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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1575話・探知結界への対策

グラキエースと二人きりの時間を過ごし、身も心も完全に絆されてしまったガリー。

正直、一時も離れたく無い気持ちで一杯だ。



「そろそろ身支度をしましょうか」

グラキエースはガリーの頭を撫でながら言った。



今二人は二度目の運動会を終え、ベッドに横たわり余韻を楽しんでいた最中である。

なので当然にガリーは愚図った。

「あぅぅ…もう少しこうして居たいです……」



「目的地に着けば、早急に動かねばなりません。それは貴女も分かっているでしょう?」



優しく諭されたガリーは、何の為に龍国に向かっていたのか思い出す。

「あ…! そうだった!」

そうして跳ね上がるように起き上がり、慌てて身支度を始めた。


本土は神獣の治める勢力圏で、そこでは外敵への対策が十分に為されている。

不用意に国民でない者が侵入すれば、簡単に察知され見つかってしまうのだ。

故に不法に侵入する者は、強固な対神獣結界を張って移動する。


これが可能なのは、神獣の加護を得た聖女級の存在しか居ない。

つまり他国の聖女にしか成し得ない事で、これが工作員として聖女が適任な理由でもあった。


そしてガリー達が乗る次元潜航艇は精霊界アストラルサイドを航行する。

これならば神獣の力は及ばず、簡単に本土内を進む事が可能だ。

しかし問題は目的地に着いてからだった。


囚われた聖女を救うには、当然に精霊界アストラルサイドから出なければ為らない。

そうすると直ぐに侵入を察知され、強力な手勢が来るに違い無いのだ。

因ってガリー達は到着後、直ぐ動く必要があった。



グラキエースもベッドから降りると、手早く髪を結いながら言った。

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。船は直ぐに精霊界アストラルサイドへ隠しますし、外に出れば私が結界を張るので、早々見つからないと思います」



「え…?! 聖女と同じ対感知結界を張れるのですか?!」



「ん? あ〜〜成程。やはり広域探知系の結界が、龍国内に張り巡らされているのですね」



答えにならない返しをされ、ガリーは困惑する。

「あ、いや、そうじゃ無くて…え〜と…そうなんだけど…んんん??」



「フフッ…ガリーさん、落ち着いて下さい」

苦笑しながらグラキエースは、ガリーの背中を優しく撫でた。



するとガリーは直ぐに落ち着きを取り戻す。

その柔らかな手が直に肌へ触れ、実際はドキッとして逆に冷静になったのである。

「す、すみません…グラキエースさんと居ると驚く事ばかりで…」



「プリームス様と居る時は驚かなかったのですか?」



「それはもう色々と驚きましたよ。あんな華奢なのに、素手で簡単に岩を粉砕するし。かと思えば天変地異みたいな魔法を使うし…」

今思えば絶対に体験出来るものでは無い。

正にディーイーとの出会いは、ガリーにとって奇跡の邂逅と言えた。



「それで…私との出会いは如何でしたか?」



「グラキエースさんも同じですよ。初めて現れた時の衝撃と来たら…」

そこまで言ったガリーは、先程までの事を思い出して勘繰ってしまう。

「ひょっとして体の相性の事を言ってます?」



「さぁ…?」



「くっ…!」

『そのつもりで訊いたくせに!』

正直、体の相性は抜群だっただけに、ガリーは物凄く恥ずかしくなる。



「まぁまぁ…そう恥ずかしがらないで、私も驚いているくらいですから。それと結界の話ですが、私が展開するのは中和結界です」



「中和…?」

聞き慣れない言葉にガリーは首を傾げた。



「すみません、説明不足でしたね。中和よりも分解や相殺と言った方が分かり易いでしょうか?」



「あ…それなら分かります。そうなると聖女が使う対感知結界と同じ感じぽいですね」

ガリーは聖女の使徒だったので、その超常的な技を良く知っていた。



「詳しく伺っても?」

などと言いながら、どうしてかガリーの世話をし出すグラキエース。



『あ……自分でするのに…』

とガリーは思いながらも、成すがままにパンツを穿かされる。

実は恥ずかしいながらも少し嬉しかったのだ。



次は手際よく胸の下着を着せながら、グラキエースは反応の鈍いガリーへ説明を促す。

「ガリーさん?」



『うぅぅ…つい愉悦に浸ってしまった』

「は、はい。え〜と…聖女の結界の事ですよね?」



「一応、ぶつけ本番になるので、精度を上げる為にも聞いておきたいのです。出来るだけ詳しくお願い出来ますか?」



「分かりました」

ガリーは気持ちを切り替えて説明を始めた。

「先ず聖女や神子、それに加護の大元となる神獣の力は法力と呼ばれます」


   ※

   ※

   ※


「成程…基本的に法力は魔力と同じなのですね」

大まかな説明を聞き、グラキエースは合点がいった様子で呟いた。



「はい。只、魔力と言うには余りにも強大ですし、ですから神獣の魔力を畏敬を込めて"法力"と言います」



そんなガリーの補足へ、おどけるように返すグラキエース。

「ならプリームス様の魔力も、北方基準で言えば法力になりますね」



「え…? あ…確かにそうですね」

ガリー自身は直に見た訳では無いが、ディーイーは火炎島の神獣ロンヤンを一瞬で消滅させた。

これは即ち神獣と同等…否、神獣を超えた存在と言えるだろう。


しかしディーイーが神龍のように、本土全域へ加護を行き渡らせられるかと言えば微妙だ。

故に思うのである。

ディーイーと現役の神獣が戦えば、どうなってしまうのかと…。


その考えをガリーは慌てて払拭した。

この両者が衝突するなど、あっては為らない。

万が一に起これば、それは列国問題…いや、もはや戦争と言えるのだから。


『きっとディーイーも、そんな事を望んでない』

だからこそ、こうやって察知されぬよう本土に侵入したのだ。



「因みにですが…聖女が他国へ侵入する場合は、神獣の力を相殺する結界を張るのですよね?」



グラキエースの問いに、ガリーは頷く。

「そう俺は聖女から聞きました。本国に張り巡らされた探知結界…これは大気中に満ちた神獣の法力が、その機能の根幹だとか。だから聖女が内包する法力で、大気中の法力を相殺するみたいです」



「ふむふむ。探知結界の魔力硬度…つまり強さですが、大した事は無さそうですね」



「いや…そんな事を言えるのはグラキエースさんだからですよ」

序でに言えば、それにディーイーも含まれる。


そうして突っ込んだ後、グラキエースの行動に首を傾げる羽目になるガリー。

「へ…?」

何やら小さな布を握り、グラキエースが差し出して来たのである。



「へ…って、次はガリーさんの番てす。私に下着を穿かせて下さい」



「え…?! あぁ…そ、そうですね」

『一方的じゃ無くて、相互的なのね…』

少し…いや、かなりドギマギしながら、ガリーは下着を受け取るのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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