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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1511話・御したり御されたり

刹那の章IV・月の姫(17)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

完全に消失してしまった迷宮の中層。

しかし余りにも広大過ぎて、全天は闇…まるで瞬く星の無い夜空だ。


そんな闇の空間を、1つの小さな灯りが照らす。

これはテュシアーが発動させた照明魔法で、その淡く温かい光がティミド達に安心感を抱かせた。



今、傭兵団・眠りの森は、テュシアーの残した足場で下層に向かって下降中だ。

と言っても直径が10mにも満たない足場で、尚且つ自分達が乗っているだけに厚さも分からない。

それだけに崩壊しないか心配でならなかった。



そうして5分程を掛けて底?に到達すると、真っ先にリキが足場から降りようとした。

空中に居る事が怖くて仕方なかったのである。



だがティミドが彼の腕を掴んで止める。

「待って下さい! 怖かったのは分かりますが、安全が確認出来るまで動かないで!」



「お、おう!」



「フッ…命拾いしたな。今降りたら死んでいたかも知れないぞ」

そう告げたテュシアーは、座っていた椅子を放り投げた。

すると椅子は足場の外へ落ち、凄まじい音を立てて砕け散るのだった。



「なっ?!」

と声を漏らしてリキは固まる。

灯りが届いていないので明確には分からないが、一見して何も無いように見えたのだから当然だろう。

『おいおい、何なんだよ?!』



「これは…ひょっとして迷宮の隔壁なのですか?」



ティミドの問いにテュシアーは頷いた。

「ご名答だ。私の推測通り、相当に強力な隔壁結界だな。恐らく普通に越える事は無理だろう」



「えぇぇ…無理って、では如何するのですか?」



「簡単な事よ…気付かれないように亀裂を入れて、そこから隔壁の内側へ侵入する」



『簡単な事って…』

自分本位な言い様をされ、ティミドは怒りを覚えた。

「貴女には簡単かも知れませんが、私達には成す術が無いのです。ちゃんと方法と手順を仰って下さい!」



「えぇぇ…そんなに怒らなくても…」

シュン…となるテュシアー。



「怒ってません!」



『いやいや、どう見ても怒ってるでしょ…』

ティミドが言っている事は理解出来る、しかし怒る理由が分からずテュシアーは困惑する。

「え〜と…兎に角、ちゃんと説明するから良く聞いてくれる?」

なので取り敢えずは下手に出る事にした。



「はい、分かり易くお願いします」



こんな二人の遣り取りを目の当たりにし、リキとガリーとシンは驚きを隠せないでいた。

相手は暴君と言っても差し支えなく、しかも相当な超絶者なのだ。

それでもティミドは一歩も譲らず、その姿を例えるなら猛獣使いと言えるだろう。



そんな3人を他所に、テュシアーは説明を始めた。

「隔壁結界と言っても、所詮は魔力や魔法機構に依存するわ。だからその繋がりを部分的に分解して、人間が一人通れる穴を開ける」



「その穴を通って下層に降りるのは良いのですが、危険ではありませんか?」

本当に安全でなければ、ティミドとしては許可出来ない。

何故なら今のテュシアーが余り当てにならないからである。

『私が皆んなを守らないと!』



そうするとテュシアーは、少し考えてから答えた。

「…そんなに安全を担保したいなら、開ける穴を大きくするわ。それなら誤って隔壁結界に触れる事も無いでしょう?」



「では、それでお願いします」



『やれやれ…やっと許可が出たか』

などと思いながら、テュシアーは自分が御されている事に気付く。


『待て待て! 私はプリームスと同格の存在なのだぞ!』

しかし現実は目下の機嫌を窺う始末だ…こんな有様で良い筈が無い。



急に黙り込んだテュシアーに、ティミドは怪訝そうに尋ねた。

「どうかしましたか?」



「……その…下に降りてから二人きりで話がある」



「……? はい、分かりました」



こうして気持ちを切り替えたテュシアーは、足場の淵に立って不可視の隔壁結界へ右手をかざす。

上位解析アナリクス


視覚化した魔力の流れや魔法機構が、テュシアーの目へ具に映った。

『ほほう…やはり相当に出力の高い結界だな』

だが仕組み自体は大味で、然して複雑では無い。

ならば少々手を加える程度は造作も無かった。


即座に"似せた魔力"を編み出し、それを隔壁結界にソッと接触させる。

すると元から同じ物だったかの様に融合して、テュシアーと隔壁結界を魔力の糸で繋げた。


『さて、後は少しいじってやるだけだな』

そうしてテュシアーは前もって組み上げていた魔法機構を、反発されないよう慎重に隔壁結界へ送り込んだ。



「あ……!」

ついティミドは声が漏れてしまう。


先程まで何も無かった筈の眼下に、前触れも無く虹色の膜?が現れたのである。

またそれは何かを侵食するように広がり、1分と掛からず5m四方の範囲を鮮やかに彩ったのだった。



「安全の為、一応は視認出来るようにしておいた。この虹色の範囲から下へ飛び降りても良いぞ」

と少し疲れた様子で告げるテュシアー。



故にティミドは心配になった。

「あの…テュシアー様は大丈夫なのですか?」



「…? 大丈夫とは?」



「そのお疲れの御様子なので……」



その返しにテュシアーは意外に感じた。

「私を心配してくれるのか? 嫌われているとばかり思っていたが…」



「え…?! 私、そんな失礼な態度を取っていましたか?」

まさかの反応でティミドも意外に感じ驚いてしまった。



『おいおい…無自覚だったのか?』

「う~む……例えば相手が大貴族や王族なら、不敬罪になっていた程度かな」



「え……えぇぇ?! 申し訳ありません!」

直ぐに謝罪するティミド。

今思えばテュシアーを御そうとした事が、そもそも不敬だったのだ。

『うぅぅ…私とした事が目の前の事に捉われて、一番重要な事をお座なりにしてしまった…』


テュシアーは主君プリームスと同じ存在と言って差支えが無い。

それを失念していたとは、正に永劫の騎士(アイオーン・エクェス)失格である。



テュシアーは微笑みながら告げた。

「フフフッ…嫌われていないのなら別に構わない。プリームスが大切に思っている存在は、私も大切に思っているしな」

『まぁ後で釘を刺す必要もなさそうだな』



『あぅぅ……そんな美貌と表情で言われたら……』

これには流石にドキッとしてしまうティミドであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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