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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第四章:魔術師学園
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161話・帰還からの不測事態

プリームスは魔術抑制の魔道具を身に着けさせられ、法王との謁見に臨む事となった。

勿論、随伴するフィエルテも同じ扱いだ。



そうしてラティオーに神殿内を案内され、謁見の間へ向かう。

案内役はラティオーただ一人で、他には誰も居ない。

余程プリームスを信用しているのか、もしくは取るに足らないと思われているかだ。


『魔導院は魔術が強大な力となる事を知っている。だからこそ、それを封じれば安心してしまうのだろうな』

プリームスがそう思っていると、いつの間にか個室に案内されていた。



「一旦、ここでお待ちいただけますか? 法王陛下にお取次ぎ致しますので」

そう言ってラティオーは個室を出て行ってしまう。



部屋の大きさは、そこそこ広く10m四方で、大きめのソファーが壁沿い全てに設置されている。

ここは謁見用の待合室なのだろう。


プリームスとフィエルテ以外誰も居なくなってしまったかと心配したが、ラティオーと入れ替わりに女給が1人と騎士風の男性が1人入室して来た。

騎士は見張りであり、女給は謁見客の世話役と言った所か。



それから10分程経過したか、ラティオーがプリームス達の元へ戻ってくる。

「法王陛下がお会いになるそです。言うまでも無いでしょうが、礼節は弁える様にお願いいたします。ただ、他国の王にお会いするような、畏まり平伏する必要は有りません」

ラティオーはプリームスに告げると、部屋を出て付いて来るように促した。



待合室を出て、だだっ広い回廊を進む。

途中幾人かの衛兵や騎士とすれ違うが、それ以外は人通りが全く無い。

恐らく、この神殿へ至るまでの警備がしっかりしている為、中に過剰な衛兵を置く必要が無いのだろう。



そうして回廊の突き当たりまで来ると、大きな両開きの扉が目に取れた。

扉の両側には、重武装の騎士が1人づつ立ち、ラティオーを見ると無言で敬礼をする。


「この先が謁見の間です」

そうラティオーがプリームスに告げ、扉へ手を掛けたのであった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






プリームスが魔導院から帰還すると、時間は既に午後の7時を回っていた。

もっと早くに戻る予定だったのだが、事が上手く進んだ為の弊害と言えよう。



魔術師学園の塔の屋上へ転送したプリームスは、フィエルテを連れて直ぐに理事長室へと向かう。

するとスキエンティアとアグノスが部屋の中で待ち構えていた。



「調査から戻ってみれば、忽然と姿を消されて・・・心配しましたよ」

と抑揚の無い口調で言うスキエンティア。

こう言う場合は本当に怒っているのだ。



(しょ)げてしまったプリームスは、スキエンティアの服の裾を掴み、

「ごめんなさい・・・」

と、まるで怒られた子供のように俯き謝るのであった。



傍で見ていたフィエルテとアグノスは、顔を赤らめて小刻みに震えだしてしまう。

そのプリームスの仕草と言葉が余りにも可愛い過ぎて、身悶えしそうなのだ。



日頃、プリームスは達観したような振る舞いをしている。

実際にあらゆる物を見通し見抜くのだから、その振る舞いには納得がいく。


その上、見た目に反して枯れたような言動。

中身はオッサンもとい年寄りであった。


しかし今のプリームスは見た目通りに可愛らしく、そして無邪気で儚いのだ。

故に一同の母性本能が目覚めて、身悶えに導いてしまう。



それはスキエンティアも例外では無かったようだ。

スキエンティアはプリームスを抱きしめると、

「そんな素直に謝罪されては、怒るに怒れませんね・・・」

諦めたように呟いた。


それからプリームスの額に口付けをする。

「次から遠出する場合は、書き置きでも言伝(ことつて)でも構いませんから、私にお伝え下さい」


額に口付けをらされてプリームスは少し(くすぐ)ったそうにした。

「うん、スキエンティアの言う通りにするよ」



何とも仲睦まじい2人を見て、アグノスとフィエルテはホッコリしてしまう。

本来アグノスからすれば、愛しき伴侶がスキエンティアに取られて嫉妬する場面である。

しかし気持ちが(ほだ)されてしまい、そんな気は起こらなかった。



一方フィエルテは、今日の大半をプリームスと2人きりで過ごせてご満悦である。

しかも帰還後にホッコリさせて貰い大満足だ。



「ところで、どちらに出かけておられたのですか? フィエルテも一緒だったようですが」

とスキエンティアがプリームスへ尋ねる。



プリームスは特に隠す理由も無かったので、素直に答えた。

「東の最果てにある魔導院まで行って来た。3つも魔法を併用したからな、流石に疲れたよ」



これにはアグノスが驚愕する。

リヒトゲーニウスから魔導院は、片道だけで2週間はかかるのだ。

それを散歩にでも出掛けたように「行って来た」などと告げるプリームスは、規格外もいい所である。

驚かない方がおかしい。



だがスキエンティアの様子は違った。

「魔導院ですか。では、プリームス様は初めから分かっていて私に・・・」

そう独り言のように呟いたのだ。



我に返ったアグノスがプリームスの傍までやって来ると、

「プリームス様! 何をなさっていたのかは後ほど伺います。兎に角、先にお伝えしておきたい事があります!」

慌てた様子で言った。



殆どアグノスに詰め寄られたような状態のプリームス。

『この娘がこんなに慌てるとは、私の想定では、大した事は起きないのだが』

心配しての報告なのだろうが、アグノスの慌て振りを見てプリームスは逆に心配になってしまう。



「落ち着きなさい」

そう言ってプリームスはアグノスの胸を撫でた。


急に破廉恥な事をされたアグノスは硬直する。

が、愛しいプリームスに触れられて嬉しかったのか、照れた様子で俯いてしまった。



落ち着いたのを確認するように、プリームスはアグノスを抱き寄せる。

そして耳元へ囁きかけた。

「落ち着いたなら、ゆっくりでいいから話してみなさい」



敏感な耳元へ言葉と共に吐息が伝わり、アグノスはゾクリとする。

そして何とか話し始めた。

「実は・・・バリエンテ、イディオトロピア、ノイーギアの3名が・・・」



「3名がどうしたのだ?」

と先を促すプリームス。



「食当たりで救急搬送されてしまいました・・・」



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