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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1636/1765

1512話・迷宮の最下層(1)

刹那の章IV・月の姫(17)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

隔壁結界を抜けて下層へ降り立ったティミドは、周囲を見渡して感心した。

「ここは…中層とを繋ぐ階段だったのですね」



「うん…ちゃんと進める場所でないと、またティミドに怒られそうだからな」

と若干の皮肉を込めて返すテュシアー。



「え…あ、はい…先程は怒鳴ったりして申し訳有りませんでした」



「フフッ…まぁ冗談だ、気にしないでくれ」

そう告げたテュシアーは先頭に立って歩き始めた。

その足取りは迷いが無く、まるで迷宮の下層を知り尽くしているかの様だ。



そんな一応?の主をティミドは呼び止めた。

「お待ちください、テュシアー様!」



また小言か、或いは怒られるのかと思い、ビクッとなるテュシアー。

「な、何…?」



「え〜と…その格好のままは少々不味いかと」



「え? あ……」

ティミドに指摘され、今更になってテュシアーは気付く。

今の格好は楽に過ごせる寝巻き姿なのだ。

しかも少し透け感があり、とても冒険者などがする出立ちでは無い。



「俺も少し気になっていた。そんな格好だとかすっただけで大怪我になり兼ねないぞ」

と一番後ろに居たリキが心配そうに言った。



「ふむ、皆の目の保養になって良いかと思ったが…やっぱり駄目か?」



『おいおい…目の保養て…』

リキは突っこまずには居られない。

「いや…それはディーイーさんの許可も要るんじゃないのか?」

何とかディーイーの美貌に慣れてきた所ではあるが、ここまで露骨に体の線を強調されると目のやり場に困ってしまう。



するとテュシアーはニヤリと笑みを浮かべて返した。

「クククッ…そう焦るな、冗談だよ」



『こ、こいつ~!! 揶揄いやがって!!』

「と、兎に角だ、安全且つ目のやり場に困らないよう頼む」



「分かった分かった…口喧しく言うな」

面倒臭そうにあしらった後、テュシアーは肩に掛けていたケープを瞬時に消した。

収納魔導具へ仕舞ったのである。



そうなると先程にも増して薄着になり、その扇情的な体の線が顕著になってしまう。

「おいおいおい?! 脱いでどうする?!」

なので再び突っ込む羽目になるリキ。



「本当に騒がしい奴だな…黙って見てろ」

そのままテュシアーは着ていた寝巻だけでなく、下着まで収納魔導具に仕舞って真っ裸になった。



慌てて目を背けるリキ。

「うぉ?!?」



一方、ガリーとシンはガン見してしまい、ティミドはと言うと頭を抱えた。

「わぉ!」

「あらあら」

「はぁ……」



その直後、テュシアーの目の前に拳大の漆黒球体が出現する。

そしてそれは突如膨張して広がると、布のようにテュシアーの体に巻き付いたのだった。



またもや慌てる羽目になるリキ。

「おうぉ?! テュシアー様、大丈夫か?!」

因みに先ほど目を背けたが、こっそり見ていたのは内緒である。



「はぁ……いちいち喧しい奴だな……」

その巻き付いた漆黒の布?には抵抗せず、只々テュシアーは溜息をついた。

そうすると見る見るうちに顔以外を漆黒の布が覆い、恰もピチピチの続服つなぎふくを着ているようになった。



「これは……」

下手な真っ裸よりも扇情的…と思ってしまうティミド。

また良く見れば顔だけで無く、胸元もパックリと開いている。

その所為で非常に均等の取れた?魅惑さを醸し出していた。



「勘弁してくれ…テュシアー様よ。そんなんじゃ結局裸と大差ないぞ…」

などとリキは愚痴るが、ちゃっかり目は逸らさない。

『うわぁ……あんなに華奢なのに、凄い胸がでかい……』



「君達の要求通り、安全と目のやり場に困らぬよう配慮したのだ…ガタガタ言うな」

テュシアーの言葉は相変わらず結果だけで、その内容の詳細までは語られていない。



これに当然ティミドが釘を刺した。

「見た目は百歩譲って、その黒い布?を体に巻き付けた程度で、十分な安全が確保出来るようには思えませんが?」

辛辣な語調が含まれるが、それでも僅かで、一応は主である事への配慮だった。



だがテュシアー側の捉え方は違った。

「こ、これは暗黒魔法で作り出した特殊な続服なの! 並みの刃物程度じゃ私に傷一つ付かないし、打撃にも耐性があるのよ」

と焦りながら釈明する有様…もはや暴君然とした威厳は、完全に鳴りを潜めている。



「……左様ですか。ならプリームス様が常時展開していた魔法障壁に匹敵すると?」



「も、勿論よ! 魔力を使わない点で言えば、費用対効果ではプリームスの魔法障壁を上回るわ」



「成程……分かりました。それなら問題なさそうですね」

納得した様子を見せるティミドだが、その胸中には怪訝さが湧き起こっていた。

それは”魔力を使わない点”だ。


『暗黒魔法は魔力を使わない? いや、でも……』

漠然とではあるが、強大な魔力の波動は感じる。

故に何か怪しい事をしているのではないか?…そんな不安を抱かざるを得ない。

しかも敬愛するプリームスの体を勝手に使い、これを成しているのだから尚更である。


兎に角、今はプリームスの意識が眠っている以上、自分が能動的に干渉できる事は無い。

そこは悔やまれるが、先ずはハクメイ姫の奪還を優先すべきだろう。



こうして何とかティミドの許可を得た形になり、テュシアーは胸をホッと撫で下ろした。

されど目の前の問題は何も片付いていない。

『やれやれ……急いでハクメイを探さないといけないのに、』

こんな所で道草を食っている場合では無いのだ。



その時、迷宮特有の湿った空気が、急に温かくなるのを感じたのだった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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