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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1504話・戦略的敗退とハクメイの決意

刹那の章IV・月の姫(15)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

絶体絶命だったティミドの前を、何かが物凄い勢いで通り抜けた。

その所為で腕を振り上げた魔神が弾かれ、蹈鞴たたらを踏むように後退する。



正に間一髪の出来事たった。

お陰で死と言う現実から、ティミドは僅かだが遠退くに至る。

兎に角、先ずは何が自分を救ったのか、それを確かめねば為らない。


全身が痛むのを何とか堪え、ティミドは壁を支えに上半身を起こした。

「……!」

そして目を見張る。


何と元の姿に戻った精霊モノケロースが、恐らくだが自分を助ける為に駆け抜けたのだ。

しかも駆け抜けた地面には青白い炎が走り、熱さと冷たさが同居する奇妙な感触を覚えた。



モノケロースが威嚇するように、その巨大な左足を地面へ叩きつける。

すると蹄が地面に減り込み、そこを起点に周囲を軽く陥没させた。

並外れた膂力に、先程の突進速度…見た目は馬?だが、明らかに異質を放つ。



そんな乱入者に4体の魔神は、まるで困惑する風に動きを止めた。

またアドウェナも同様だったのか、半ば唖然とした様子で呟く。

「……何だ? この魔獣は…?」



相手は明らかに動揺し、ほんの少しの安堵感がティミドの胸中へ流れ込む。

モノケロースが全てを解決するのでは?…そんな淡い希望を抱いたのてある。



だが状況は、そう容易く好転はしなかった。

アドウェナが更に4体の魔神を召喚したのだ。


「何が来ようと関係ない」

そう告げたアドウェナは鷹揚に前進した。

傍には致命傷を負ったリキが地に伏せ、絶望を抱いたガリーは両膝を付いたまま戦意喪失した状態だ。


最早、アドウェナを止められる存在は、本来の姿に戻った精霊モノケロースしか居ない。

それは詰まり、魔神8体とアドウェナを同時に相手取る事を意味する。

幾らディーイーの召喚した精霊でも、これら全てを制圧するのが無理なのは明白だ。



そんな時、何者かの声が聞こえた。

「待って!! 貴女の狙いは私なのでしょう!」



これにアドウェナは魔神等を制止させて言った。

「フフフッ…自ら出てくるとは。それに良く気付いたわね、私の目的が貴女だと…」



声の主は、天幕から姿を見せたハクメイだった。

「消去法よ。皆んなを退けて天幕を目指すなら、私しか居ないわ」

シンも居たが、そもそも彼女は広場へ出ていたのだ。

そうなると"元から天幕に居た部外者"は自分しか居ない。



「もう少し早ければ、こんな有様に金剛拳が陥る事も無かったでしょうに。まぁ良いわ…ハクメイ姫、こちらに来なさい」

そう告げたアドウェナは、誘うように右手を差し出す。



ハクメイの体に表現し難い悪寒が走った。

行っては行けない…そう直感が告げているのだ。

しかし自分を差し出す以外に、今の自分には選択肢が無い。


そんな情け無い己に落胆しつつも、ハクメイは歩みを進めた。

「分かったわ…だから皆んなには手を出さないで」



「なら、その巨大な馬を引っ込めなさい」



アドウェナの要求に、ハクメイは素直に従った。

「モノケロース…お願いだから戦わないで」



今にもアドウェナへ飛び掛かりそうだったが、それを聞いたモノケロースは、目を見開くと落胆したように項垂れてしまう。



「ハクメイさん…駄目…です…」

必死にハクメイを止めようとするティミド。

だが出来るのは消え入りそうな声を出すだけで、とても制止させる様なものでは無かった。



「ごめんね…ティミドさん、モノケロース」

ハクメイは意を決してアドウェナの前に進み出た。



するとアドウェナは右手を差し出し、微笑みながら告げる。

「悪い様にはしない。只、暫くの間は自由を失うから、それは我慢してね」



どうやら命を奪う程の事はしないようだ。

ならばディーイーの助けを大人しく待てば良い。

そう自分に言い聞かせたハクメイは、差し出された手を取った。



「フフッ…いい子ね」



直後、ハクメイの周囲が暗転した。

「…!??」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






漸く耳障りな音が全て消えた。



「やれやれ…何体投入したんだ?」

うんざりした様子で呟くディーイー。

200体までは数えた…しかしそれ以降は巨大蜘蛛を何体処理したか、もう数える気力は無くなっていた。


『ザッと見は…400体以上は居そうだな…』

死骸の山の頂上に腰掛け、ディーイーは一息付いた。


初めは速度重視で"糸"に因る処理をしていたが、途中で蜘蛛の動きが変わる。

無闇に襲って来なくなったのだ。

端的に言えば、魔獣なのに戦術を駆使したような動きである。

恐らく管理者が巨大蜘蛛の動きを"凡そ"だが操作可能なのだろう。


そのお陰で規律正しく前後から挟撃してきたり、かと思えば時間差で断続的に攻勢をかけてきたり…対応に神経を使う動きをされてしまう。

それで無くとも”糸”は繊細な操作を必要とし、通常の得物よりも神経を使う。

因って想定以上に消耗したディーイーは、仕方なく鞭に変えて無難に処理する方法を選ばざるを得なくなった。

結果、思った以上に巨大蜘蛛群の殲滅に時間が掛かってしまった訳だ。



「どっこいしょ……」

取り敢えず少しだけ疲労を回復させディーイーは、重い体を動かして蜘蛛の死骸から降りた。

と言っても地面が見えない程に死骸が散乱し、多少立つ高さが変わった程度だが…。


そうして通路へ向かうと、通路の入口が蜘蛛の死骸で埋まってしまっていた。

暗がりで分からなかったが、明らかに不自然な塞がり方だった。

『……!! まさか!?』


ディーイーは1つの仮説を立てる。

大トカゲ(デイノス)の襲撃と今回の巨大蜘蛛の襲撃は、そもそも自分を警戒しての物では無かったのでは?

そして自分を”足止め”したのは、他に狙いの獲物が有ったからでは?


『不味い! こんな所で悠長にはしてられない!』

ディーイーは収納魔導具から長めの杖を取り出し、それを超高速で振るった。


この一閃は常人ならば視認出来ず、達人で合っても辛うじて1度振るったように見えただろう。

しかし実際は2度振るったいた。

連環閃れんかんせん…超絶者でも一握りしか使えぬであろう究極の奥義。

それをディーイーは躊躇う事無く、通路を塞ぐ巨大蜘蛛の死骸へ放ったのである。


これは烈風を瞬時に2度放つもので、神速に達した速度と、針の穴に糸を通す正確無比な技術が要求される。

その間断なく放たれた2つの斬撃は、初段が大量の死骸を巻き上がらせ、それらを掃除するよう二段目が吹き飛ばしたのだった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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