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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1548話・冷たいディーイー

ぐっすり眠れたディーイーは朝の湯浴みをする為、ティミドと浴場に向かおうとしていた。


都督府舎の最上階全ては、都督の私的フロアになっており、基本的に侍女や使用人以外は居ない。

これはイェシン・チャンシー都督が多忙な所為で、全く帰宅出来ないからだ。

つまり帰宅出来ないならば、一層のこと府舎に住み込んでしまえば良い…そんな考えから最上階が私的フロアと化したとの事である。



故にディーイーは寝巻き姿のまま、大手を振って最上階を歩く始末だ。



そんなディーイーの後を追随するティミドも、勿論のこと寝巻き姿のままだ。

「何だか箱舟アルカを思い出しますね」



「ん? あぁ〜〜確かに構造が似てるかも」

廊下を見渡しながら返すディーイー。


内装や通路の広さなど全く違うが、本国の箱舟アルカもプリームスの私的空間と中枢が最上階に在った。

『あれ? ティミドって箱舟アルカに乗った事があったっけ?』



小首を傾げる主君を察し、ティミドは微笑みながら言った。

「一時期、箱舟アルカがヘイス公国に駐留した事が有りましたよね。その時に数日アルカへ滞在ました」



「そう言えば…」

すっかり失念していたディーイー。

当時、ラスィア女王との総力戦になり、随分と大ごとになってしまった。

かく言う自分も決戦の最中、死を覚悟した瞬間が有る程だ。


『よもや落下死…そんな時にティミドが救ってくれたっけ』

そして今もティミドは傍に居て、色々と補佐し世話をしてくれる。

「あの時も今も、本当にティミドが居てくれて良かった」



唐突な主君の言葉に驚き、畏まってしまうティミド。

「え? あ…その、恐縮です…」



「フフッ…ティミドはもっと自信を持つべきだわ。この私を助けられる実力が有るんだから」



「ディーイー様…」

ティミドは胸が熱くなるのを感じた。



ガリーとシンに鉢合わせする。

「あ…! ディーイー! 起こしに行こうかと思ってたんだよ」

「随分とお寝坊ですね。昨夜は楽しまれたようで何よりです」



少し慌てた様子のガリー、そして棘を含むシンの言い様。

そこから何か有ったとディーイーは直ぐに察した。

「どうしたの? 緊急事態?」



「え〜と…やっぱりサーディク副団長の消息が分かってないんだ」

と困惑気味に答えるガリー。


どう対処すべきか、都督やヤオシュと話していたのは想像に容易い。

だが肝心のディーイーが起きてないので、何も決められずに居た…そんな所だろう。



「ごめんごめん、迷惑をかけたね。う〜んっと、都督とヤオシュ団長は?」



「2人とも執務室に居ます」

そう答えたシンは、珍しくディーイーを急かす様に手を差し出す。

昨日、ディーイーが歩けない状態だったのを知っているので、念の為に支えようと配慮したようだ。



「あ…、大丈夫だよシンさん。歩く程度は平気だから」



しかし強引に手を取るシン。

「ゆっくりされていては困ります。きっとサーディク副団長はアドウェナの下に居る筈なので、姫様も…」



『そう言う事か…』

強引なシンの理由に察しがつくディーイー。


ハクメイ共々にサーディクも連れ去られた…そう考えるのが妥当だ。

つまりサーディクの足取りを調べれば、アドウェナの行き先も掴めるかも知れない。

故にハクメイを攫われたシンからすれば、ここで急がない理由が無いのだ。


「そうだったね…悠長にしていて済まない」

そうディーイーが言うや否や、物凄い速度で手を引かれる羽目に。

「どわっ?!」



「ディ、ディーイー様!?」

「ちょっ!? 待ってよディーイー!」

た慌てて後を追うティミドとガリー。



半ば足が空中に浮きながらディーイーは呟いた。

「いや…私は引っ張られてるだけなんだけど……」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






都督執務室にディーイー達が来ると、待っていたイェシン都督がギョッとした。



「えっ…何?」

怪訝そうに尋ねるディーイー。



「いや…妙齢の淑女がその様な格好だと…その、目のやり場が、」

などと言いにくそうにイェシンが答えた。



「へ…? あっ…!!」

自分の格好を見てディーイーは納得する。

先程シンに思いっ切り引っ張られて、寝巻きの浴衣が完全にはだけていたのた。


それは帯が緩み、その所為で胸元が大きく開く有様だ。

更に帯より下は、完全に太ももが露出してしまっている。



「これは失礼致しました」

と何故か素っ気無くティミドが謝罪して、素早くディーイーの浴衣を着付け直す。

ティミドからすれば眼福だが、他の"男の目"に晒されるのは許し難かったのである。



「う、うむ……それで黒金の蝶の副団長サーディクが、未だに都督府にもギルドにも戻っていない。この事でディーイー殿に相談したかったのだ」



イェシンの言葉を半ば聞き流すように、ディーイーは特に反応せずソファーへ掛けた。



「ディーイー殿?」



「気持ちは分かるが、私には関係ないわ」



ここに来て、まさかの辛辣な返し。

これにイェシンは怪訝そうに問い返した。

「我々は協力関係にある筈だろう? それにサーディク副団長がアドウェナに連れ去られた可能性が高い。足取りを掴めれば、それだけアドウェナに近付くのでは?」



「サーディク副団長が連れ去られたとして、それを救う義理は無い。そもそもハクメイの奪還が第一で、その次に貴方の奥方の奪還よ。こちらが下手に出たからって、次々要求されても困るわ」



「……」

呆気に取られるイェシン。

ただ相談したいと言っただけなのに、この辛辣な対応は余りに御無体だ。


だが返って冷静になり、その意図が何なのか考えるに至る。

『強引に機先を制された…まさか、そこまで配慮する余裕が無いのか?』


二個師団の軍勢を瞬時に召喚する魔術力。

加えて迷宮を半壊させる程の魔法を操る。

そんな存在が人ひとり救う程度の事を、今更になって負担に感じるだろうか?


答えは否である。


『なら他に何か理由が有るのか…』

ひょっとすれば、サーディクがアドウェナの軍門に降ったと考えた可能性もある。

それを想定されれば、もうイェシンとしても交渉する余地が見当たらなかった。



「ところで、ヤオシュ団長は?」



「ヤオシュなら自室に籠ってしまったよ…」



「そう…」

素っ気無く返すディーイー。



するとティミドがソッとディーイーに囁いた。

「宜しいのですか?」

いつものディーイーなら諸共に救う筈だからだ。



「うん…もう副団長は手遅れだよ。可哀想だけどね…」

ディーイーの意味深な返答には、僅かにもどかしさが含まれていたのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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