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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1526話・妄執の軍団の実行初体験

刹那の章IV・月の姫(21)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

亡者の指揮杖を手にしたティミドは、先ず小隊規模の手勢を召喚する事にした。

その理由は、この防塞内が然して広くないからだ。


「で、では…」

無骨な剣を握り目の前に掲げるティミド。


「"妄執の軍団(メタニオン)"」

魔力を込め、古代魔法語での発動を口にする。

すると目の前の虚空に、さまざまな文字列が瞬時に並んだ。


『これは…召喚する個体の名簿?!』

余の多さに目眩を起こしそうになる。

それでもティミドは必死に目を凝らし、"今"必要な召喚戦力を確認した。


名簿の一番上が恐らく"最も強力な個体"だと思われた。

理由は"その名"が1体しか記されておらず、その下へ2名、更にその下へ4名と明記されていたからだ。


『取り敢えずは…最上位から5列目まで召喚するかな』

ここで問題が起こった。

召喚名簿を確認出来ても、どうやって召喚するかが分からないのだ。


『うぅ…兎に角は試すしかないか』

考えるに一々召喚個体の名を呼んだりはしない筈。

仮に全てを召喚する場合、18000回も固体名を呼ばなければ為らない…そんな手間を主君は取らないだろう。



まごまごして居るティミドを見て、リキが心配そうに声を掛けた。

「ティミドさん…大丈夫なのか?」



「今試す所です! ちょっと黙ってて下さい!」



「は、はい!」

邪険に返されてシュン…となるリキ。


しかし彼が心配するのも無理は無かった。

都督の手勢と渡り合うには、妄執の軍団(メタニオン)が必須な為だ。

また、そこに傭兵団・黒金の蝶が加わる可能性もある…故に此方の戦力が多いに越した事は無い。



ティミドは虚空に浮かぶ名簿欄を見つめた。

名簿以外に記されているのは、端っこに古代魔法語でエクテレシィと有るだけだ。

『確か…実行って意味よね』


ピンッとくるティミド。

もしここで実行すれば、18000もの軍勢が一斉に召喚されるに違い無い。

そして実行するには多分だが"触れれば良い"のだ。

触れる必要が無いなら、態々表記する必要は無い。


『と言う事は…』

名簿欄にも触れられると考えられる。


そうして名簿の5列目までを指で触れると、触れた部分が淡く光を放った。

『やっぱり! これで実行エクテレシィに触れれば!』


即座にティミドが実行を行うと、背後に何とも言えない異質な気配を感じた。

その数は数十以上…それを認識し後ろを振り返る。


「おおおっ!! 成功した!」

つい嬉しくてティミドは声を上げてしまう。

以前に見た黄金の騎士が、微動だにせずに整列していたからだった。



その様子を目の当たりにしたリキは「ひぃ!」と声を漏らし、思わずガリーも後退してしまう。



一方シンは、然して驚いた様子も無く言った。

「丁度良さそうな数ですね…小隊未満と言った所でしょうか」



頷くティミド。

「はい。え〜と…31体になりますね」



「では早々に繰り出しますか?」

このシンの問いは、外に出れば"後に引けない"事を暗に告げていた。



「勿論です。危害を加えて来るなら、容赦無く薙ぎ払ってやりましょう」

と意気揚々と答えるティミドだが、妄執の軍団へ振り返って続けた。

「でも殺しては駄目です」



そうすると一番前で佇んで居た黄金騎士が、恭しく首を垂れたのだった。

それは「承諾した」…と十分に感じ取れるもので、一応の対話が可能な事にティミドはホッとする。


「さて、向かいましょうか、都督府へ」

そうティミドが告げて歩き出すと、急に二人の黄金騎士が先行して勝手に鉄門を蹴破ってしまった。



「「「「……」」」」

唖然とする一同。


召喚主の意を汲み取り、独自の判断で動くのは心強い。

しかしながら無頼漢然とした振る舞いは、流石に時と場合を選ぶ。

万が一、鉄門の向こうに一般人が居たら…そう思うとゾッとする。



『ま、まぁ良いか…次から気を付けて貰おう』

傍に立つマントを羽織った黄金騎士へ、ティミドはソッと囁いた。

「一応は一般人が居る可能性も考慮して下さいね」

この個体は名簿の中で一番上に名が記された、最上級の騎士である。

名はヘネラルと言った。



これにヘネラルは再び首を垂れた。



『何だか凄く礼儀正しいわね…』

他の黄金騎士が荒々しいだけに、そう言うものなのだと思っていたが、どうやら最上位個体ヘネラルは違うようだ。



そうこうしていると、先行した2体の黄金騎士が関門へ突撃して行った。



「あ…」

余の勢いの良さにティミドだけで無く、ガリーとリキまでもが見入ってしまう。


何と言うか…実に大雑把。

ひょっとすれば個々の武力が永劫の騎士(アイオーン・エクェス)級なのかも知れないが、それでも普通は警戒しながら進むものである。

それが斥候役なら尚更だ。


つまり対外的な能力の差が歴然としている?

それを判断出来る感覚や、或いは能力が黄金騎士等に備わっているのか?

どちらにしろ心強いが、色々な意味で肝が冷えそうだ。



「こちらには銀冠の女王(ノクス)も居ますし、この戦力でも全然大丈夫そうですね…」



ティミドの呟きに、シンが同調する様に相槌をうった。

「はい。只、都督府までは少し距離が有ります」

つまり黄金騎士を連れて練り歩くのか?と、シンは暗に問うているのである。



「あぁ…確かに目立ちますよね。どうしよう…」

距離をティミドは失念していた。

仮に市街を練り歩けば、都督府へ向かっていると察知されるだろう。

そして都督は迎え撃つ準備をしてしまう訳だ。



「あ…でも問題ないか」



ティミドの呟きに、シンは首を傾げた。

「問題無いとは?」



「こちらの戦力が"これだけ"だと思わせるんですよ。幾ら個々が強くても、小隊未満で都督府の制圧は無理が有りますから」



「成程…過小に見積もらせる訳ですね」



「その通りです。都督府側が迎撃態勢を取っていれば、一気に2個師団を召喚して圧倒してやりましょう」



それを聞いたリキは嬉しそうに言った。

「ははっ! 都督府の奴ら、絶対に腰を抜かすぜ!」



透かさず突っ込むガリー。

「まるで自分の手柄みたいな言い様ね。さっきからビクビクしてる癖に」



『だってよ〜〜幾ら味方だからって、あの黄金騎士が怖いんだから仕方ねぇだろ」

黄金騎士に"しごかれた"過去が有るだけに、リキからすれば味方でも中々慣れないのだ。



それはガリーも同様で、つい苦笑いを浮かべてしまうのであった。

「うぅ…確かにそうね」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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