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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1574話・ガリーとグラキエース(4)

『うぅぅ…完全に絆されてしまった……』

などと体を洗われながら思うガリー。


劣等感の所為で色々と愚図ったのだが、それをグラキエースが言葉巧みに静めたのである。

否…言葉だけでは無い。

同時に優しく抱きしめたり、優しく撫でたり…これに常人が抗える訳も無かった。



「は〜い、腕を上げて下さい。脇や腕を洗いますから」

ガリーの背中を流していたグラキエースが、次の箇所を指定してきた。



「あ…はい、何だか恐縮です……」



「フフフッ…畏まらないで下さいね」

そう返した後、グラキエースは何を思ったのか突拍子も無い事を言い出す。

「あ、そうだ…今から私と貴女は、恋人同士と言う設定にしましょう」



「えぇぇ?!?」

正直、ガリーからすれば恐れ多い。

相手は永劫の騎士(アイオーン・エクェス)なだけで無く、ペクーシス連合王国の初代女王なのだから。



「妙な反応ですね。プリームス様とは仲間以上で恋人未満の関係なのでしょう? なのに私と擬似的な恋人になるのは嫌なのですか?」

と少し不服そうに問うグラキエース。



「い、いえ! 滅相も無い!! なれる物ならなりたい位です!」



「でも私の提案に釈然としないのでしょう?」



ガリーはモジモジとしながら答えた。

「えっと…擬似的と言うのが、何とも納得出来ないと言うか。気持ちが入らないと言うか…」



「成程…そう言う事ですか。なら本当の恋人同士になりましょうか」



「え……えぇぇ?!?!」



「幸い私には特定の相手が居ませんし、ガリーさんが良ければ如何ですか?」



まさかの提案にガリーは驚き過ぎて固まる。

「……」



「…? ガリーさん? ひょっとして都合が悪いですか?」



何とか我に返り、慌てて答えを返すガリー。

「都合が悪いなんて、とんでも無いです! グラキエースさんこそディーイーが居るのに、私なんかを恋人にして良いのですか?」

そこまで言い切って、直ぐ失言した事に気付く。

『あ……しまった!』


これは飽く迄も、自分から主観的に見た二人の関係なのだ。

つまり窺い知れない事情が必ず有る筈である。

またディーイーとグラキエースは主従関係であり、おいそれと恋人関係などになれる訳が無い…どれだけ慕っていてもだ。



「そうですね…でもプリームス様には皇妃であるアグノス様が居られます。そもそも"私達"が割って入る余地も権利も無いのですよ」



グラキエースは背後に居るので、その表情などの様子は分からない。

それでも声音が明らかに沈んでるのを、ガリーは感じ取れた。

「すみません…配慮の無い事を言ってしまって」



「いえ…気にしないで下さい」

そう言ってグラキエースはガリーの腕を洗い始めた。



『き、気不味い…』

物凄く居た堪れない気持ちになるガリー。

盛り上がりかけていたのに、これでは台無しである。



しかしグラキエースは違ったようだ。

ガリーの両腕を洗い終わると、どうしてか急に抱き付いて来たのだ。



「…??!!」

目まぐるしく変化する状況に、ガリーは対応出来ずに混乱し再び固まった。

『な、な、何?!』

それでも潜在的な欲望は偽れず、体は正直に反応してしまう。



「実は…ガリーさんは私の好みなんですよ」



背後から耳元に囁かれ、ガリーはゾクゾクっと快感に似た刺激が体に走る。

「本当に俺で…良いのですか?」



「勿論です」



もう拒絶出来ない。

いや…端から拒む気など無かった。

今まで踏ん切りがつかず、ただ逡巡していただけだ。


そして言質を得た今、何を憚る事が有るだろうか。

堪え切れなくなったガリーは瞬時に向きを変え、正面からグラキエースを抱きしめたのだった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






湯浴みを済ませた後、直ぐに寝室へ移動したガリーとグラキエース。

だが、そこからの記憶がガリーは少し曖昧になっていた。


まるでたがが外れたように求めたのは、ぼんやりとだが覚えている。

また相手グラキエースも同じく求めてくれたのを、この体が確かに記憶していた。



『……何だか夢の中に居るみたい…』

天井を見つめたガリーは、現実味のない感覚に囚われてしまう。

それは満たされた所為であり、こんなに多幸感を得たのは、実に久方ぶりだったからだ。



「どうかしましたか?」

隣に横たわるグラキエースが尋ねた。



視線を彼女へ向ける。

すると艶かしい褐色の肌が目に飛び込んで、ガリーの意識を激しく刺激した。



「あぅ…」

小さく声を漏らすグラキエース。

虚を突くように、ガリーが急に抱きしめたからだ。



「あ…! ご、ごめんなさい!!」

慌ててガリーは体を離した。


『うぅ…しまった……思わず目一杯抱きしめちゃった』

ディーイーの時は華奢すぎる体の為、力加減には細心の注意を払った。

なのに同じ配慮が出来ず、自分でも驚いてしまう。



「大丈夫ですよ。その程度で私は壊れませんし、少し強くて強引な方が私は好きです」

とニッコリ微笑むグラキエース。



「…!!」

その言葉でガリーは殆ど確信する。


恐らく自分は気持ちの赴くまま、グラキエースに欲望を加減無しで打つけていたのだ。

「あわわわわ……ど、とこか痛くしてないですか?!」

"どこか"とは、当然まぐわいの最中に触れた"色々な場所"だ。



「フフッ…多少赤くなっても、肌が褐色なので全然分かりませんよ」



「ちょっ!? それって…多少は痛めたって事では!?」



するとグラキエースは目を見張る身のこなしで、逆にガリーを抱きしめた。

「だから大丈夫と言っているでしょう」



片や抱きしめらたガリーは、漸く自分の心配が烏滸がましいと察する。

『そうだった…グラキエースさんは永劫の騎士(アイオーン…エクェス)で…』

武と魔術に於いて、ディーイーに限り無く近い存在なのだ。


直後、自分の異変に気付く。

「ん…んん?!」

『ま、全く体が動かない?!』

簡単に抱き締められたと思ったのだが、恰も捕縛されたように身動きが取れない。



「どう? 膂力も中々のものでしょう?」

などと耳元に囁くグラキエース。



「ひゃっ?!」

その所為で飛び上がりそうになるガリーであった。

実際はガッチリとホールドされているので、一切の身動きが取れないが…。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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