表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1670/1765

1546話・断罪する側の苦悩と葛藤

初めての油按摩だったが、ヤオシュの指導で卒なくこなせたティミド。

片や"された方"は、すっかりとろけてしまって脱力状態になる。


また弊害?と言うべきが、した方も香油に因ってヌルヌルのテカテカ状態だ。

そうして仕方無く再び湯浴みするに至った。



「その…如何でしたか?」

ティミドはディーイーを抱っこしたまま尋ねた。

抱っこしているのは、脱力したディーイーが湯船で溺れ兼ねないからだ。



「うん、滅茶苦茶スッキリ?した。お陰で体がグニャングニャンのプランプランだよ」

ぼんやりしながら答えるディーイー。



「はは…ははは……それはスッキリと言うのでしょうか」

ティミドは苦笑してしまう。



「う〜ん…頭はボーッとしてるかな。あ……後は下がトロトロになっちゃって少し恥ずかしい」



「ぶっ!?」

思わずティミドは吹き出す。

因みに按摩を施術した側のティミドも、実は下半身がトロトロで大変な状態だった。



すると、いつの間にか一緒に湯船へ浸かっていたヤオシュが囁いた。

「フフッ…言ったでしょう。した側も、された側も効果が有ると」



「な、成程…今になって漸く理解しました……」

湯の所為なのか、はたまた淫らな事を考えた所為か、顔を真っ赤にしながら返えすティミド。

これで今夜の運動会は更に盛り上がりそうである。



「お腹すいたな…」

ボソリ…と呟くディーイー。



この言葉に反応したティミドは、ディーイーをお姫様抱っこしたまま直ぐに立ち上がった。

「気付かず申し訳有りません。直ぐに着替えを済ませて食事にしましょう」



そんな2人の様子を見て、ヤオシュは色々と想像や推測が捗る。

『やっぱり…この2人は主従関係みたいね』

それも体を交えるであろう密接な関係だ。


なのにティミド側が一線を超えないのは、彼女に相当な自制心と忠誠心が有るからだろう。

普通なら調子に乗ってしまい、主人に見限られるのが関の山なのだから。


そして2人が羨ましく思えた。

自分には副団長であり腹心であるサーディクが居るが、ディーイーとティミドのような関係では無いのだ。

なお何度かしとねを共にしたが、サーディクが思った以上に奥手で余り上手く行っていない。


そんな腹心の行方が、今は知れない状態にある。

協調関係が破綻した事を、まだアドウェナは知らない筈で、サーディクが害される事も無い筈なのだが…。


ヤオシュは頭を振り、その心配を払拭した。

兎に角、今は逃げたであろうアドウェアを追わねば為らない。

自分達親子の最大の目的は、母親を奪還する事なのだから。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






食事を済ませたディーイーは早々に床に就いた。

しかし眠いのだが中々寝付けず、ベッドの上で悶々としてしまう。



「ディーイー様…眠れないのですか?」

添い寝するティミドが心配になって尋ねた。



「う〜ん……ちょっとね、」

どうして眠れないのか…その理由をディーイーは十分に認識していた。

それはハクメイの事が気掛かりで為らないからだ。


アドウェナに連れ去られたが、その身の安全は一応の担保がある。

だが推測の域を出ず、直ぐにでもハクメイがアドウェナの"依代"される可能性も考えられた。

だからこそ不安が払拭されないのだ。


そして準備も無しに、強引に追う事も無理が有ると認識していた。

この感情と冷静な判断との葛藤が、ディーイーを苦しめる大きな要因だった。


『350年も生きて、私は何一つ変わっていないな…』

冷徹にも成り切れず、かと言って人情家にも成り切れない…全くもって中途半端な存在だと思えてしまう。



ティミドがソッと撓垂しなだれてきた。



「うん? ティミド…どうしたの?」

いつもと違う身内の雰囲気に、ディーイーは心配になって尋ねる。



「その…差し出がましいかも知れませんが…ディーイー様は、お一人で抱え込み過ぎかと思います」

とティミドは不興を買うのを覚悟して答えた。



「……どうしてそう思うの?」

「差し出がましい!」と怒鳴らずに、柔らかく理知的に問うディーイー。



この主君の振る舞いにティミドは胸が痛くなった。

『やっぱりプリームス様は優し過ぎる』

どうせなら自分に怒鳴り散らし、その抱えた鬱憤を晴らしてくれれば良いのに…そう思わずには居られない。

「ヤオシュさんの母君…都督妃の体をアドウェナが依代にしているのは、聞かれましたか?」



「うん、さっきヤオシュから改めて説明されたよ」



「その事なのですが、ディーイー様は都督妃まで救うおつもりなのでしょう? それは余りにディーイー様への負担が大きいと思いませんか?」

ティミドからすれば、都督妃を救う義務も義理も無い。

当然、これはディーイーにも当てはまり、序でに言うなら都督やヤオシュへ報復をしても良いくらいだ。



「裏切り者の都督親子を、ティミドは救う価値が無いと言いたいのだね?」



問い返され、口籠るティミド。

「そ、それは……」

"そうだ"と言いたかった。

されど最終的な沙汰は、主君であるディーイーが下す…それを前提に自分は動いていた。

なので今更頷く事は出来ない。



するとディーイーは疲れた様子で告げる。

「性根からの極悪人であれば、私も切って捨てただろうね。でも酌量の余地が有るなら、可能な限り断罪は避けたいのだ」



「……それは何故なのですか?」

その主君の言葉がティミドは不思議で為らない。


以前居た世界のディーイーは魔王だった。

敵対する人間は容赦無く滅ぼし、同族であろうが断罪したに違い無いからだ。



「誰かを裁いたり、報復したり…もうお腹いっぱいなんだ」



「…!」

この返答でティミドは全てを察する。

否…全てとは烏滸がましい。

ほんの一握りを理解した…それが正しい。


きっと常に厳格な姿を見せねばならず、意に沿わない判断を数多く迫られたに筈だ。

そしてそれは心を削り、極限まで疲弊させのだろう。


「申し訳有りません! 知った口を利き、差し出がましい事をしてしまいました!」

ティミドは直ぐさま土下座をした。



「えぇぇ……?!」

呆気に取られるディーイー。



「どうぞ…この私を煮るなり焼きなり罰を与えて下さい!」



どうしてこうなった?!

ディーイーは困惑するばかりだ。

「いや…別にティミドは何も悪さをしてないでしょ。罰を与える理由が無いよ」



「いいえ! 主君の心中を察し得ず、勝手な物言いをしました。不敬罪で裁かれて当然です」

頑なに土下座をして動かないティミド。



この状況に益々ディーイーは困惑するのであった。

『うぅ…参ったな。この子…こんなに頑固だったっけ?』



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ