1577話・ガリーの告白と義務
聖女の詳細、それに龍国の内情を知りたいとグラキエースに言われ、ガリーは少しばかり頭を抱えた。
何故なら半ば出奔した身とは言え、自分は龍国の人間だからだ。
隣に座るグラキエースが心配そうに尋ねた。
「不都合な事でしたか?」
「いえ……ここまで手助けして貰っているのに、まだ自分の立ち位置を決め兼ねていて…俺って馬鹿だな〜て…」
「成程…踏ん切りが付いて居ないのですね?」
頷くガリー。
「……」
当初、ディーイーとは協力関係に過ぎなかった。
なのに今は何もかも素っ飛ばし、自分ばかりが助けられている。
「ガリーさんの目的は?」
グラキエースから端的に問われ、ガリーは条件反射で答えてしまう。
「え…あ…せ、聖女を救う事です」
「でも直ぐに救えないから、色々と段階を踏もうとしていたのでは?」
ガリーは今更ながら己の無力を思い知った。
「はい…その通りです。今の私は何の権限も有りませんから」
「だから聖女の元へ辿り着くため、功績を上げて元居た地位を取り戻そうとした。そしてその途上でプリームス様と出会ったのですね」
「初めは目を疑いました…こんな華奢の子が”俺より強そう”だなんて。でも身のこなしは隠せませんから、すぐに声をかけちゃいました」
そう答えながら、ガリーは何故か少しだけ懐かしく感じた。
ディーイーとの出会いからは、それほど経っていない筈なのに。
『それだけ色々有ったって事なのかな……』
「今はプリームス様をどう思っていますか?」
「今は大事な恩人です。きっと一生掛かっても恩は返せないでしょうね…」
「聖女を救出した後、ガリーさんは聖女とプリームス様…どちらを選ぶのですか?」
柔らかな問い。
しかし殆ど間断なく続く問いかけに、ガリーは誘導されていると感じた。
それでも不快では無かった。
その意図が特定の答えへの誘導では無く、吐露させる事だと気付いたからだ。
「流石はグラキエースさんです…伊達に東方諸国の女王だった訳では無いのですね」
正に人心を掌握する力とも言える。
これには大きな包容力が必要であり、それは詰まり他者への慈愛なのである。
『とても俺には真似が出来ない…』
すると少し照れた様子でグラキエースは言った。
「ん~~まぁ、生まれてより他者を統率する宿命にありましたから、年の功…そんな感じですかね」
「宿命…ですか」
やはり生半可な人生を歩んでいない…そうガリーは確信する。
また同時に思うのだ。
こんなに凄い人が仕えているプリームスは、どれ程に壮絶な人生を歩んできたのかと。
「話が逸れてしまいましたね。で、ガリーさんの答えは?」
「俺は……」
考えるまでも無く、実は答えが決まっていた。
「ディーイーは俺にとって高みに在り過ぎるんです。だから俺は…グラキエースさんを選びたいです」
これを告げる事に因って、何かが壊れるのではないか…そう漠然と危惧していた所為で、今まで言えずにいたのだった。
そうすると目が点になるグラキエース。
「……」
「ちょ?! グ、グラキエースさん?!」
『や、やっぱり言うべきでは無かった??!!』
ガリーは血の気が引くのを感じた。
「え……あ……す、すみません。あまりに意外な答えだったので、少し呆然自失になってしまいました」
ガリーからすれば、今のは一世一代の告白なのだ。
それを濁されては堪らない。
「グラキエースさん、俺は意思を示しました。だからちゃんと答えて下さい!」
恋人とは、意外に脆い関係である。
その繋がりには然したる強制力は無く、価値が変われば簡単に解けたり切れたりする。
それを超えた関係に為りたい…そう暗に告げているとグラキエースは察した。
「とても嬉しいです。私も貴女が欲しいと思いましたから」
「じゃ、じゃぁ俺と一生を共に出来ると?」
「はい。ですが1つ条件が有ります」
「じょ、条件…?!」
ここに来て、まさかの難関?!
今度は引いた血の気から、背中からドッと汗が噴き出すのを感じるガリー。
「私は永劫の帝国の国民であり、プリームス様の臣下です。私と添え遂げたければ、ガリーさんも永劫の帝国の国民になって下さい」
それを聞いたガリーは、ヘナヘナ~とソファーへ崩れるように背を預けた。
「…?? ガリーさん?!」
「だ、大丈夫です! ついホッとして気が抜けただけで…」
苦笑してしまうグラキエース。
「フフフッ…脅かさないで下さい。では龍国に拘らず、永劫の帝国の国民として生きるのも吝かでは無いのですね?」
「はい! 是非、俺を国民として受け入れて欲しいです。役に立たないかも知れませんが……」
「役に立つ立たないは関係ありません」
そこまで言ったグラキエースは、失念していた重要事項を思い出す。
「一番大事な事を忘れていました」
「え……」
固唾を飲むガリー。
「プリームス様に忠誠を誓って下さい。これが国民である一番の義務と言えますね」
「そ、そんな事ですか……びっくりした……」
「そんな事って……」
少しグラキエースの声に影が掛かり、焦るガリー。
「いや、違うんです!! それくらいは当然って事を言いたかっただけで…その軽んじている訳では!」
今度はグラキエースが胸を撫で下ろす様子を見せた。
「そうですか……良かった…」
そうして妙に嬉しくなったガリーは、ソッとグラキエースの手を握った。
そんな時、ガリーの首元に縋り付いていたカルボー020が呟く。
「あのぅ……聖女の詳細と、龍国の内情を話すのでは無かったのですか?」
「あ……」
「フフッ……そうでした。随分と話が逸れてしまいましたね」
ウッカリしていたとばかりに声を漏らすガリーに、これはこれで良かったと思えるグラキエースであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




