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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1666/1765

1542話・封印された経路

刹那の章IV・月の姫(26)と(最終話)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

都督府が管理している迷宮の入り口…それは都督府舎の地下深くに在った。

否…"に在った"は正しく無い。

厳密には迷宮の入り口へ、敢えて府舎を建設した…が正しいだろう。


その理由は、迷宮側と都督が裏で繋がっていた事に起因する。

またそれは迷宮の主人(アドウェナ)の一方的な要請で、仕方なく都督が入口に蓋をしたのだった。



「今思えばアドウェナが利用するための経路だったのでしょう。そして我々にとっては魔獣の所為で、殆ど一方通行な状態なのです」

とヤオシュは説明を補足した。



「成程…都督府が直に管理している入り口が有るとは聞いていたが、そう言う事だったのか…」

などと合点がいった様子で呟くリキ。


この話は公に発表された物では無かった。

どちらかと言えば都市伝説的な噂で、以前は信憑性に欠けた話とされていた。

しかし昨今では、可笑しな事に当然の存在だと認知されている。



「一応の秘匿事項でしたが、人の口には戸を建てられないのでしょうね。恐らく調査で雇った傭兵から漏れたのかと」

とヤオシュは苦笑いを浮かべて言った。



これを不思議に思うティミド。

「それにしても良くバレずに調査出来ましたね」



「それは…多分ですがバレていた可能性が有ります。それでも放置したのは、アドウェナが我々を歯牙にも掛けていない証拠だと思います」



「ふむ…確かに”あの感じ”だと有り得ますね」

何となくティミドは納得がいく。

アドウェナの尊大さは、その強大な力に因る故だろう。


だが上には上が居る。

あらゆる存在を超越する主君プリームスとの邂逅だ。

『まさか迷宮を半壊させられるとは、アドウェナは思いもしなかっただろうな…フフッ』


しかしながら、やはり違和感も拭い切れない。

一般の入り口からの迷宮攻略は、最下層の嘆きの壁で長年止まっている。

なのに最下層へ繋がる他の経路が有るのは、ハッキリ言って矛盾でしかない。


『都督とヤオシュ団長の話を信用するしか無いわね…』

兎に角は迷宮の最下層に向かわねば為らない。

そして急ぎ主君を見付けて止めないと、アドウェナが瞬殺されかねないのだから。

「迷宮の入口へ案内して下さい」



「え…? 準備は宜しいのですか?」



「問題有りませんよ…ね?」

と返したティミドは、後ろに居る仲間を見やった。



これにシンとガリーは即座に頷き、リキも仕方なさそうに頷く。

「はい」

「うん、俺達には準備なんて殆ど必要無いしね」

「おう……けど次はいつ戻れるやら…」


皆、ディーイーから貰った収納魔道具があるのだ。

一度しっかりと蓄えてしまえば、そう何度も準備をする必要は無いのだった。

勿論、これは”永劫の帝国アイオーン・アフトクラトリア”の機密なので、他言は出来ない。



不思議そうにするヤオシュだが、直ぐに察した様子で返す。

「成程……あのディーイー様のお仲間ですものね。分かりました、ではご案内します」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






ティミド達が案内されたのは、都督府の地下深くに在る監獄の様な場所だ。

当然に全てが頑丈な石造りの構造なのだが、通路は監獄と言うには少し広い。

また所々に大きな鉄の格子扉があるので、それが一層に監獄さを感じさせるのだろう。



「ここは…防塞って感じでも無いですね?」

先導するヤオシュに、ティミドは怪訝そうに尋ねた。

都督府の地下に監獄が在っても変では無い。

只、環境が余りにも悪過ぎるのだ。



「そう怪しまないで下さい。ここは迷宮で捕獲した魔獣を研究していた施設なのです。今では機能していませんが…」

と苦笑いを浮かべて返すヤオシュ。



「そうでしたか」

ティミドはホッとする。

ここに人が投獄されていたなら、明らかに悲人道的な扱いになる為だ。

仮にそうだったなら、法の守護者…永劫の騎士(アイオーン・エクェス)として見過ごせない所だった。



そんなティミドへ、ヤオシュは足を止めて言った。

「ティミドさんは正義感が強いのですね。とても只の傭兵とは思えません」



ティミドの心臓がドキッと跳ねる。

「え…?! そ、そうですか?」



「普通なら他人の扱いなど誰も気にはしません。それが犯罪者なら尚更です」



傍で聞いていたリキは、内心でヤオシュの言葉に同調してしまう。

『確かに…これだけ強くて倫理観も持ち合わせると、一般人は無理があるよな』



そしてシンは素知らぬ顔で、ガリーは明らかに焦りが顔に出る始末。

「……」

「あわわわ…」



「私の事を詮索してどうするのです? ひょっとして藪蛇と言う言葉を知らないのですか?」

慌てた様子から一転…ティミドの目が鋭くなり、その語調には"警告"の威圧が含まれていた。



『やはり簡単には答えてくれないわね…』

ヤオシュとしては、ディーイーが何者なのか知る必要があった。

何故なら全てを託せる存在だと確信しており、故に互いを知り密な関係を築きたかったからだ。


されど強引に知る事は、"隠しいる相手"に不都合なのは道理。

今は引き下がるしか無い。

「……出過ぎた真似でしたね、申し訳有りません…今のは忘れて下さい」



別段、謝罪をされる程の事では無い。

だが今後を考えたティミドは、警告を込めて謝罪は聞き流す事にした。

「……兎に角、今はディーイー団長と合流するのが最優先です。入り口は何処ですか?」



「入り口は…もう到着していますよ」

そう答えたヤオシュは、爪先でトントンと床を叩いた。



「んん? 何も無いように見えるが?」

と身を乗り出して来るリキ。



そんなリキを押し除けて、今度はシンが割って入る。

「成程、隠し階段か何かですね?」



「ご名答です。この隠し階段は、それなりの魔力が有って、尚且つ解除用の暗証番号を知らなければ開かれません」

そのヤオシュの説明が告げられた刹那、急に床が左右に動き出す。


当然、何もしていないヤオシュは驚愕した。

「え…?! えぇぇ!?」



「それなりの魔力と暗証番号…とか言いませんでしたか?」

少し揶揄気味に突っ込んでしまうティミドであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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