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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1556話・用意された神器

早々にガリーとグラキエースは、都督執務室を出て行ってしまった。

事が決まれば即行動…正に出来る人間の特徴と言えるだろう。



残されたティミドは少し不安そうに呟く。

「2人だけで大丈夫でしょうか? 龍国の本土は神獣の力が影響していますし…」

これは万が一に龍国の手勢と衝突した場合、加護を受けた相手に対処出来るのか心配になったのである。



「ほほう…ティミドはグラキエースの実力に懸念があると?」



ディーイーから揶揄気味に問われ、ティミドは慌てて否定した。

「い、いえ! そんな事は有りません! 只、ガリーさんを守りながら神獣の聖女を救出…グラキエースさん一人では負担が大きいのでは…」



「ティミド…それがスキエンティアや私だったら、そのような心配はするかね?」



「え…? そ、それは…」

答え淀むティミド。

正直、ディーイーだと強さに於いては信用できるが、その肉体の脆弱さは心配でならない。

片や宰相スキエンティアに至っては完全無欠な印象がある…故に全くの心配は無い。



「例え相手が軍勢だろうが心配しないだろう? グラキエースも同じだよ…何せ彼女は私やスキエンティアと、殆ど同等の能力が有るのだからね」



”同等の能力”…これを聞いたティミドは、自分が失念していた事に気付く。

グラキエースは東方その物を築いた傑物なのだ。

『そうだった…グラキエースさんは私達の女王だったんだわ』


今は共に主君へ仕える永劫の騎士(アイオーン・エクェス)だが、本来なら”様付け”が必要な存在である。

しかし、それを感じさせない配慮をグラキエースがしているに他ならない。



そんなティミドを見て、ディーイーは小さく微笑みながら言った。

「フフッ…やっと理解したようだね。だから心配いらないよ」



「は、はい…烏滸がましい心配をしてしまいました」

しゅん…となるティミド。



「そう気落ちするな。それだけティミドが優しいって事だろ」

ティミドの頭を撫でながらディーイーは言った。



先程まで黙って食事をしていたリキが、ここで漸く口を開いた。

「じゃぁ俺らも出発かい? ゲプッ!」

周りが落ち着くまで黙々と食べ過ぎた所為か、ゲップが出てしまう。



「ちょっ! なんて下品な! ディーイー様の前で!!」



「ここは公式の場では無いし、今の私はお忍びだから構わないよ」

などとティミドをなだめながらディーイーは続けた。

「兎に角、私達はリキさんの故郷の村に向かおう」



「その後は如何されますか?」



「村人を全員移住させる。そうだな……この南門省の四方京が適当かな?」



これに当事者のリキが血相を変えた。

「えぇぇ?! 移住?! 小さい村だって言っても400人位は居るぞ!」

ここから村まで優に500km以上は有る。

加えて400人ものの村人を”安全に移動させる”など、普通に不可能と言えるだろう。



「あ~~そっか、許可を得ていないな。イェシン都督殿、東陽省の村民を移住させても構わないかい?」



急に話を振られて挙動不審になるイェシン。

「え?! あ……その……聖女皇陛下の頼みとあらば、喜んで受け入れましょう!」

しかしながら本心では蚊帳の外な上、勝手に決められて非常に切ない気分だ。



「有難う、イェシン都督」

ニッコリ微笑むディーイー。



この笑顔を直視してしまったイェシンは、意識が抜けるような感覚に捕らわれる。

まるで魅了魔法に侵されたような…否、それよりも更に強力な支配力に思える。

そうして5分が過ぎ、気付いた時には執務室に誰も居なくなってしまっていた。

「え………えぇぇ?! 酷い!」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






「良かったのでしょうか…」

ティミドは申し訳なさそうな様子で呟く。



彼女の前を歩むディーイーは苦笑しながら返した。

「フフフッ…仕方ないよ、あの様子だと回復するまで少し時間が掛かる。それよりも良いのかい? シンさん…」



ティミドの後ろを歩むシンは静かに頷いた。

「はい…私がメディ.ロギオスに同行しても、恐らく足手纏いにしか為りません。それで姫様を救い出せない原因になっては、目も当てられませんから」



「そっか…」

掛けてあげられる言葉が無いディーイー。

『うむむ…メディ.ロギオスも配慮が無いよな。せめてシンさんに確認ぐらいすれば良いのに…』


事前に仲間の関係を知って居ながら、ロギオスはシンを放って出発してしまった。

非情にも見えるが、”役に立たない”などと面と向かって諭すより、ある意味で優しいとも取れる。

故にディーイーは何も言わなかったのだった。



そうして都督府を出て広大な駐車場に来ると、見慣れない中型の船が置かれていた。



「んんん?! 船が馬車の駐車場に?! どうして?!」

『ひょっとしてこれが…?』

ディーイーがロギオスに用意させた物…それをティミドは思い出した。



船に近付き、その船体にソッと触れるディーイー。

「これはね次元潜航艇だよ。主に精霊界アストラルサイドを移動するのに使うの」



「次元潜航艇……で、ではこれでグラキエースさんやメディ.ロギオスもですか?」



「うん。実は見た目以上に中は広くてね、最大10人くらいは十分に過ごせるよ。それと船への補給無しに2週間はブッ通しで潜航可能だね」



船を見上げて呆気に取られるティミド。

「じゅ、10人……?!」

どう見ても5人程度が乗って限界に見える。

何より”水の無い地上”に船がある…明らかに不可解だった。



そうしていると船の側面がガバッと開き、階段が出現する。



「え? な、何?!」



驚くティミドを他所に、その階段へディーイーは足を掛けて言った。

「さぁ2人とも乗り込もう。既に出航の準備は済んでる筈だから」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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