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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1552話・ある意味で修羅場

拳骨を食らって頭を押さえるグラキエース。

必要以上に周囲を威嚇した為、ディーイーがたしなめる意味で殴ったのである。


15歳程の華奢な少女が、強そうな大人の麗人へ拳骨…居合わせた面々からすれば、呆気に取られる展開だった。

しかし先程の凍り付いた空気が、一気に和んだような気がしたのも確かだ。



『やはり…ディーイー殿が聖女皇と言うのは間違いないようだな』

半ば信じ難かったイェシンだが、ここで漸く納得がいく。


だが公表されている永劫の騎士(アイオーン・エクェス)に、メディ.ロギオスとグラキエースの無かった筈。

故にイェシンは首を傾げた。

「お二人は正式な永劫の騎士(アイオーン・エクェス)なのですか?」



妙な聞き方をするイェシンに、ロギオスは怪訝そうに聞き返した。

「いかにも…ですが正式な発表は最近の事です。で、貴方は?」



「成程…私は南門省の都督イェシン・チャンシーです、お見知り置きを」



そして拳骨の痛みから回復したグラキエースは、何事も無かったように答える。

「つい最近まで在籍は秘匿されていました」



空腹が落ち着いたのか箸を置くと、これをディーイーが補足した。

永劫の王国アイオーン・ヴァスリオから永劫の帝国アイオーン・アフトクラトリアに改名したでしょ。その時に併せて、秘匿していた2人の在籍を公表したんだよ」



「…? どうして秘匿していたのですか?」

率直な疑問がイェシンの口を突いた。

どうせ公表するなら、秘匿する意味など元から無いのだから。



「それは……この2人が私よりも著名と言えるからかな」

と少し濁しながら答えるディーイー。

本音で言えば宰相スキエンティアが勝手にやった事で、ディーイーとしては知った事では無い。

されど他国の人間は、そう思わないのだから困ったものである。



「著名…?」

益々訳が分からなくなるイェシン。



それを見兼ねたガリーが、思わず話しに割って入った。

「都督閣下…グラキエースさんはペクーシス連合王国の初代女王です」



「なっ…?!?!」

全くもって著名どころの話ではない。

余の驚きでイェシンは一瞬硬直した後、次はロギオスを見やって尋ねた。

「……まさか…貴方は…?」



「以前はトゥレラ-ロギオスと名乗っていました。今は心を入れ替えたつもりなのですが、相変わらず列国の脅威認定は解かれていません…困ったものですよ」

などと飄々と答えるロギオス。



東方の元支配者と狂気の魔法医師(ルナメディクス)…この2人が傘下に居るなど、そう易々と口外出来る訳が無い。

何故なら歴史上類を見ない巨大な国家となり、歴史上最も危険視された魔術師が在籍する為だ。


「……」

それを理解したイェシンは、その場へ腰が抜けたように尻餅をついた。



一方、娘のヤオシュは目を輝かせ、颯爽とディーイーの傍に跪く。

「今までの数々の無礼、お許し下さい」



「え? あ…うん、もう気にして無いから」

『こ、この娘…けっこう肝が据わってるな』

妙にディーイーは気圧されてしまう。


常人なら不敬罪の沙汰を恐れ、縮こまるのが普通だろう。

なのにヤオシュは自ら接近し、自身の存在を主張している風に思えた。



どうしてかディーイーへ、グラキエースが不満そうな表情を向ける。

「……」



「な、何…?」



「また現地妻ですか?」



慌てるディーイー。

「ちょっ!? 変な事を言うな!」



透かさず憂いた目でヤオシュが訴える。

「え……否定なさるのですか? しとねを共にし、私に夜伽をさせて下さったでしょう?」



「おぉい!?」

それを此処で言うか!?…と突っ込みたかったディーイーだが、"肯定"になるので何とか堪えた。

『こやつ、どう言うつもりだ?!』



こうなると修羅場は確定となる。

此処に居る婦女子等は、皆例外なくディーイーを慕っているからだ。



「ディ、ディーイー様! この前に夜な夜な出で行かれたのは、そう言う事だったのですか!!」

と詰め寄るティミド。


グラキエースに至ってはヤオシュを一瞥すると、舌打ちをして何故か悔しそうだ。

「チッ…風変わりな子だけど、確かに陛下好みの美形ね」



そんな有様を見たガリーは食い込む隙も無く、只々遠目で見つめて苦笑いするばかり。

またシンはと言うと「我関せず」なのか、すん…と無表情のままだ。

しかし主人ハクメイがディーイーと結ばれる事を望んでいるので、その胸中が穏やかな筈は無かった。



「フフフッ…王者たるもの、色欲は強くあるべきです。私に言わせれば何を揉めているのか、不思議でなりませんねぇ」



完全に他人事な言い様のロギオスへ、頭に来たディーイーはフォークを投げつけた。

「余計な事を言うな! お前は黙っとれ!」



そのフォークがロギオスの額に突き刺さり、居合わせた面々は騒然とする…と言ってもガリーとイェシンだけだが。


因みにリキは黙々と食事を頬張っている。

シンと同じく我関せず…と言うよりは、怖くて何も出来ないが正しい。



そしてフォークが突き刺さった当人は、「あぅ……痛い…」と呟き何食わぬ顔。

加えて刺さった箇所から一滴も流血が無く、端から見れば化物然としか見えない。



尻餅をついたままのイェシンは、段々と実感が湧いて来る。

『ひょっとして私は…関わってはいけない存在と縁を作ってしまったのでは無いか?!』


このまま済し崩しに事が進めば…もう恐らく引き返せない。

否…突然永劫の騎士(アイオーン・エクェス)が現れたように、電光石火に事が進むだろう。


そうして自分は逆賊として、きっと歴史に名を残すに違い無いのだ。

『うぅぅ……本土に復帰する私の悲願が!』

妻を奪還出来たとしても、これでは目も当てられない。



そんな時、ディーイーがイェシンに言った。

「あ…そうそう! 火炎島は永劫の帝国アイオーン・アフトクラトリアの属国になる事が決定してるからね。それでイェシン都督が望むなら、同じような対応をすよ?」

取り敢えず話題を変えようとしたのである。



「え……えぇぇ?!!」

結果、イェシンは完全に腰を抜かす羽目となるのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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