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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1528話・常識人な変態紳士

刹那の章IV・月の姫(22)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

黄金騎士の小隊を従えたティミド達は、市街を行軍中に小報記者から警告を受けた。

「証拠も無しに流言を広めれば、不敬罪と扇動罪に問われますよ」


何故こうなったかと言うと、ティミドが「都督に裏切られた」と行軍中に吹聴したからだった。

しかし真実だと証明出来れば、四方京の世論に因って都督を追い込む事が可能になる。



『まぁ今の武力なら、態々世論で都督を追い込む必要もないけど…』

主君プリームスが作った傭兵団の名を貶める事は、ティミドとしては憚られた。

なら自分達は正当性を事前に主張しながら、都督へ正面から報復を行えば良いのだ。


ティミドは意を決し、小報記者へ告げた。

「今から都督府へ殴り込みに向かいます。そして都督を引きずり出して裏切りの是非を問いましょう」



これに小報記者は目を輝かせた。

「私も付いて行って構いませんか?」



頷くティミド。

「勿論です。ですが武力衝突は避けられないので、怪我をしないように離れていて下さいね」



「わ、分かりました!」

『これは一大事だぞ!』

昨今では大した話題性も無く、小報の売れ行きも下降気味だった。

ここで”これ程の特種とくだね”は起死回生の一手となるのは間違いなく、小報記者は胸が躍った。



こうして小報記者と若干の野次馬を連れ、ティミドの黄金小隊は都督府へ行軍を再開したのであった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






「うぅ……」

いつの間にか気絶していた事に、今更ながら気付くディーイー。

しかしながら体が重く、また中々瞼が開かなかった。



「目が覚めましたか?」



聞き覚えのある声にディーイーはゾッとする。

何故なら死神に借りを作ったと認識したからだ。

『うへっ!』


そしてつい皮肉ってしまう。

「こんな所まで良く来れたものだな…」



「おやおや…折角お助けしたのに、酷い言われ様ですね」



『勝手に助けといて恩着せがましい』

と思ったが、それは流石にディーイーでも言えなかった。

「いや…そう言う意味じゃなくて…兎に角は助かった、ありがとう」



「割と既の所でしたよ…本当に間に合って良かった」

そのアポラウシウスの声音からは、十分に心配する情動が伝わって来た。



「そうか…でも私の意識が有る内は、敵との接触は無かった筈だが…」



「闇の女王が聖女陛下の代わりに動かれていたようですね」



「…!!」

『そうか…私の代わりにテュシアーが皆んなを守ってくれたのか』

自分の中に存在する別の自我…それは魂の絆に因って結ばれた"肉体を共有する姉妹"と言えた。


その彼女が表に出る程に、事態が切迫していた事になる。

更にはテュシアーも危険に晒され、見兼ねたアポラウシウスが出張って来たのだろう。


「意気揚々に迷宮へ潜って、結果このザマとは…不甲斐ないな、私も」



珍しく落ち込んだ様子のディーイーに、アポラウシウスは揶揄する事なく静かに告げた。

「聖女陛下は仲間を助ける為、相当な魔力を消費したのでしょう? 不甲斐ないのは仲間であって、貴女では有りませんよ」



「……」

これにディーイーは唖然とする。

『まさか死神に慰められるとは…』



「何ですか?」

怪訝そうなアポラウシウスの声が聞こえた。



「いや…別に…。兎に角、ありがとう」



「フフッ…礼には及びませんよ。私が好きで勝手にした事ですから。それより起きれますか?」



「う〜ん…どうだろ?」

まだ瞼が完全に開かないディーイーだが、横たわる自分が真っ裸なのには気付いた。

「って! 何で全裸?!」



これにはアポラウシウスも慌てる。

「わ、私は何もしていませんよ!! お助けした時には繋服?の様な物を着ていましたが、それが急に消えて……ですから私の上着を掛けさせて貰いました」



「繋服……」

直ぐに思い当たるディーイー。

『あ…そうか! テュシアーが暗黒魔力で編んだ魔力障壁か』


テュシアーは暗黒魔力で魔法障壁を張るが、それはディーイーが使う物とは違っていた。

一般的な魔法障壁は、魔力で構成した不可視の板を前面に展開する。

これにディーイーは改良を加えて体表面へ展開する物と、体を起点に全方位へ展開する物を生み出したのだった。


そしてテュシアーはと言うと、前者を参考に暗黒魔力で”服状”の物を開発した訳だ。

これは暗黒魔力の供給が切れると暫くして消失するが、その防御性能は耐刃と耐衝撃、更には耐魔法効果を有し、実に優れものと言えた。


只、欠点が有るとすれば、衣服を身に纏った状態での発動が出来ない点である。

理由としては体表面から直に暗黒魔力を供給する為で、衣服などが干渉すると上手く維持出来ないからだった。


「ごめんごめん、疑って済まなかった。え〜と…取り敢えずは何か着ないとな」

そう返したディーイーは、収納魔導具から適当に衣服や下着を出した。

そうして着ようとするが、体に力が入らず起き上がる事すら儘ならない。



「聖女陛下…?」

心配そうに尋ねるアポラウシウス。



「…その……一人で起き上がれそうに無い。殿方には申し訳無いが、着せてくれないか?」

正に恥を忍んでの頼み事だ。

正直、ディーイーからすれば顔から火が出る思いである。



片やアポラウシウスは珍しく挙動不審な反応をした。

「え…?! あ…? わ、私が聖女陛下を着付けるのですか?!」



「う、うん…流石に素っ裸は心許ない。と言うか、聖女陛下呼びは止めてくれないかな? ここではディーイーと名乗ってるから」



「あ…これは失礼致しました。ではディーイー様…本当に私が"して"も宜しいのですか?」



「変な言い方は止めろ! こっちまで恥ずかしくなるだろ!」



「も、申し訳有りません!」



「兎に角、さっさと済ませてくれ。このままだと風邪をひきそうだ」



そんな事を言われては、アポラウシウスとしても嫌とは言え無かった。

「分かりました……」

こうして無造作に置かれた衣服を見やる。

『うむむ…まさか聖女陛下の"世話"をする時が来るとは…』

人生とは分からないものた。


そして手に取ろうとして、アポラウシウスは動きを止めた。

「……」

普通なら衣服の前に下着を身に付けるからだ。



「どうした?」

不思議そうに尋ねるディーイー。



「その…やはり下着を先にですよね?」



「はぁ……服を着てから下着をつける奴なんて、居る訳が無いだろ!」

ついディーイーは突っ込んでしまう。



「さ、左様ですね」

常識が無く色欲にまみれた者なら喜ぶかも知れない。

されど相手は天上の美貌を持つ聖女王で、自分は男なのだ。

故にアポラウシウスは嬉しさや興味よりも、畏怖の念ばかりが募ってしまうのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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