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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1547話・罰はご褒美?

『うぅぅ?! この子…こんなに頑固だったっけ?!』

と困惑するディーイー。


ティミドが自分の差し出がましい振る舞いに、罰を与えて欲しいと土下座をしたからである。

またその様子から、罰を与えなければテコでも動かないのが明らかだった。


『困ったな…』



どうしたものかとディーイーが逡巡していると、焦れたのだろうか?、ティミドが罰を指定してくる始末だ。

「ディーイー様は色々と鬱憤が溜まっているのでは? それを私に打つけて頂ければ良いのです。蹴るなり殴るなり、お好きにして下さって構いませんから」



「えぇぇ……!?」

ついディーイーは声を上げてしまう。

『まさか被虐趣味でも有るのか?!?』

求められれば吝かでは無いが、蹴ったり殴ったりは流石に躊躇われる。

そもそも自分に加虐趣味は無い。



「ひょっとして…私の顔に傷が付くのを躊躇われているのですか? それでしたら体にして頂ければ良いかと」



「……」

更なる提案に、ディーイーはドン引きだ。

そして、ふと思う…その意図は何なのかと…。


顔に傷や痣が出来れば、対外的に問題が起こり得る。

それを配慮した言い様だとは思われるが、他にも意図が有るのではないか?

「ティミドって…容姿に自信が有る?」



ディーイーの意表を突く問いに、今度はティミドが困惑した。

「え? え?! よ、容姿…ですか? 顔とか体付きとかでしょうか?」



「うん、そうだね。端的に言えば、自分を美人だと思っているか…だね」



「それは……ディーイー様のお眼鏡にかなう程度には美人かと」



『ぶはっ! 美人と言い切った!』

吹きそうになるディーイー。


しかしながらティミドが自己評価するように、確かに容姿端麗なのだ。

その容姿は可愛らしさを有しながら、美人然とした造形をも含む。

正に絶妙なバランスの美を持ち、実にディーイー好みの容姿と言えた。



「それが如何しましたか?」

首を傾げるティミド。



「いや…"綺麗な顔"に傷が付いたら困るから、体に折檻してって言ったのよね?」



「え……あ……いえ、そんな…」

ティミドは顔が真っ赤になった。

自分が美人だと無意識に自認していたからだ。


これが主君程に絶世の美貌ならまだしも、"それなりに美人"などと自認するのは、自意識過剰と言わざるを得ない。

『うぅぅ…恥ずかし過ぎる…』



「どうしたの? 何で顔が真っ赤なの?」



「あぅぅ…そんな意地悪しないで下さい…」



「フフッ…体に折檻は良くても、言葉で責められるのは苦手みたいね?」



追い打ちのように揶揄われ、ティミドは亀の様に丸くなって顔を隠した。

「うぅぅ…うぅ……虐めないで下さい…」



『そんなに恥ずかしいものなのか…?』

すこし不思議に思うディーイー。


自分が優れていると自己評価するのは、決して悪い事でも恥ずかしい事でも無い。

そうする事で人は自尊心を育み、自己の存在意義を確立していくからだ。


それでも例外はある。

それは客観的な視点を失い、自己を過大評価する時だ。

こうなってしまうと相当に滑稽な有様になる。


簡単な例えで言うなら、猫なのに自分を虎だと勘違いした…である。

傍目では実に滑稽に見えるのは当然の事、身の丈に合わぬ狩に挑み最悪の場合は命を失うだろう。


つまり自己評価とは、客観性を伴えば自身へ有益に働くのだ。

逆に客観性が欠如すれば身を滅ぼしかねない…正に諸刃の剣と言える。



そう言った点で鑑みるなら、ティミドは自身を客観的に評価出来ており、何も心配する事は無いと思われた。

『どちらかと言えば、過小評価している傾向にあるな』

ディーイーからすれば、もっと自信を持てば良いのに…と思ってしまう。



無言になった主君を前に、ティミドは不安になって顔を上げた。

「ディーイー様…?」



「え…? あ、いや…ティミドは十分に優れた外見をしているから、もっと自信を持つと良いと思ったんだよ」



「そんな……何だか恐縮してしまいます」

褒められたのに萎縮してしまうティミド。


絶世の美貌を持つ相手に優れた外見と評価されれば、誰だって客観視を持たざるを得ない。

結果、こうしたティミドの態度は至極当然の成り行きとなる。



対してディーイーは少し頭を悩ませる事に。

『ふ~む……人を褒めるのは難しいな、』


兎に角、ティミドの折檻要求から話を逸らせたのは良かった。

後はしっかりと睡眠を取って、次の行動に備えなければ為らない。



そんな時、ティミドが怖々(おずおず)と言った。

「ディーイー様…私への罰が済んでいませんよ」



『うへっ! 逸らせてなかった…』

「うむむ…そんな事を言われても、私は可愛い女子をなぶる趣味は無いぞ」



「でしたら、何でも良いので罰を与えて下さい」



『どうして罰にこだわる?!』

解せないどころか、若干だが恐怖まで感じてしまうディーイー。

恐らくは主君に対する忠誠心の現れなのだろうが、ここまでくると流石に行き過ぎと言える。


そうして絞り出した答えは、体調を盾にして気遣わせる方法だ。

「う~ん……じゃぁ私を気持ち良くしてよ…それで寝付きが良くなる筈だから。このまま話し込んでたら、余計に目が覚めちゃって体調を崩しちゃうよ」



「え? えぇぇ…? それだと…いつもと変わりませんよ?」



「いつもと変わらなくて良いの!」



「さ、左様ですか……では失礼いたしまして……」

少々合点がいかないが、主君からの命令に異は唱えられない。

これでは罰では無く”ご褒美では?!”と思いつつも、ディーイーの下着を手早く脱がせるティミドであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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