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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1535話・再戦の刻(2)

刹那の章IV・月の姫(24)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「どうした…来ないのか? ならば私から行かせて貰うぞ」

そう告げたディーイーは、杖を付きながら鷹揚に歩み進めた。



これにアドウェナは僅かに後退する。

『何だ?! この威圧感は?』

相手は歩くのも覚束無い状態。

なのに告げているのだ…生存本能が危険だと。


何より見た目の変化が不可思議だ。

事前に得ていたディーイーの情報では、白銀の髪に真紅の瞳、そして華奢な女性と言う事だった。


だが実際に目で確認したのは"漆黒の髪と瞳"で、情報とは全く違った。

かと思えば、今は事前情報通りの容姿…明らかに辻褄が合わない。


『何か秘密が有るな。それに、この異様な威圧感…』

アドウェナが遥か以前に相対した武人達と似ている。


彼らは皆一様に、外見では計れない強さを内包していた。

その経験から来る無意識な危機感が、アドウェナへ警笛を鳴らしたのかも知れない。


『何にしろ侮ってはいけない』

アドウェナは右手を掲げると、それを勢いよく振り下ろした。


すると彼女の背後に控えていた前列の魔神が、20体ほど一斉に駆け出した。

その勢いたるや凄まじく、200cmを優に超える巨躯の所為で地響きが鳴った。


そして標的は杖を付いた小柄な美少女。

誰がどう見ようとも、その結果は明白に思えただろう。

しかし現実は違った。



ディーイーまでの距離が至近に迫った瞬間、襲い掛かった魔神等全てが地面に"へしゃげた"のである。



目を見張るアドウェナ。

「…!?」

『何をした?! 魔力の波動は兆しも無かった筈』

ならば魔法では無い…だが"それ以外"が何なのか見当もつかない。



「フッ…そんな雑魚では準備運動にもならんな。私を舐めてるのか?」

ディーイーは微動だにせず不敵に告げる。



地面に拉た魔神をアドウェナは見つめた。

「……」

その殆どは原型を留めておらず、その凄まじい威力が窺い知れる。


『魔法で無いなら、他の物理的な力だが…』

自分が知る範疇で、これ程の威力を誇る"技"は見た事が無い。

そうなると完全に未知の能力か、或いは常軌を逸した既存の技となる。


前者なら権能と言って良い危険な能力だ。

後者ならば更に危険と言わざるを得ない。

何故なら自分が知る最強級の技を、遥かに凌いでいるからである。


『どうする? このまま魔神を投入しても…』

無駄に戦力を損ない続けるかも知れない。

否…十中八九、そうなるに違い無いのだ。



アドウェナが逡巡している間に、ディーイーは杖を付きながら前進する。

その歩みは徐で鷹揚…恰も年老いた王の散歩の如くだ。



そんな相手にアドウェナは、一定の距離を保ち後退を余儀なくされた。

幸いなのは飛び道具が無い事だろうか。



そうして僅かだがアドウェナ等の後退が速かった為、徐々にディーイーとの距離が開く。

これを待っていた。

それとなく魔神達を操作し、両翼を伸ばす事で半包囲する…言わば鶴翼の陣だ。


正面から一斉に攻めて駄目なら、次は正面と左右からの攻撃を同時に加える。

相手が如何に強力な技の持ち主でも、これだけの物量に耐えられる筈も無い。

仮に居たとするならば、地上最強の武人…剣聖しか居ないだろう。



アドウェナが静かに一斉攻撃を指示する。

直後、先程の数を超える100体もの魔神が、正面と左右から一斉にディーイーへ襲い掛かった。



「やれやれ…芸の無い事だな」

ディーイーの呆れた風な声が聞こえた。



鈍い不気味な音が殆ど同時に響き渡り、真っ先に襲い掛かった魔神が一斉に拉る。

その数、正面が10、左右が20ずつ程。

1秒程度の間で、襲い掛かった約半数が死に絶えてしまった。


されど残りの半数は?


アドウェナは確かめる為に、態と半数だけを少しだけ留まらせたのだった。

その結果、残りの半数が時間差でディーイーを襲う形になる。



『ほほう…中々に抜け目ないな』

ディーイーは内心で感心しつつも、大した事の無いように杖を地面へ一突きする。

すると杖から何かが地面に伝播し、次の瞬間には凄まじい衝撃波がディーイーを中心に発生した。



当然、時間差で襲い掛かった魔神達は、この衝撃波を真面に食うに至る。

ある魔神は吹き飛ばされ、ある魔神は距離が近過ぎたのか吹き飛ばずに爆散する。

そうして時間差で襲い掛かった第二陣も、結局は全滅する羽目となった。


それでもアドウェナは慌てない。

この損失は相手の攻撃手段を見極める為の物で、元より覚悟していたからだ。


そして何とか見極めるに至る。

『やはり…あの杖か?』

相当に強力な”神器級の魔導具”だと考えられた。


杖を奪うか破壊するか…どちらにしろ近付く事さえ叶わない現状で、この2つの選択肢は当然に除外される。

なら取れる手段は1つ。

杖を使えなくすれば良いのだ。



「……!」

ディーイーは歩みを止めた。

アドウェナの背後に隠れていたハクメイが、急に前に出張って来たのだ。

『チッ…! 一番有効な手段に気付いたか』

そう…ハクメイを盾にして此方の攻撃を封じるのが、アドウェナの目論見なのは明らかだった。



「さぁ最後通告よ。今ここで降伏するなら、命は奪わずにいてあげるわよ。当然に私の下僕となって貰うけどね」



勝ち誇った言い様のアドウェナへ、ディーイーは呆れた様子で返す。

「勝利を確信した時、一番危ういのが分からんのか? 長く生きているようだが、馬鹿と浅慮は治らなかったみたいだな」



「何だと……」

ハッタリか?…そうアドウェナは思うも、この期に及んで姑息な手段に出るとは考え難かった。

そもそも状況は、アドウェナが絶対的有利に変わり無い。

『やはりハッタリなのか?!』



突如、ハクメイの目の前に何かが落下した。

「??!!?!」

そこから間髪入れず、一瞬で彼女は真横へ吹き飛ぶことに。



何が起こったか分からず呆気に取られるアドウェナ。

「………?!」



「私を手に入れようと、下心を出したのが失敗だったな。有無を言わせず攻撃させたら良いものを…」

そう告げたディーイーは、吹き飛んだハクメイの方へ声を張った。

「ドロスース…確保を頼んだぞ」



その声が放たれた先には、地面へ横たわるハクメイが居る。

加えて彼女に伸し掛かる女が居た。

その女は炎の様な長髪を持ち、ディーイーに迫る美貌を湛えているのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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