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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1668/1765

1544話・撤収と囚われの副団長

刹那の章IV・月の姫(26)と(最終話)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

皆が揃って来た道を戻ろうとした時、

「その…ディーイーさんを抱えてる人は誰なんだ?」

とリキが不思議そうに尋ねた。


尋ねた相手は、ここに居る全員である。

その理由は突如現れた赤髪の麗人に、皆が全く疑問を持っていなかったからだった。



「確かに…気になりますね。どちら様ですか?」

などとリキに釣られたのか、今更になって言い出すティミド。



そしてガリーはと言うと驚いた様子を見せる。

「えぇぇ?! 然も当然のようにしてたから、お仲間と思っていたのに」

このお仲間とは永劫の騎士(アイオーン・エクェス)の事を暗に言っているのだ。

部外者のヤオシュが居るので、そこは気を利かせたのだった。



ティミドは首を横に振る。

「いえ…全然存じません」

『宰相閣下には似てるけど…まさか姉妹じゃないわよね』

あんなのが二人も居ると思うと、良い意味でも悪い意味でも正直ゾッとしてしまう。



するとディーイーは苦笑しながら答えた。

「フフッ…すまんすまん、紹介がまだだったな。彼女はドロスースと言う。今のところ言葉は話せないが、ちゃんと理解は出来るので宜しく頼む」



「あ…はい。承知しました」

「ドロスースって言うんだ。俺はガリー…取り敢えず宜しく」

「私はシンです」



「宜しく頼む…って、まぁ良いか…」

そんな事を聞きたい訳では無い…と突っ込みたかったがリキは我慢した。

と言うより諦めたが正しいだろう。


また他に色々聞きたい事も有るが、今は戻って次の準備をすべきなのだ。

逃げたアドウェナを追い、ハクメイを奪還しなければ為らないのだから。



こうして雑な紹介の後、皆は地上の都督府舎へ向かうのであった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






サーディクはベッドに腰掛け途方に暮れていた。

何故なら、今頃は都督府に戻り、主人へ報告を済ませていた筈だからだ。

だが実際は囚われの身となってしまい、この小さな部屋から出る事さえ儘ならない。


『これも全て眠りの森の力を見誤ったから…』

いや…違う。

傭兵団としては最高水準の実力がある…しかし、その程度なのだ。

問題は団長のディーイーである。


見た目とは裏腹に、その武力は一騎当千。

下手をすれば1人で軍勢を相手取れる、にわかには信じ難い程の強さを持つ。


加えて禁呪級を遥かに凌ぐ破壊魔法まで使う。

それに因って迷宮の中層が完全に消失するなど、誰が予測出来ただろうか。


『あれは人の域を超えている…』

迷宮の主人であるアドウェナでさえ、ディーイーを前に逃げざるを得なかったのだ。



扉がノックされた。



監禁されている自分に、これを拒否し、また許可する権限は無い。

故にサーディクは座ったまま沈黙を貫いた。



すると扉が開きアドウェナが姿を見せる。

「随分と静かね。騒ぎ立てるかと思ったけど…」



「騒いで解放されるなら幾らでもします」



「そう…。ところで私が見せた記憶は如何かしら? こちらとしては想定外だったし、貴女達が私を倒す為に送り込んだとしか思えないわ」



アドウェナの言い様に、ついサーディクは立ち上がって反論した。

「そんな訳が無いでしょう! 我々が貴女を絶対に害せないと知っている癖に」



「フッ…そうだったわね。なら貴女達にしても想定外だったと?」



大トカゲ(デイノス)の時に気付くべきでした。いや…気付いて居ながらも、どうする事も出来なかった…」



心底後悔するサーディクに、アドウェナは追い討ちのように告げる。

「結果は結果よ、この事態に至った責任は取って貰うわ」



「責任…?」

困惑するサーディク。

今更どうしろと?…囚われの身の自分に、もはや成す術など無いのだから。



「私は大切な拠点を失い、瘴気炉も解体しなければ為らなくなった。何十年もかけて準備して来たと言うのに…。その損失を貴女に埋めて貰うよ」



「私が…損失を埋める?! きゃっ!?」



ベッドにサーディクを突き飛ばし、アドウェナは邪悪な笑みを浮かべた。

「貴女はハクメイ程の適性は無い。だから本来なら魔獣の餌にする所だけど、他に面白い適性を見付けたわ。だから貴女は、その実験台になるの」



「実験台!?」

サーディクは直ぐに察した…もう自分は終わりだと。

そして同時に脳裏へ過ったのは、主人であるヤオシュへの心苦しさだった。

『申し訳有りません…ヤオシュ様……』






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






都督府舎に戻ったディーイーは、いの一番でヤオシュに浴場へ案内させた。

迷宮での野営で湯浴みを1度しただけな上、幾度と大立ち回りをしたのだ。

その為、埃と汗まみれで気持ち悪かったのである。



「ふぃ〜〜生き返った」

ティミドに体を洗って貰ったディーイーは、湯船に浸かりながら染み染みと呟く。



「フフフッ…漸くご機嫌が良くなりましたね」

同じく傍で湯に浸かるティミドは、嬉しさ半分、揶揄い半分で言った。



「えっ? 私…そんなに感じが悪かった?!」



「あ…いえ。なんと言うか、元気が全く無かったので心配していたのです。でも杞憂だったようですね」



『元気が無いか…』

ディーイーとしては出来る限り、身内に心配を掛けたく無かった。

なので平気なフリをしていたが、どうやらハクメイが奪われた衝撃を堪え切れなかったようだ。

「まだまだだな、私も…」



再び塞ぎ込み気味になった主君に、ティミドは慌てた。

『あわわわ! 藪蛇だった!』

「どうか元気をお出し下さい! ディーイー様の為に私は何でも致しますから!」



この遣り取りを見ていたヤオシュの胸中は、不可思議さと怪訝さで一杯になる。

『この2人…やはり只の団長と団員の仲では無いわね』

どちらかと言えば主従関係…それもディーイーが相当に地位が高いと思われた。


因みにヤオシュは湯浴みの世話をする役割に在る。

そう言う訳で湯には浸かれず、侍女の立ち回りをしていた。

これは謂わゆる落とし前で、優しすぎるケジメと言ったところだ。



「うん……ありがとう」

すっかり気落ちした様子で返すディーイー。

しかも心ここに在らずな感じである。



『うぅぅ…どうしたら良いの!?』

ティミドは焦りばかりが募る。

しかも仲間のガリーとシンは、気を利かせて別の浴場を使っており、誰も当てには出来ない状況だった。



するとヤオシュは見兼ねたのか、怖々(おずおず)とティミドへ囁いたのであった。

「あの…宜しければ油按摩を為さっては如何ですか? ディーイー様には非常に好評でしたので…」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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