表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1654/1672

1530話・ディーイーと変態紳士

刹那の章IV・月の姫(22)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「うぅぅ……寒い」

下着の上下を着け終わったディーイーだが、すっかり体が冷えてしまった。

早く温かい恰好をしないと風邪をひきそうである。



「ディーイー様…大丈夫ですか?」

心配そうにディーイーを支えながらアポラウシウスが言った。



「大丈夫じゃ無い……ううぅ……へっぶしん!!」

『やれやれ…この体は何でこんなに脆弱なんだ?』



「兎に角は早くお召し物を…」

と言いながら地面に散らばる衣服を目にし、アポラウシウスは半ば唖然とする。

『…こんな薄っぺらい服では、』

ディーイーが無造作に取り出したであろう衣服は明らかに薄手で、とても体を温められる物では無かった。

何故なら見栄えばかりが特化したようなドレスだったからだ。


「ディーイー様、こんなペラペラのドレスでは意味が無いですよ…」



『あ〜〜それなら大丈夫だ。ミスリル銀の糸を編み込んでてね、温度調整の魔法を付加してある。だから心配せずに着せてくれれば良い」



「左様ですか…」

『ミスリル銀の糸?!』

アポラウシウスの胸中は驚きで満たされる。


ミスリル銀は希少な上、加工が非常に難しいのだ。

その為、実際に加工されて使用されるのは大味な物が多い。

例えば武器や防具である。

なのに"糸"にしてドレスの素材にするなど、前代未聞と言えるのだった。



こうして伝説級の魔導具に相当するドレスを、アポラウシウスはディーイーに着せ始める。

これもまた中々に苦戦する羽目となった。


普通、誰かに着付けをする場合、される側が直立不動になる。

そこへ着付けるので然して大変な作業では無い。

しかし今のディーイーは完全に脱力し、アポラウシウスが腕で支えている状態なのだ。

故に従来のような着付けを出来る訳がなかった


『くっ…これは盲点でしたね』

結局、両手を使わねば無理だと判断し、ディーイーを自分の胸に寄り掛からせて着付けする事にした。


そうなると今度は変に密着状態になったり、またならなかったり…精神衛生上、余り良くない状況が続いてしまう。

「生殺し…」



「生….? 何だって?」

アポラウシウスの独り言へ、鋭く突っ込むディーイー。

体は動かないが口は無駄に達者である。



「いえ…なにも…」

完全に諦め切ったアポラウシウスは、限りなく心を無にしてドレスを着付けた。

そうして悪戦苦闘しつつも何とか着せ終えたのだった。



その頃には目が覚めたのか、ディーイーは瞼がパッチリと開いて自身を確認出来るようになる。

「ほほぅ…初めてにしては上出来だ。私の近侍として雇ってやろうか?」



ここに来ての揶揄に、流石のアポラウシウスも頭を抱えた。

「いえ…嬉しい申し出ですが、かなり疲れそうなので辞退させて頂きます」



「フフフッ…そうか残念だな」

そう返したディーイーは、収納魔導具からポンポンと乱雑に何かを取り出した。



「ディーイー様? 何を?!」



「取り敢えず椅子を出したから座らせてくれ」

とディーイーは返した後、弱々しく椅子を指して続けた。

「さっきよりは力が入るようになったから、多分落ちる事は無いと思う」



「……」

『本当に大丈夫だろうか…』

アポラウシウスからすれば心配で為らない。

万が一、顔から地面に落ちたら、絶世の美貌が傷付いてしまう…そうなれば世界の損失と言っても過言ではないのだから。



「何を黙って見てる? 早く座らせてくれ」



「はぁ……分かりました」

物凄く手間が掛かる女児?…などと思ってしまうアポラウシウス。

だが思いとは別に、近侍のように素早く要求に応えた。



優しく抱えられ、肘掛けの付いた椅子へ座らされたディーイー。

「フフッ…何だかんだと言って様になってるじゃないか? 本当に女の世話は初めてか?」



「…!」

その問い掛けに、アポラウシウスはドキッとする。


正しくは女の世話では無く"少女"の世話だが、そんな差など今は関係ない。

的を射た問い掛けをされた事が問題なのだ。

『もしや勘付かれているのか?』


そんな筈は無い…その事実は10年以上も前の話なのだ。

どちらにしろ、これ以上の情報は与えるべきでは無い。

「フッ…面白い事を訊かれますね。私が如何様な者なのか、ご存知でしょうに」



「まぁ良いわ…取り敢えず靴を履かせてくれる?」



「承知しました」

それ以上の追求が無く、内心ホッとするアポラウシウス。


そして無造作に地面に置かれた靴を手に取り、椅子に座るディーイーを見つめた。

その佇まいは只の無骨な椅子に座っているが、不思議と気品が有り、加えて妙な威圧感が有った。



「何…?」



「いえ…その絶世の美貌と王の威厳は、古今東西で比肩する者は居ないと思いましてね」



「そんな褒め方をされても、私は全然嬉しく無いんだけど」



「フフフッ。そうですね…月並みでしたね。では失礼しますよ」

アポラウシウスは細くて柔らかい足に触れ、ソッと靴を履かせる。


その時、不思議な感覚に囚われた。

表現し難い愉悦感…この行為そのものが、恰も願ってまない褒美だと感じたのだ。


『はは…ははは……成程。これは惹かれる訳が分かる』

ディーイー(プリームス)を聖女王として慕う永劫の騎士(アイオーン・エクェス)達。

どうして彼らが魅了されたように忠誠を誓うのか?…その根幹たる理由を、アポラウシウスは身をもって知った気がした。


また思うのだ。

邂逅した”あの時”、何としても排除すべきだと認識していても、それが出来なかった。

その訳は…恐らく無意識の内に魅了されていたのだろう。



「ニヤニヤして気持ちが悪い…」



「え?! 何故分かるのですか?」



「何故って…口元がニヤニヤしてるじゃないの。すごく不気味だわ…」

とプリームスは嫌そうに返した。

顔半分を仮面で隠したい男が、自分の足に触れながら妙な笑みを浮かべれば、誰だって気持ちが悪くなる。



今更だが口元を押さえるアポラウシウス。

「……見なかったことにして下さい」



「はぁ……やれやれ。卿が気持ち悪いのは今に始まった事ではないよ。それよりも、ここは何処なんだ?」



「ここは私が張った結界の内部ですよ。少々手狭で綺麗では無いですが、ご辛抱願います」



「結界の内部だと…?!」

その事実にディーイーは驚きを隠せないのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ