1573話・ガリーとグラキエース(3)
結局、ガリーは抵抗したものの、グラキエースに手ずから真っ裸にされてしまった。
『うぅぅ…居た堪れない……』
片やグラキエースは、その褐色の裸体を隠す事なく浴室の扉を開ける。
「どうしました? そのままでは風邪を引きますよ」
「はい…すぐに……」
仕方無く浴室へ向かうガリー。
未だに恥ずかしいので、大事な所は手で隠したままだ。
そうしてガリーが浴室に入ると、そこも思った以上に広く驚かされる。
「うわぁ……結構広いですね」
真ん中に五人は優に浸かれる湯船が有り、全体の広さは10m四方と言ったところだ。
「そうですね。プリームス様は風呂好きなので、それをメディ.ロギオスが配慮したのかも知れませんね」
そのまま恥じらう事無く、グラキエースは掛湯を始めた。
「なるほ……」
そこまで呟いたガリーは、グラキエースの裸体に見惚れ言葉を失う。
褐色の肌が妙に艶めかしく、また女性美を体現したような曲線、更にはメリハリの有る引き締まった体…どれを取っても一級品なのだ。
こんな体を知ってしまったら、もう手放せないのではないか?
そんな自分勝手な妄想を、ガリーは頭を振って慌てて払拭した。
恐らくグラキエースが自分を誘ったのは、同情か或いは気まぐれなのだろう。
それを真に受けて舞い上がっては、後々になって自分が惨めになるだけである。
「……? どうかしましたか? 掛湯をするので傍に来てください」
「え? あ…! す、すみません」
急いで傍に向かうガリーだが、足が滑ってしまいスッ飛ぶことに。
「うわぁ!!??」
「とっ…!」
これを危なげなく抱き止めるグラキエース。
そして抱き止められた側は、豊満な褐色の双丘に顔を埋めて慌てる始末。
「わっぷっ!? ご、ごめんなさい!!」
「ん? どうして謝るのです? 兎に角は怪我しなくて良かったですね」
そう言ったグラキエースは、居間の時の様にガリーの頭を優しく撫でた。
『あぁぁぁ……なんて心地よい……』
まるで母に抱かれて、あやされている気分にガリーは陥る。
これが東方諸国を築いた傑物の包容力か…などと思ってしまう。
少し惚けた状態のガリーを風呂椅子に座らせ、グラキエースは掛け湯を始めた。
当然、ボ〜ッとしていたガリーはビックリする。
「わひゃっ?!」
「フフッ…ガリーさんは面白い人ね」
"面白い人"と言われた場合、大体は馬鹿にされたり呆れられている事が多い。
しかしグラキエースの優しげな笑顔を見ていると、そんな事などガリーは全く気にならなくなった。
また同時に思う…この人と褥を共にしたいと。
例え行為に至らなくても、肌を合わせるだけで満たされそうな勢いだ。
掛け湯が終わり、グラキエースに手を引かれて湯船に浸かる。
ガリーが湯船の縁に背を預けると、居間の時のようにグラキエースが膝の上に跨って来た。
しかも互いに対面状態で、ガリーからすれば非常に恥ずかしい。
『え?! ここでするの!??』
色んなものをスッ飛ばした所為か、心の準備が出来ずにガリーは慌てた。
「えっ!? ちょ?! グラキエースさん?!!」
「貴女をじっくりと見たくてね」
「…?!?」
『なら別に跨らなくても…』
と突っ込みたいガリーだが、勢いに飲まれて結局は何も言えない。
正に成すがままである。
「ふむ……」
じっくりと値踏みされた気がして、堪らず尋ねるガリー。
「な、何か変ですか? やっぱり筋肉ばっかりで男みたいですよね?」
女に生まれながら、何故か男顔負けの恵まれた体を得た。
これは聖女の使徒として、また傭兵として生きる上では非常に有利に働いた。
されど異性にモテる筈も無く、それで歪んだ性対象は同性に向いてしまう。
否…ひょっとすれば何かの手違いで、男から女に生まれたのかも知れない。
そう思わざるを得ない劣等感が、常にガリーを支配していた。
「…? 男みたい? そんな訳が無いでしょう。貴女は何処から見ても女性です。それに十分端正な容姿ですし、日頃の手入れを怠らなければ、今よりもっと綺麗になりますよ」
「え………俺が…端正な容姿……?!」
まさかの評価にガリーは半ば唖然とした。
グラキエースは笑顔で頷く。
「はい。鼻筋なんてスッと通っていますし、目は切長で格好良いです。それでいて唇はプックリしていて可愛らしく、胸なんて大きくて良い形ですよ」
割と事細かく容姿を評価され、ガリーは恥ずかしくて悶絶する。
「うぅぅ…や、止めて下さい。そんなの御世辞だって分かってますから!」
不思議そうに首を傾げるグラキエース。
「御世辞? はて…私は真面目に言ったつもりですが?」
「た、だって! モテた事なんて一度も無いんです! それが良い証拠でしょう?」
そうガリーは声を荒げ、恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
「……」
『成程…劣等感か、』
ガリーが抱える問題を、グラキエースは凡そ察する。
今まで名のある傭兵として活躍するも、結局は聖女を助け出す糸口さえ掴めていない。
また心を許せるような異性、それに同性にも恵まれなかったのだろう。
更には主君や自分のような超絶者を目の当たりにし、自分の存在意義を見出せなくなったのかも知れない。
グラキエースは優しくガリーを抱きしめた。
「まだ貴女は発展途上なだけで、これから幾らでも強くなれますよ」
「………」
言葉だけなら何とでも言える。
慰めや励ましの言葉は、ガリーにとってなんの意味もなさない。
だが、次のグラキエースの言葉で気持ちが変わった。
「貴女は主君が認めた仲間です。それには実力、為人、そして容姿が含まれます。だから決して御世辞では無く、私が言った言葉は全て事実なのですよ」
「本当に…?」
怖々と指の隙間から窺うガリー。
「本当ですよ。何を隠そう私は面食いですから、貴女が綺麗で無ければ、こうして誘ったりしませんよ」
それは詰まり"好み"と言っているに等しく、ガリーは照れて再び両手で顔を覆うのであった。
「◯△×◯⬜︎…!!」
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




