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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1573話・ガリーとグラキエース(3)

結局、ガリーは抵抗したものの、グラキエースに手ずから真っ裸にされてしまった。

『うぅぅ…居た堪れない……』



片やグラキエースは、その褐色の裸体を隠す事なく浴室の扉を開ける。

「どうしました? そのままでは風邪を引きますよ」



「はい…すぐに……」

仕方無く浴室へ向かうガリー。

未だに恥ずかしいので、大事な所は手で隠したままだ。



そうしてガリーが浴室に入ると、そこも思った以上に広く驚かされる。

「うわぁ……結構広いですね」

真ん中に五人は優に浸かれる湯船が有り、全体の広さは10m四方と言ったところだ。



「そうですね。プリームス様は風呂好きなので、それをメディ.ロギオスが配慮したのかも知れませんね」

そのまま恥じらう事無く、グラキエースは掛湯を始めた。



「なるほ……」

そこまで呟いたガリーは、グラキエースの裸体に見惚れ言葉を失う。

褐色の肌が妙に艶めかしく、また女性美を体現したような曲線、更にはメリハリの有る引き締まった体…どれを取っても一級品なのだ。


こんな体を知ってしまったら、もう手放せないのではないか?

そんな自分勝手な妄想を、ガリーは頭を振って慌てて払拭した。

恐らくグラキエースが自分を誘ったのは、同情か或いは気まぐれなのだろう。

それを真に受けて舞い上がっては、後々になって自分が惨めになるだけである。



「……? どうかしましたか? 掛湯をするので傍に来てください」



「え? あ…! す、すみません」

急いで傍に向かうガリーだが、足が滑ってしまいスッ飛ぶことに。

「うわぁ!!??」



「とっ…!」

これを危なげなく抱き止めるグラキエース。



そして抱き止められた側は、豊満な褐色の双丘に顔を埋めて慌てる始末。

「わっぷっ!? ご、ごめんなさい!!」



「ん? どうして謝るのです? 兎に角は怪我しなくて良かったですね」

そう言ったグラキエースは、居間の時の様にガリーの頭を優しく撫でた。



『あぁぁぁ……なんて心地よい……』

まるで母に抱かれて、あやされている気分にガリーは陥る。

これが東方諸国を築いた傑物の包容力か…などと思ってしまう。



少しほうけた状態のガリーを風呂椅子に座らせ、グラキエースは掛け湯を始めた。

当然、ボ〜ッとしていたガリーはビックリする。

「わひゃっ?!」



「フフッ…ガリーさんは面白い人ね」



"面白い人"と言われた場合、大体は馬鹿にされたり呆れられている事が多い。

しかしグラキエースの優しげな笑顔を見ていると、そんな事などガリーは全く気にならなくなった。


また同時に思う…この人としとねを共にしたいと。

例え行為に至らなくても、肌を合わせるだけで満たされそうな勢いだ。



掛け湯が終わり、グラキエースに手を引かれて湯船に浸かる。

ガリーが湯船の縁に背を預けると、居間の時のようにグラキエースが膝の上に跨って来た。

しかも互いに対面状態で、ガリーからすれば非常に恥ずかしい。



『え?! ここでするの!??』

色んなものをスッ飛ばした所為か、心の準備が出来ずにガリーは慌てた。

「えっ!? ちょ?! グラキエースさん?!!」



「貴女をじっくりと見たくてね」



「…?!?」

『なら別に跨らなくても…』

と突っ込みたいガリーだが、勢いに飲まれて結局は何も言えない。

正に成すがままである。



「ふむ……」



じっくりと値踏みされた気がして、堪らず尋ねるガリー。

「な、何か変ですか? やっぱり筋肉ばっかりで男みたいですよね?」


女に生まれながら、何故か男顔負けの恵まれた体を得た。

これは聖女の使徒として、また傭兵として生きる上では非常に有利に働いた。

されど異性にモテる筈も無く、それで歪んだ性対象は同性に向いてしまう。


否…ひょっとすれば何かの手違いで、男から女に生まれたのかも知れない。

そう思わざるを得ない劣等感が、常にガリーを支配していた。



「…? 男みたい? そんな訳が無いでしょう。貴女は何処から見ても女性です。それに十分端正な容姿ですし、日頃の手入れを怠らなければ、今よりもっと綺麗になりますよ」



「え………俺が…端正な容姿……?!」

まさかの評価にガリーは半ば唖然とした。



グラキエースは笑顔で頷く。

「はい。鼻筋なんてスッと通っていますし、目は切長で格好良いです。それでいて唇はプックリしていて可愛らしく、胸なんて大きくて良い形ですよ」



割と事細かく容姿を評価され、ガリーは恥ずかしくて悶絶する。

「うぅぅ…や、止めて下さい。そんなの御世辞だって分かってますから!」



不思議そうに首を傾げるグラキエース。

「御世辞? はて…私は真面目に言ったつもりですが?」



「た、だって! モテた事なんて一度も無いんです! それが良い証拠でしょう?」

そうガリーは声を荒げ、恥ずかしくなって両手で顔を覆った。



「……」

『成程…劣等感か、』

ガリーが抱える問題を、グラキエースは凡そ察する。


今まで名のある傭兵として活躍するも、結局は聖女を助け出す糸口さえ掴めていない。

また心を許せるような異性、それに同性にも恵まれなかったのだろう。

更には主君プリームスや自分のような超絶者を目の当たりにし、自分の存在意義を見出せなくなったのかも知れない。


グラキエースは優しくガリーを抱きしめた。

「まだ貴女は発展途上なだけで、これから幾らでも強くなれますよ」



「………」

言葉だけなら何とでも言える。

慰めや励ましの言葉は、ガリーにとってなんの意味もなさない。

だが、次のグラキエースの言葉で気持ちが変わった。



「貴女は主君が認めた仲間です。それには実力、為人、そして容姿が含まれます。だから決して御世辞では無く、私が言った言葉は全て事実なのですよ」



「本当に…?」

怖々(おずおず)と指の隙間から窺うガリー。



「本当ですよ。何を隠そう私は面食いですから、貴女が綺麗で無ければ、こうして誘ったりしませんよ」



それは詰まり"好み"と言っているに等しく、ガリーは照れて再び両手で顔を覆うのであった。

「◯△×◯⬜︎…!!」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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