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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1533話・ドロスースとディーイー

刹那の章IV・月の姫(23)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

緑雷が周囲を覆い、同時にドロスースは己の意識が遠退くのを感じる。

それは今までに感じた事の無い喪失感だった。

故に"これが死"だと認識してしまう。


『……?!』

だが意識が消失する事は無かった。



「斧の形を選んだのは、原型となった人物が得意の武器だったからだよ」

そう何処からかディーイーの声が聞こえる。



しかし眩い光の所為か、その所在を確認する事は叶わない。

なにより現実なのか、或いは夢幻の中に居るのかさえも定かでは無かった。



「フフッ…そう怖がることは無い。もう光は収まったから瞼を開けてみると良い」



『瞼を開ける?』

ドロスース中で疑問が生じた。

自分は無機物な斧であり、そもそも瞼どころか目さえ無いのだ。



ディーイーの声は続ける。

「難しかもしれんが、元より備えて有った物だ。後は認識して行動に出せるか否か…兎に角は挑戦してみるんだ」



相変わらず無茶な事を言う……そう思えたドロスース。

それでもディーイーの声が、いつもと違い随分と優しかった事で、挑戦してみようと言う気になれた。


先ずは目。

この器官が外界と自身を繋ぐ最も重要な物なのは、人間を観察していて分かっていた。

これが自身の頭の正面に在る…そう認識すれば良い。


『頭…?!』

ここに来て再び困惑する事態に。

斧である自分に頭など有る訳が無いのだ。



ドロスースを察してか、ディーイーは心配そうに告げた。

「やはり無い物を想像するのは困難か…ならば見知った人間の姿を思い浮かべてみよ。それを自身に投影して”在る”と認識するのだ」



『見知った人間……』

そんな存在は主人しか居ない…そうドロスースは直ぐに思い至った。


敬愛し畏敬し畏怖する対象。

そして創造主…その主人の姿を思い描いた。

初めは困難な筈だと考えていたが、意外に容易で自分でも驚いてしまう。

しかし、それも当然と言えた。

何故なら嫌と言う程、その姿を今まで認識して来たからだ。



そうして暫くすると、ディーイーが驚いた声を上げる。

「おおっ?!」



これに何事かとドロスースも釣られて驚く。



「お…お前……ひょっとして私を参考にしたのか?」



ディーイーの問いにドロスースは肯定する為、いつもの様に取り敢えずは全身を揺らしてみた。



「ぶはは! やめい! 変な動きをするな!」

などとディーイーに突っ込まれる事に。



「…?!?」

またまた困惑する羽目になるドロスース。



「フフ…フフフッ……まぁ分からんよな。じゃぁ自分がどうなったか直に見てみると良い。あ……いつものように感知器官で認識するんじゃ無いぞ。ちゃんと”出来上がった目”で見るんだ」



主人に言われるがままドロスースは試してみる。

"出来上がった目"と言うのだから、それらしい物が自分に備わったのかも知れない。

だが無かった物を認識するのは中々に難しい。


…と思ったが、これまた意外と簡単に実行出来てしまう。

『…?!』

そして驚愕する事になった。


以前より視覚情報を認識していたのは、魔導具として備えられていた感知機能が有ったからだ。

されど今は全く違う。

感知機能では己を見る事など不可能だったが、何と今は自分?の体を視覚が捉えていたのだ。

『これが私の体?!』


人間のように手や足、それに胴体まで確認出来た。

また不思議な事に、それらが自身の体と認識するに至る。

恰も元より備わっていた知識…概念と言っても遜色無い程に。



ディーイーは苦労しながら立ち上がると、収納魔導具から姿見を出して言った。

「ほれ、これで自分の姿を見てみろ。私を参考にした所為か?、7割くらい似てるな」



「……」

初めて体感する目に因る視覚情報…これが余りに新鮮でドロスースは呆然とする。

そこから暫くして漸く我に返り、傍に置かれた姿見を目の当たりにして再び驚愕してしまう。

「…!!」



「どうした? 随分と驚いているじゃないか。そんなに人型が珍しいか?」



揶揄うようなディーイーの言葉も、今のドロスースには効果が無い。

鏡に因って得た自身の情報が、余りにも強烈過ぎたのである。



溜息が漏れそうになるディーイー。

『やれやれ…なまじ世界を認識していただけに、無機質からの変化は刺激が強過ぎたか』

だが今は悠長にしていられない。

自分一人では心許なく、"今のドロスース"が必要不可欠なのだから。


「ドロスース…しっかりしてくれ。今の私は脆弱過ぎて敵を迎撃出来ないかも知れん。だからドロスースの助けが必要なんだ」



この言葉にドロスースは直ぐに反応した。

無言で頷くとディーイーの手を優しく握ったのである。



ディーイーは遥か昔の記憶を探る。

『う〜ん…入力の器官は揃えたつもりだが、』

試験運用だっただけに、出力器官は何ヶ所か不備だった可能性がある。

100年以上も昔の事なので、既に記憶は曖昧な状態だった。

それだけドロスースを作るだけ作って、お座なりにした証拠とも言えた。


兎に角、明確な理由は分からないが、従順な様子になって安堵するばかりだ。

「頼りにしているぞ。それにしても…」

真っ裸のドロスースを前に、ディーイーは少し恥ずかしくなる。

7割ほど似ているだけに、自分が裸になった錯覚に囚われるのだ。



「…?」

首を傾げるドロスース。



『くっ…妙に小聡明あざとく可愛いな』

他人から見た自分が"こんな様子"か?と思うと、ディーイーは小っ恥ずかしくて仕方が無い。


「と、取り敢えずだ、これでも着てくれ」

色々と恥ずかしいので、収納魔導具から出した繋服をドロスースに手渡した。


それは以前、武國でディーイーが実際に着た物の予備である。

だが色は対照的に漆黒で、真っ白なドロスースの肌を更に際立たせるだろう。



受け取ったドロスースは、それを黙々と着始める。



ジッと見つめるディーイー。

『んん? 身長は私より随分と高いな。髪も真っ赤だし…』


「あ…そうか!」

失念していた事に気付く。

ドロスースを作ったのは武術の研鑽を終え、魔術の研究を始めた頃なのだ。

そうなれば今の姿と違って当然なのである。


『はぁ…これだとスキエンティアと一緒に居るみたいだな』

嫌では無い。

嫌では無いが…喧嘩別れしただけに妙に気不味く、また自己嫌悪に陥ってしまうのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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― 新着の感想 ―
こんにちは!更新される度に楽しく読まさせて頂いてます。漫画化して欲しいとまで思います。 喧嘩別れしたけど、やはり、腹心スキエンティアは常にそばに置いておいて欲しいですね!吸血鬼の子も予備でそばに置いて…
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