは遠目から見上げ、グラキエースに尋ねた。
「どうします? 管理棟に向かいますか?」
「そうですね…聖女の位置が分からないので、まずは看守……いや、所長あたりを捕まえて聞き出すのが良いでしょうね」
然も当然の様に言う伴侶に、ガリーは少し呆れる。
『そんな簡単に所長を捕まえられる訳が……』
いや、永劫の騎士で、初代ラスィア女王であるグラキエースなら可能だろう…と思いなおす。
「え~っと…俺はあんまり自身が無いので、グラキエースさんに合わせますね」
「分かりました。私から離れないで下さいね」
「え……あ、はい」
離れないでと言われても手を繋がれているので、逆に離れる方が難しい。
でも少し嬉しいので黙っておく事にした。
そうして監獄敷地内の西隅から、二人は徐に歩き出す。
現在時刻は夕刻…丁度陽が落ちかけた午後の6時だ。
途中、遠目に外周の壁上に警備兵が見えたが、全く気付かれた様子が無かった。
「んん? 気の所為かな……警備兵が湖の方しか見てないような…」
ガリーの呟きに、グラキエースが囁くように返した。
「恐らくですが魔獣を警戒しているのでしょう。一応は強力な結界が監獄敷地内に張られているので、魔獣が接近しても弾くみたいですが」
「えぇぇ?! そんな結界をグラキエースさんは抜けたんですか?!」
驚くガリーに、「しっ! 小声で!」と諭してガリーは続ける。
「言ったでしょう、私が相殺する結界を張っていると」
「あ……そうでしたね」
それでもガリーは驚きを隠せないでいた。
そもそもグラキエースが展開している相殺結界は対神獣用であって、この南湖監獄の対策では無い。
そう考えるとグラキエースの魔力は、相当に凄まじい物だと思えた。
「それにしても少し解せませんね…」
怪訝そうに呟くグラキエース。
「…? 何か気になる事でも?」
「この監獄敷地全てに"強固な"防壁結界が張られていました。この水準だと起動支柱が有るか、或いは近くに強力な術者が居るかなんです。もし後者だと厄介かも知れません…」
グラキエースが言わんとする事を察したガリー。
「まさか…聖女級の術者が居ると?」
「飽く迄も可能性です。取り敢えずは管理棟に向かいましょう」
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中央に聳立つ管理棟は、東西南北に建てられた監獄庁舎と通路で繋がっていた。
そしてこれら建物から敷地内に出る扉が見当たらず、また窓も灯窓程度の小さい物しか無い。
つまり監獄施設と外部は、完全に隔絶されているようだった。
そうなると当然、グラキエースとガリーは困る事になる。
「まさか出入り口が無いのは想定外です…困りましたね」
管理棟を見上げながら、グラキエースは意外そうに言った。
「いやいや、全然困った感じに見えませんよ」
思わず突っ込むガリー。
「フフッ…バレましたか?」
ガリーは少し呆れた。
『この人…俺で遊んでるのか?!』
もしくは、この状況を楽しんでいるとしか思えない。
「で、どうするのですか?」
「ん〜〜まぁ壁に穴を開けるのが手っ取り早いですね」
「いやいやいや、そんなの気付かれるでしょ。外壁の上で巡回してる警備兵が居ますし、上の方に絶対出入り口が有る筈ですよ?」
「あぁ〜〜良いですね。実に新鮮です」
ガリーの更なる突っ込みに、何故だかグラキエースは嬉しそうにする。
「な、何っ!? 急にどうしたんですか?!」
「あ…いえ、ごめんなさいね。こうやって私に突っ込みを入れるのは、今まで誰も居なかったのです。だから少し嬉しくなっちゃって…」
はにかむグラキエース。
その姿が意外過ぎ、ガリーの心を鷲掴みにした。
『くぅぅ!! 何よ…この可愛い生き物は!!』
などと思いながら直ぐ我に返る。
『イチャイチャしている場合じゃ無かった!』
厳密にはイチャイチャ仕掛けた…が正しいが、これは気持ちの問題である。
故にガリーは自分の両頬を叩いて喝を入れた。
「ふぅ…兎に角、バレないように出来るなら、穴を開けて下さい。無理そうなら外壁の上を探しましょう」
これに一瞬だけ寂しそうしたグラキエースは、直ぐに真顔になって頷いた。
「分かりました…なら穴を開けましょう。気付かれた場合は、ちゃんと気絶させるので心配いりませんよ」
「え…? 殺さないでいてくれるのですか?」
「……おや、意外そうですね。ひょっとして邪魔する者を無慈悲に蹴散らすと?」
「あ…その、戦いには厳しそうな印象だったので。も、もちろん人非人なんて思ってはいませんよ!」
「フッ…冷酷なのは間違い無いですが…」
そこまで言ったグラキエースは、何か感じ取った様子で固まる。
「グラキエースさん…?」
グラキエースは宝珠に触れて言った。
「今、宝珠の1つが南の外壁門に着いたのですが、門自体が全く機能していませんね」
「機能していない?」
「はい。何年も使われた形跡が無いのです。と言うか、態と使えないように資材で固定されていますよ」
「じゃあ、どうやって罪人を収容するのですか? それに…」
「食料や生活用品に飲み水…最悪、飲み水は湖の水を濾過すれば良いですが…」
そう言ってグラキエースは下へ視線を向けた。
「ひょっとすると見えている部分は、ほんの一部なのかも知れませんよ」
「地面の下……まさか、そんな…」
刹那、ガリーはグラキエースとの会話を思い出す。
この監獄は迷宮核の実験場だったのでは?…そんな事をグラキエースが言っていた。
『あながち間違いでは無いかも…』
そして次第に漠然とした不安が強くなる。
「グラキエースさん、急ぎましょう。何だか嫌な予感がします」
「分かりました、直ぐに穴を開けます」
グラキエースは頷くと、管理棟の壁へ右手を添えたのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




