1547話・罰はご褒美?
『うぅぅ?! この子…こんなに頑固だったっけ?!』
と困惑するディーイー。
ティミドが自分の差し出がましい振る舞いに、罰を与えて欲しいと土下座をしたからである。
またその様子から、罰を与えなければテコでも動かないのが明らかだった。
『困ったな…』
どうしたものかとディーイーが逡巡していると、焦れたのだろうか?、ティミドが罰を指定してくる始末だ。
「ディーイー様は色々と鬱憤が溜まっているのでは? それを私に打つけて頂ければ良いのです。蹴るなり殴るなり、お好きにして下さって構いませんから」
「えぇぇ……!?」
ついディーイーは声を上げてしまう。
『まさか被虐趣味でも有るのか?!?』
求められれば吝かでは無いが、蹴ったり殴ったりは流石に躊躇われる。
そもそも自分に加虐趣味は無い。
「ひょっとして…私の顔に傷が付くのを躊躇われているのですか? それでしたら体にして頂ければ良いかと」
「……」
更なる提案に、ディーイーはドン引きだ。
そして、ふと思う…その意図は何なのかと…。
顔に傷や痣が出来れば、対外的に問題が起こり得る。
それを配慮した言い様だとは思われるが、他にも意図が有るのではないか?
「ティミドって…容姿に自信が有る?」
ディーイーの意表を突く問いに、今度はティミドが困惑した。
「え? え?! よ、容姿…ですか? 顔とか体付きとかでしょうか?」
「うん、そうだね。端的に言えば、自分を美人だと思っているか…だね」
「それは……ディーイー様のお眼鏡にかなう程度には美人かと」
『ぶはっ! 美人と言い切った!』
吹きそうになるディーイー。
しかしながらティミドが自己評価するように、確かに容姿端麗なのだ。
その容姿は可愛らしさを有しながら、美人然とした造形をも含む。
正に絶妙なバランスの美を持ち、実にディーイー好みの容姿と言えた。
「それが如何しましたか?」
首を傾げるティミド。
「いや…"綺麗な顔"に傷が付いたら困るから、体に折檻してって言ったのよね?」
「え……あ……いえ、そんな…」
ティミドは顔が真っ赤になった。
自分が美人だと無意識に自認していたからだ。
これが主君程に絶世の美貌ならまだしも、"それなりに美人"などと自認するのは、自意識過剰と言わざるを得ない。
『うぅぅ…恥ずかし過ぎる…』
「どうしたの? 何で顔が真っ赤なの?」
「あぅぅ…そんな意地悪しないで下さい…」
「フフッ…体に折檻は良くても、言葉で責められるのは苦手みたいね?」
追い打ちのように揶揄われ、ティミドは亀の様に丸くなって顔を隠した。
「うぅぅ…うぅ……虐めないで下さい…」
『そんなに恥ずかしいものなのか…?』
すこし不思議に思うディーイー。
自分が優れていると自己評価するのは、決して悪い事でも恥ずかしい事でも無い。
そうする事で人は自尊心を育み、自己の存在意義を確立していくからだ。
それでも例外はある。
それは客観的な視点を失い、自己を過大評価する時だ。
こうなってしまうと相当に滑稽な有様になる。
簡単な例えで言うなら、猫なのに自分を虎だと勘違いした…である。
傍目では実に滑稽に見えるのは当然の事、身の丈に合わぬ狩に挑み最悪の場合は命を失うだろう。
つまり自己評価とは、客観性を伴えば自身へ有益に働くのだ。
逆に客観性が欠如すれば身を滅ぼしかねない…正に諸刃の剣と言える。
そう言った点で鑑みるなら、ティミドは自身を客観的に評価出来ており、何も心配する事は無いと思われた。
『どちらかと言えば、過小評価している傾向にあるな』
ディーイーからすれば、もっと自信を持てば良いのに…と思ってしまう。
無言になった主君を前に、ティミドは不安になって顔を上げた。
「ディーイー様…?」
「え…? あ、いや…ティミドは十分に優れた外見をしているから、もっと自信を持つと良いと思ったんだよ」
「そんな……何だか恐縮してしまいます」
褒められたのに萎縮してしまうティミド。
絶世の美貌を持つ相手に優れた外見と評価されれば、誰だって客観視を持たざるを得ない。
結果、こうしたティミドの態度は至極当然の成り行きとなる。
対してディーイーは少し頭を悩ませる事に。
『ふ~む……人を褒めるのは難しいな、』
兎に角、ティミドの折檻要求から話を逸らせたのは良かった。
後は確りと睡眠を取って、次の行動に備えなければ為らない。
そんな時、ティミドが怖々と言った。
「ディーイー様…私への罰が済んでいませんよ」
『うへっ! 逸らせてなかった…』
「うむむ…そんな事を言われても、私は可愛い女子を嬲る趣味は無いぞ」
「でしたら、何でも良いので罰を与えて下さい」
『どうして罰にこだわる?!』
解せないどころか、若干だが恐怖まで感じてしまうディーイー。
恐らくは主君に対する忠誠心の現れなのだろうが、ここまでくると流石に行き過ぎと言える。
そうして絞り出した答えは、体調を盾にして気遣わせる方法だ。
「う~ん……じゃぁ私を気持ち良くしてよ…それで寝付きが良くなる筈だから。このまま話し込んでたら、余計に目が覚めちゃって体調を崩しちゃうよ」
「え? えぇぇ…? それだと…いつもと変わりませんよ?」
「いつもと変わらなくて良いの!」
「さ、左様ですか……では失礼いたしまして……」
少々合点がいかないが、主君からの命令に異は唱えられない。
これでは罰では無く”ご褒美では?!”と思いつつも、ディーイーの下着を手早く脱がせるティミドであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




