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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1508話・じゃじゃ馬の手綱

刹那の章IV・月の姫(16)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「お待ちください! もう少し私達へ分かり易く説明をして頂けませんか?」

ティミドは問い詰めるようにテュシアーへ迫った。



これに後から来たリキ達は、状況が見えず気が気でなくなる。

まるで喧嘩しているように見えたからだ。



眉をひそめて返すテュシアー。

「私に説明責任を果たせと?」



「左様です。それに貴女は団長なのですから、身内の私や仲間の安全を担保しなければ為りません。幾ら機嫌が悪いからと言って、無下にされるのは信義に反しますよ」

正に主君を諌める臣下の言葉だった。



テュシアーは僅かにしかめ面をすると、

「……分かった。説明もするし、君達の安全も確保しよう。只、私の邪魔や煩わせる事をすれば、即座に見捨てるからな」

などと諦めた様子で告げる。



「有難うございます」

『良かった…一応は話が通じるのね』

内心ホッとするティミド。

正直、勢いに任せて諌めたは良いが、それで逆鱗に触れたら意味が無い。


また主君の中に在る別人格とは言え、"信義"に対しての反応を見るに、やはりプリームスなのだと思えた。

それでも過信し過ぎては駄目だ。

為人を完全に把握していない以上、些細な事で不興を買うかも知れないのだから。



「先ず、この迷宮は階層ごとに独立している。一見して繋がっていて1つの構造体に見えるがな」

そう前置きしたテュシアーは、地面へ足先で絵を描き続けた。

「故に管理機構…特に危機管理の機構は完全に個々で機能しているから、中層が崩壊すれば即座に隔壁結界が作動するわ」



地面に描かれた簡単な絵には、中層と下層を隔てる太い線が引かれていた。

そして下層の絵の下には、何やら良く分からない物も描かれている。


それは余りにも簡略的でティミドには理解出来なかった。

『んん?? 何これ…? 巨大な球体?』



その様子を見たテュシアーは、描かれた上層から下層の絵を足先で払って消してしまう。

「上は飾りだ」



「え…? 飾り…ですか?」

『この巨大迷宮が飾りって事?!』

ティミドは半ば信じられなかった。


長年に渡り幾多の傭兵団が挑み、未だに中層も完全攻略されていない南南東の巨大迷宮。

それが只の飾りなどと鵜呑みに出来る訳が無い。


仮にテュシアーの言葉を信じるなら、北方の迷宮常識が覆る事になる。

何より"飾り"だとするなら、更に強大な何かが潜んで居る可能性が考えられた。

『そんな危険な物を南門省は抱えていたの?!』



そこへリキとガリーが来て恐る恐る尋ねる。

「喧嘩してた訳じゃないんだなよな?」

「え〜と…大丈夫?」


因みにシンはと言うと、少し離れた位置から周囲を警戒していた。

主が攫われたのに、一番冷静で胆力が有るのはシンかも知れない。



テュシアーが皆を見渡して言った。

「凡庸な者には理解し難いだろうが、この迷宮は隠れみのでしか無い。恐らく地中の黒幕が、迷宮核を植えるよう手引きしたのだろうな」



ここで漸く凡そを理解したティミド。

この迷宮の主?は何十年も以前に、北方の全域と戦争をした魔教の副教主なのだ。

そんな輩が企む事など決まっている。

「まさか魔教の再興を目論んでいる?!」



リキとガリーは訳が分からず困惑した。

「ちょっ…ま、待ってくれ! 話が全然見えて来ない。順序立てて説明を頼む」

「確かに俺達を襲ったアドウェナ・アウィスは、魔教副教主の名だけど…かたっているかもしれないし、」



一方テュシアーは、いつの間にか出した椅子に座って踏ん反り返っていた。

恰も面倒臭い話は知らん…と暗に言っているようである。



『もうっ! 面倒臭がりなのはプリームス様と一緒なんだらか!』

仕方無くティミドは、自分の推測をリキとガリーへ説明する事にした。

「え〜と…」



【5分後…】



「なっ?! この迷宮が本体じゃないってか?!」

つい大声を出してしまうリキ。


そしてガリーも信じられない様子だ。

「そんな……」



そこにシンが来て至極冷静に告げた。

「本当に魔教の復活を画策しているなら、国家間で牽制し合いなどしている場合では有りませんね」



同調するティミド。

「その通りです。その上、魔神まで使役していましたから、きっと戦力は相当な物の筈…急ぎ対策しないと先手を取られますよ」



そんな四人の会話にテュシアーが割って入った。

「何を慌てる事が有る? 私が殲滅してやると言うのに」



「それは性急過ぎます。他に協力者が居る可能性が大きいですし、捕らえて情報を引き出すべきかと」



ティミドの進言に、テュシアーは実に嫌そうな表情を浮かべる。

「それは君達の都合だろう。私はハクメイを奪還し報復が済めば、他には何の興味も用も無いのだぞ」



「プリームス様も同じ考えなのですか?」



この問いにテュシアーは口籠った。

「い、いや…それは……」

『くそっ…やりにくいな』


強引に"力"で黙らせても良いのだが、それをしてしまうと絶対にプリームスの怒りを買う。

そうなれば今より"面倒な事態"に発展し、もう"表に出る事"は出来なくなるだろう。


まだそれだけなら良い。

もしプリームスが自分を嫌いになったら…存在さえも消去されるかも知れない。

『それは絶対に嫌だ!』



口籠るテュシアーに、ティミドは執拗に迫った。

「何ですか? プリームス様の同意を得ていないですか?」



「うぅぅ……そうよ勝手に私がやろうとしているだけよ」



「……そうですか。ならプリームス様と相談は出来るのですか?」



「いや……今は疲労で完全に意識が眠ってしまっている。無理に起こす事はしたくない」



「左様ですか。でしたら後でお叱りを受けないよう、無難な方法を選びませんか?」

今度は優しい口調と声音に努めるティミド。

プリームスをかさに懸ければ、何とかテュシアーを制御出来そうな手応えを感じた。

なら飴と鞭を使いこなせば、上手く誘導できると思えたのだ。



「うん……分かった……」

結果、テュシアーは子供の様に諭されて、受け入れる形となるのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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