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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1503話・迷宮の管理者アドウェナ・アウィス

刹那の章IV・月の姫(15)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「元聖女の使徒…いや雷鳴の二つ名が如何様か見せて貰おう」

そう告げたアドウェナは、音も無くリキとガリーへ向けて前進した。



身構えるリキ。

『どうする? 先に攻撃されたら…』

恐らく耐えられない。

あの見えない魔弾とやらの仕組みを解明しないと、このままでは防ぐどころか一方的に嬲り殺しだ。


何より気負った様子のガリーが問題である。

下手をすれば死ぬ気でアドウェナへ特攻するかも知れない。



後方で不気味な断末魔が、立て続けに3つ聞こえた。

ティミドが魔神を倒したのだろう。



そんな時、前進してくるアドウェナが右手の指をパチンッと鳴らして言った。

「フフフッ…まだまだ御代わりは有るわよ」



今度はティミドの前後に2体ずつ…計4体の魔神が召喚された。

「チッ…!!」

これには流石のティミドも舌打ちを零してしまう。


魔神自体は然して問題は無い。

しかし放置してアドウェナを攻撃出来る程、魔神が弱い訳でも無いのだ。

この絶妙に手間を取られる均衡が、相手の戦術なのは明白だった。


「…!」

ここで”ある事”に気付く。


こんな面倒な戦術を使うのは、使う側も面倒な筈である。

魔神を召喚するなどと言う芸当、そもそも人間ならば不可能であり、人外であっても相当な労力を費やすと考えられた。


『だから私の実力を見ながら、魔神の召喚数を調整してる?』

つまり限界は存在し、きっと召喚の打ち止めも有るに違いない。

「ガリーさん! リキさん! もう暫く耐えて下さい!」



ティミドの言葉に、リキとガリーは即座に返答した。

「任せとけ!!」

「うん!」



「もう一度言う…邪魔をしなければ、お前達の命は奪わぬ。命が欲しければ道を空けよ」



鷹揚な言い様のアドウェナに、リキとガリーは拒絶するように返した。

「ここは通さねぇ!」

「さっきも言ったでしょ。通りたければ俺を倒せって!」



「そう…残念だわ」

などと落胆した様子を見せるアドウェナ。



これにリキは不可解さを抱いた。

『こいつは何か奪う気で来た筈だろ?! なんで俺達の心配?をしてるんだ?!』



直後、凄まじい速度で突進するガリー。

虚を突いてから間断なく攻撃を続けるしか無い…そう考えたからだ。



「…!!」

対してアドウェナは本当に意表を突かれたのか、驚いた様子で咄嗟に守勢に回った。



高速の突進から繰り出されたガリーの突き。

それは後手に回ったアドウェナの顔面を捉えた…かに見えた。

だが不可視の何かに阻まれ、重い金属音と共にガリーの拳が跳ね返される。



「フフッ…女の顔面を狙うとは酷い輩ね」

と告げるアドウェナだが、反撃の素振りが無い。



『やっぱり…基本的には魔術師なんだわ』

反応の緩慢さで、相手の性質を即座にガリーは看破する。

そしてそのまま連撃を繰り出し、アドウェナを防戦一方へ追い込んだ。



『おおおっ!』

リキは目を見張る。

雷鳴の二つ名は伊達では無い…そう思わずには居られなかった。


またガリーが看破した様に、アドウェナが近接戦闘には長けていないと察する。

『行ける! 2人なら足止めが可能だ!』

上手く行けば制圧も可能かも知れない。


そうしてリキもアドウェナへ踊り掛かる。

その刹那、リキはアドウェナの頭上に何かが煌めくのを見た。

『…! 魔法か?!』


相手は既に魔法障壁らしき物で、ガリーの攻撃を防ぎ続けているのだ。

ここで更に防御的な魔法は考えられない。

なら他に考えられるのは"攻撃魔法"しか無かった。



「ぐっ??!」

ガリーは背後から脇腹に衝撃を受け、真横に吹き飛ばされた事を自覚した。

『なっ!? まさかリキさんが私を攻撃した?!』


何とか受け身を取り、即座にアドウェナを目視する。

その時、ガリーは信じられない光景を目にした。

「あぁぁ……リ、リキさん……」



アドウェナの正面に立つリキが、巨大な氷柱に腹部を貫かれていたのだ。



「私を只の魔術師だと侮ったようね。本当に残念だわ」

と倒れ込むガリーを尻目に、静かに呟くアドウェナ。



「そんな……」

ガリーは後悔した。


アドウェナは初めから手を抜いていたのだろう。

それを見抜けずに浅慮な行動の末、自分は仲間を犠牲にしたのだ。

そんな自責の念が、ガリーから立つ気力さえ奪ってしまう。



「…!!」

力無く膝を付いたガリーを視界の隅に捉え、続け様に致命傷を負ったリキを目の当たりにしたティミド。

その時、一度に4体の魔神を相手取った動きに隙が生じる。


それは僅かな時間…瞬き程の一瞬と言っても良い"間"が、魔神にとって好機と化した。

加えてギリギリで魔神の攻撃を躱していた事も仇となる。


そう…反撃に転じ易いよう、全ての身のこなしが瀬戸際だった。

正に超絶の域を目前とした者が、自信を抱き効率を重視した果報と言えた。



「ぐはっ……」

魔神の強靭な腕が、ティミドを体ごと薙ぎ払うように吹き飛ばした。

その膂力は凄まじく数mをも宙を舞い、ティミドは壁に激突したのだった。


虚な意識の中でティミドはディーイーへ謝罪する。

『申し訳ありません…私が…不甲斐ないばかりに……』



魔神の1体が徐にティミドへ近付き、その強靭な右腕を振り上げた。



『あぁ…こんな簡単に私は死ぬのか……』

ティミドは今の状況が意外に思えた。


あの東方での激戦を生き抜いた自分が、高々下級の魔神に殺されるなど予想出来るだろうか?

出来る訳が無い。


仮に死ぬとするならば、もっと強大な敵と戦って死にたかった。

贅沢を言えばプリームスの盾となって死ぬ…それこそ本懐となった筈だ。

されど現実は残酷であり、『無念』と言う言葉にティミドの想いが集束された。



刹那、眩い何かがティミドの目の前を掠め、朦朧としていた意識が覚醒したのだった。

「…?!」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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