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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1520話・背水のテュシアー(3)

刹那の章IV・月の姫(19)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

一息つく間も無くハクメイの攻撃が続く。

その一撃一撃は必殺の膂力が籠り、加えて数発に1回の割合で捕縛の挙動が含まれた。



これにテュシアーは悪戦苦闘してしまう。

ただ避け続けるだけなのだが、攻撃には緩急が有り一定では無かったからだ。

『おのれ! 妙に巧みな!』


只、その攻撃には技術が伴っておらず、”武人では無い”テュシアーでも辛うじて回避出来ていた。

つまりこの戦いは超絶者で在りながら、ずぶの素人2人が暴れている状態な訳だ。

全くもって身内…特に永劫の騎士(アイオーン・エクェス)には見せられない無様さだった。



『やはり変だ。達人的な動きをしたかと思えば、今は素人の様にも見える…』

アドウェナはテュシアーの動きを観察し、疑問と違和感ばかりが湧き起こる。


また強大な魔術を駆使するのは間違いない筈。

なのに防御への使用に留まり、遂には全く使わなくなってしまった。


『まさか…魔力枯渇寸前なのか?』

それなら合点がいく。

ならば残された魔力で、必殺の一撃を狙ってくるだろう。


只、1つ懸念が有るとすれば、やはり一度見せた並々ならぬ動きだ。

あれ程の動きが可能なら、少なくとも国家に仕える騎士団長級の実力に相当する。

その力を発揮され尚且つ魔法まで行使されると、手に負えなくなるのは明白だ。

『兎に角、警戒は緩めない方が良いわね』



「ぅおっ! わっ! ちょっ!?」

などと声を漏らしつつも、何とかハクメイの攻撃を躱し続けるテュシアー。



そんな状態で5分が経過し、流石のハクメイも息が上がり始めた。



『よしっ! 今なら』

テュシアーは残り少ない暗黒魔力を使い、アドウェナへ暗閃カオスルークスを放った。



「…!!」

『やはり狙っていたか!』

アドウェナは回避に全身全霊を注いだ。


恐らく掠っただけでも危険な魔法なのは明白。

反撃の事など考えず、可能な限り大きく避けたのだった。



『くそっ…警戒されていたか!』

そうして暗黒魔力が枯渇しかけたテュシアーは、耐え切れずに片膝をついてしまう。

『まずい…』

気絶するような勢いではない…しかし目眩がして視界が霞んだ。



「フフッ…やっぱり随分と消耗していたようね」

嘲笑うかのようなアドウェナの声がした。



直後、緩慢だった筈のハクメイが急に速度を上げる。

それは捕縛の体勢であり、片膝をついたテュシアーに避ける術は無かった。



標的を失った暗閃カオスルークスが壁に直撃し、凄まじい破砕音と瓦礫を周囲に撒き散らす。

それと同時にテュシアーはハクメイに押し倒されたのだった。



「⬜︎◯△×◯!!」

地面に背中を強打し、声にならない悲鳴が出るテュシアー。

『ほ、本当に不味い!』


よくよく考えれば他に色々と手段が有ったのだ。

なのに余力を計算せず、根拠の無い自信で力押ししてしまった。

今更ながらに自分とプリームスの差を実感するばかりだ。



馬乗りになったハクメイは、追撃はせずにテュシアーの両腕を押さえた。



『私を捕えるつもりか』

テュシアーの心は半ば諦めの状態に至る。

既に暗黒魔力は底を尽き、動き回った所為で体力まで限界に達していたのだ。


「…え?!」

伸し掛かるハクメイを前に、テュシアーは目を見開く。

雫が頬に落ちたのである。


ハクメイの表情は"無"そのもの。

しかし目からは涙か溢れ、体は小刻みに震えていたのだった。



『意識までは完全に操れていないのか?』

魅了か、或いは強制力の強い催眠系の魔法か…どちらにしろ、ハクメイに認識出来る水準の意識が有るのは間違い無い。


「ハクメイ…ごめんね。私と戦うだなんて、嫌だったろうに…」



このテュシアーの言葉で、更にハクメイの涙が溢れる。

それでもテュシアーを押さえ付ける膂力に、全くの緩みは起こらなかった。

つまり相当に硬度の高い強制力のなのだろう。



『大事なハクメイに残酷な事をしおって!』

怒りが沸々と湧き上がるテュシアー。

只では済まさない…そう誓った時、傍にアドウェナの気配を感じた。



「フッ…国を簡単に滅ぼしそうな超絶者も、これでは形無しね」

アドウェナはテュシアーを見下ろし皮肉るように言った。



「戦いと言うのは最後まで分からないものよ」

押さえ付けられて尚、テュシアーは不敵な言い様をする。



『何だ? この妙な自信は…』

怪訝に感じた刹那、アドウェナの中で警笛が鳴った。

それは相手の違和感の所為か、またはアドウェナ自身が培った危機に対する超感覚なのか?


どちらにしろ早々に片を付けねば安心為らない。

「終わりだ。貴女もハクメイ姫と同じく、私の傀儡となって貰いましょうか」



突如、何かが目の前に出現し、アドウェナとハクメイはギョッとする。



出現した物体…それは柄が2m近くにも及ぶ巨大な斧だった。



『なっ?! こんな物が何故!?』

アドウェナは困惑した。

されど考えるまでもない…目の前に押さえ付けられた超絶美少女の仕業に違いないのだから。



巨大な斧は両刃の部分を下にして、真っ直ぐに柄先を虚空へ向けている。

その様子は余りに異質あり不気味…故に一瞬にして場の空気を凍り付かせた。



『何か嫌な予感がする…』

何かされた後では不味い…そう考えたアドウェナは、直ぐにハクメイへ指示を送った。



それにハクメイは即時呼応し、両膝でテュシアーの両腕を押さえる。

そして空いた両手はテュシアーの首へ掛けられた。



『うぅぅ…締め上げて気絶させるつもりか…』

この状態ではテュシアーに成す術なく、されるがままに首が締め上げられるのを待つだけだった。



だがその時「ぎゃんっ!?」と声が上がる。



「…!??」

危険を感じ慌てて飛び退るアドウェナ。

上がった声は小さな悲鳴で、頭を抱えてうずくまるハクメイの姿が見えた。


『一体何が?!』

目に止まったのは僅かに揺れる巨大な斧…それ以外には何も見当たらなかった。



「はぁ……やれやれ。か弱い女子を思いっきり押し倒すとは…」

などと言って徐に立ち上がるテュシアー。

その首筋には絞められた痕が痛々しく残っていたのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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