表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1631/1765

1507話・不機嫌なテュシアー

刹那の章IV・月の姫(16)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

テュシアーは両腕を前で組み、"非常に"不機嫌そうな口調で告げた。

「この有様で、お前達の味方をしろと? ふざけた事を言う」



この有様とは、恐らくディーイーの状態の事を言っているのだろう。

それを敏感に察したティミドは、申し開きする術が無い様子で俯いてしまう。



「「……」」

それはシンとガリーも同様だった。

自分達が不甲斐ない所為でハクメイが攫われ、挙げ句の果てにディーイーを昏倒させたのだから。



しかしリキは違った。

「テュシアー様よ…あんたの言いたい事は分かる。でもな、そんな事で今は揉めてる場合じゃ無いんだ」



「そんな事だと…?」

そうテュシアーが言った刹那、天幕内の空気が一瞬で凍り付く。



ティミドが慌てて間に入り、即座に跪いた。

「も、申し訳ありません! この男は貴女様やプリームス様の事を理解していないのです! どうか無礼をお許し下さい!」



「……」

庇われたリキは唖然とする。


仲間が攫われ、更に自分達は絶体絶命な状況だ。

そんな自分達よりもプリームス(ディーイー)への配慮が重要視されるのは、明らかに"ズレている"としか思えない。



「私はプリームスを第一に考え、プリームスを最優先する。それが理解出来ぬならば、お前達と行動を共にする意味など無い」



最終通告…そうティミドは受け取った。

つまりテュシアーの意に沿わぬらば"見捨てる"と言っているに他為らない。

ここは全面的に下手に出て、今は受け入れるしか無いだろう。


たが付け入る隙は有る。

テュシアーはプリームスを最優先にし、その強大な力を躊躇いなく振るう。

それでもプリームスが損する事や、また悲しむ事は絶対にしない筈なのだ。


ならば身内や仲間を大切にするプリームスの価値観を、テュシアーは絶対に無視出来ない。

『これを取り引き材料にして、ハクメイ姫を救って皆んなも守る!』


意を決したティミドは告げた。

「テュシアー様…ハクメイ姫を救わねば為りません。あの方はプリームス様と義姉妹の誓いを立てた間柄なのです」



「……」

するとテュシアーは僅かに思考した後、溜息をついて返す。

「分かっている…今はハクメイの奪還を最優先事項とする。その後は迷宮の主を嬲り殺しにし、迷宮と四方京を完全に破壊してやろう」



『ちょっ?!?!』

ティミドは慌てた。


「「「…!!」」」

当然、居合わせたリキやガリー、常に冷静シンまでもが蒼白な表情を浮かべる。



「この人なら遣り兼ねない」…そうティミドは思い血の気が引く。

万が一、その様にテュシアーが動けば、何百万もの人命が失われる。

そうして死による因果の負属性は大気に充満し、プリームスを苦しめる結果となるに違い無い。


「テュシアー様、ご冗談はお止め下さい。そんな事をすれば如何なる事態になるか、分かっておいででしょう?」



諌める風なティミド言い様に、テュシアーは眉間にシワを寄せた。

「フンッ…! ここでもプリームスは身内に恵まれているようだな」



「テュシアー様…?」

曖昧な返答にティミドは困惑する。

無茶をするのかしないのか…それだけを聞きたいのだから。



「はぁ……貴女は心配しなくても良いわ。必要以上の報復と破壊は行わないから」

再び溜息をつきながらテュシアーは言った。



「有難うございます…」

ホッと安堵するティミド。


しかし"必要以上"と言った…それは詰まり敵の死滅と、迷宮の崩壊は避けられないと暗に告げていた。

『これは…迷宮だけじゃなくて、都督府にも血の雨が降りそうね…』

正直ゾッとした。


プリームスは基本的に他者の命を奪わない。

それが敵であっても、絶対的な雌雄を必要としない限りは、命のやり取りを避けているように見えた。


だがテュシアーは違う。

恰もプリームスと身内以外は、人と思っていない節がある。

これは話に聞いていたが、本当に自分が"身内側"で良かったと思わざるを得ない。



「差し当たっては先制攻撃による報復よね…」

などと脈絡も無く呟いたテュシアーは、ベッドから降りると天幕を出て行ってしまった。



「「「……」」」

呆気に取られるリキとガリーとシン。



ティミドも半ば呆然としていたが、直ぐに察してテュシアーの後を追った。

「まっ、待ってくださいテュシアー様!! 何を為さるつもりですか?!」



テュシアーは全く足を止めず、大トカゲ(デイノス)と巨大蜘蛛に襲われた広間へ到着する。

そして周囲を見渡して呟いた。

「ほほう…あれだけの蜘蛛の死骸をもう片付けたのか。やはり迷宮核の性能は良いようね」



「テュシアー様!」



ティミドに呼び止められ、テュシアーは面倒臭そうに振り返った。

「何…?」



「お願いですから、私の質問に答えて下さい!」



「言ったでしょう…報復よ。先ずは中層全てを破壊してやろうかしら」



「なっ?! だ、駄目です!! そんな事をすれば上層も崩落するかも知れません!」

『何を考えているんだ?!』

何より攫われたハクメイにも被害が及ぶ可能性が有る。

それをティミドが見過ごせる筈も無かった。



「フッ…その程度の事を私が計算出来ないとでも? それに君も既に気付いているわよね…この迷宮が普通では無いと」



「それは…」

並の迷宮とは異なる機構を有する…地図を見た時点からティミドは察していた。

だからと言って何だと言うのか?



「恐らく上層は消失しているが、中層と最下層は個別の迷宮核が存在する。中層を破壊しても、下層には影響が無い筈よ」



全く要領を得ず戸惑うティミド。

「…???」

『迷宮核が複数ある?! でも中間層が崩落したら…』

支えを失った上層の崩落は免れないだろう。

そして上層と中層の瓦礫や土砂は重力には逆らえず、下層を圧し潰すに違い無い。


そもそも中層を完全破壊など可能なのか?

「お待ちください! もう少し私達へ分かり易く説明をしていただけませんか?」



「「「…?!」」」

後から駆け付けたリキとガリーとシンは、半ば口喧嘩をしているような二人に気が気で無くなるのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ