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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1514話・超常の神器と護衛

刹那の章IV・月の姫(18)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

暗閃カオスルークス・│極改リメースが物凄い速度で地面に吸い込まれ、気付けば轟音と振動は随分と遠のいていた。

しかし直ぐにティミド達は身を縮こまらせる羽目になる。


数秒後、大地震かと思うほどの凄まじい振動が起きたのだ。

「キャッ?!!」

「うぉお?!!」

「な、何??!」

とティミドとリキ、それにガリーは声を漏らして片膝をついた。


またシンは既に屈み込んでいた為、そのまま尻餅をついてしまった。

「ぅわう?!」



一方、この大振動の原因と思われるテュシアーは、平然した様子で告げる。

「着弾したな。これで門番ゲートキーパーとやらも粉微塵だろう」


そうして超魔力隔壁ファランクスを解除し、皆へ向き直って続けた。

「これから私は迷宮の中枢を急襲する。君達は遣るべき事をするがいい」



「待って下さい! そんな事を急に言われても、私達だけでは…」

そこまで言ったティミドは、その先を言い淀んでしまう。


"恐らく敵に対処し切れない"…それが今の実情だ。

しかし誇り高い永劫の騎士(アイオーン・エクェス)の自分が、そんな事を言える訳も無かった。



すると察したのか、或いは元々当てにしていなかったのか、テュシアーが配慮した言い様をする。

「あ〜〜君達だけでは心許ないな。なら、これを渡しておこう」



「これは…」

ティミドに手渡された物は、何の装飾も無い無骨な剣だった。

『亡者の指揮杖!!』



「本来なら私やプリームスしか扱えないが、例外的に"ティミドも"使えるようにしておいた。対処し切れない場合は、迷わず妄執の軍団(メタニオン)を呼びなさい」



「よ、宜しいのですか?! このような神器を私なんかが…」

これまでの対応と違い、急で大き過ぎる施しにティミドは困惑する。


この指揮杖はプリームスが居た以前の世界で、プリームスに仕えていた死者を呼び出す魔導具なのだ。

しかも死者は並々ならぬ武人達で、呼び出せる最大数はニ個師団に相当する。

つまり何も無い所から、突如強者の軍勢が召喚される…正に神器と言える代物である。



「構わない。きっとプリームスも貸し与えていた筈だし、私にとっても貴女は大事な身内だから」

そうテュシアーは恥ずかしそうに答えた。



「有難う御座います」

その配慮にティミドは深く首を垂れ、そして思う。

テュシアーは独走的ではあるが、決して身内や仲間をおもんばかれない為人では無かったと。

また主君プリームスの別人格だが、よくよく考えれば同じ存在なのは変わりないのだ。



「フフッ…良いのよ。それから…護衛も付けておくわ」

と告げたテュシアーは、指を鳴らして誰にともなく言った。

「出ておいで…」



ティミド達の背筋が凍った。

それは一度感じた事のある恐怖、又は畏怖と言うべきかも知れない。


銀冠の女王ノクス…辛うじて人の形を成した闇色の精霊王。

その超常の存在はテュシアーの背後に立ち、虚に此方を見つめている様だった。



「プリームスから聞いているだろうが、ノクスは闇、無、空間、次元を司る精霊の王なの。危険だから直視はしないようにね、意識を持っていかれちゃうから」

などと皆へ忠告した後、テュシアーはノクスへ目配せする。



そうするとノクスは音も無く移動し、ティミド達の傍に佇んだ。



「こ、こんな強大な存在を護衛にですか?!」

嬉しいやら悲しいやら…ティミドは恐怖の余りに声が震える。


ノクスから放たれている魔力?は凄まじく、勝手に体が震えてしまうのだ。

恐らく"抑えている筈"だが、それでも超常の力は人間に恐怖を与えるのだろう。

故にリキとガリーとシンは、ティミド以上に緊張して硬直する有様だ。



「あ……常人ではキツいか」

失念していたように呟くテュシアー。

そして手振りだけで指示を出すと、ノクスはティミド達の足元へ吸い込まれるように消えたのだった。



「え…?! 何をなさったのですか?!」

慌てて尋ねるティミド。

恐怖心も同時に消失したが、その尋常では無い存在感は依然と感じる。

何より自分の影へ同化した風で、実に不気味で仕方が無かった。



「ノクスはね、あらゆる闇と同化する事が出来るの。影も例外では無いから、いつも通り安心して振る舞えば良いわよ」



『んん…??』

要領を得ない答えにティミドは戸惑う。

「そ、その…銀冠の女王の影響は受けないのですよね? でも私達を守ってくれると?」

身を潜めながら自分たちを守るなど、果たして可能なのだろうか?



「フフッ…精霊の王を侮ってはいけないわ。貴女達を守るなんて片手間で可能よ」

と微笑みながら返したテュシアーは、身を翻して暗閃カオスルークス・│極改リメースで穿った穴へ向かった。



「あ……お、お待ち下さい! 何処に行かれるのですか?」



「さっき言ったでしょ…中枢を急襲するって。貴女達は危ないから私に直接付いて来ない方が良いわ」



「そんな……」

全く当てにされいない…そう実感したティミドは自身に落胆する。

東方での戦いでもそうだった。

プリームスに随行したのは良いが結局は守られてばかりで、挙句の果てには足手纏いになってしまった。


『あの時と何も変わっていない……』

本来ならば主君を守るべき立場なのに、その土俵にさえ立っていないと自覚した。



するとテュシアーは徐にティミドの傍へ来て囁く。

「君一人なら随行を許可しただろう。何故なら君は私が守らずとも大丈夫だからだ。だが他の3人は違う…今の私でも皆を守り切りながら戦うのは無理が有るからね」



「…! では私の役目は?」



「私が派手に暴れている間、別経路から迷宮の”本体”へ向かいなさい。そして可能な限り情報を収集するのよ」



”可能な限り情報を収集する”…それは詰まり迷宮側が都督だけで無く、何らかの他勢力との繋がりを示唆していた。

また画策する手段や目的を探れ…そうテュシアーは暗に指示しているのだ。


それを即座に汲み取ったティミドは頷く。

「承知しました。ですが隠密に特化されている訳では無いので、そんな私でも大丈夫でしょうか?」



「亡者の指揮杖で多種多様な人材を召喚可能だ。まぁ人外ではあるが召喚主の指示に従う故、問題なく補助してくれるだろう」

と告げたテュシアーは踵を返し、地面に穿った穴へ身を躍らせた。



「あ……!」

正に取り付く島も無く、ティミドは半ば呆気に取られる。



「ティミドさん…俺達だけで大丈夫なのか?」

リキが不安そうに尋ねてきた。

その後ろではガリーだけでなく、シンまでもが憂慮な表情を浮かべている。



「……大丈夫とは言い切れませんが、十二分な配慮をしてもらえました。ですから此処からは私達次第です」

ティミドはそう答えた…だがそれは仲間へでは無く、自分自身への鼓舞でもあった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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