表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1626/1765

1502話・背水のリキとガリー(2)

刹那の章IV・月の姫(14)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

いつの間にか魔神2体を屠っていたティミド。

その姿は全く負傷しておらず、ガリーとリキを驚かせた。


『おいおい…永劫の騎士(アイオーン・エクェス)って、こんなにも強いのかよ?!』

流石は一騎当千と呼ばれる…そうリキは思わざるを得なかった。



片やガリーは背水の状況から一転し、ホッと胸を撫で下ろしていた。

「あぁ……ティミドさん、頼りにしてますよ」



これにティミドは苦笑いを浮かべる。

『えぇぇ?! そこまで切迫してた?!』

この程度の状況など、以前にプリームスと経験した東方での戦いに比べ、然して困難とは言えない。



そんな緩んだ空気を、魔導士風の女が一瞬で硬化させる。

「魔神が今ので終わりだと思っているか?」



その直後、背後に3体の魔神が前触れも無く現れ、ティミドは意表を突かれた状態になる。

それでも即時迎撃態勢を整え、一切の隙を見せなかった。

これはプリームスの傍に在って得た経験が、ティミドを大きく成長させていた証と言える。



「ティミドさん!!」



慌てて駆け寄ろうとするガリーの肩を、リキが掴んで静止させた。

「待て! 俺達は女の方を止めなきゃならん!」



「くっ…!」

何とか思い留まったガリー。

リキの言う通りだったからだ。


仮に自分がティミドに助力したところで、然して役に立てない。

それよりも前方の女を放置しては、完全な挟撃状態になり、畳みかけられれば一溜りも無いだろう。

ならば何とかして現状を維持し、ディーイーが駆けつけるまで時間を稼ぐべきなのだ。



一方、ティミドはと言うと至極冷静な状態だった。

『魔神は下位…脅威では無いけど、何度も召喚されては"あの女"に対処出来ないわね』

かと言って魔神を2人に任せるのは、それこそ荷が重い。


問題は魔神の召喚に限りが有るのかどうかだ。

差し当たっては現れた3体を処理し、相手の出方を見るしかない。



いつでも防御可能な態勢を取ったリキは、魔導士風の女へ尋ねた。

「お前…一体何物だ?」

迷宮側の存在なのは既に分かっている…しかしこれは会話に因る時間稼ぎが狙いだった。



「何者? フフッ…もう分かっているのだろう?」



暗がりで明確には見えないが、女が不気味な笑みを浮かべているのをリキは察した。

『チッ! 遊んでいるのか? 舐めやがって!』

だが攻撃せずに会話する意思を見せたなら、こちらとしては好都合だ。

「あぁ…先の広間で大量の大トカゲ(デイノス)に襲われた。お前がやったんだろ?」



「そうよ、私が襲わせたわ。でもあんな簡単に処理されるなんて正直驚きだったわね」



「ハハッ! それが分かっててまた襲ってきたのか? こっちには団長が居るんだ、お前なんか簡単にボコッちまうぜ」



それを聞いた女は、少し間を置いてから返した。

「……眠りの森の団長か。あの者は確かに不確定要素が多すぎる」



『こいつは……』

今の反応でディーイーが狙いではないと気付くリキ。


なら襲ってきた意図と狙いは?

兎に角は時間を稼ぎつつ、相手の情報を引き出すのが得策だろう。

「そう言やぁ…名前を聞いていなかったな」



「名前…? フフフッ……私の名はアドウェナ・アウィス。こうして名を聞かれるなど何十年ぶりだろうか……フッ」

と自嘲気味に魔導士風の女は答える。



「アドウェナ・アウィス…?」

その名を聞いてもリキはパッとしない。


しかしガリーは違った。

「え………アドウェナ・アウィス?!」

そう声を漏らして固まってしまった。



するとアドウェナは少しだけ歩み進めると、ニヤリと笑みを2人に見せて告げた。

「フフッ…元聖女の使徒だったなら、私の名を知っていても可笑しくは無いか」



直ぐにリキはガリーへ問うた。

「…? どう言う事だ?」



「アドウェナ・アウィスは魔教副教主の名よ…」



「魔教って……あの何十年も前に滅びた邪道組織の事か?!」

リキも知識では知っていた。

されど北方では何故か語ってはいけない雰囲気があり、その所為で忘れられた歴史となっていたのだった。



「そうよ…その魔教の副教主が目の前に居る。俺達では多分…勝てない……」

そう答えたガリーの表情は、先程にも増して切迫していた。



聖女の使徒とは、言わば北方で最強の武装集団と言っても良い。

その組織に属していたガリーが此処まで警戒する…この現実にリキーは、漸く差し迫った状況だと気付いた。

『不味いな…彼女の言う通りなら、ティミドさんでも危ないかも知れん』



そうするとアドウェナは、軽く片手を払うような仕草をして言った。

「お前達の命には興味が無い。邪魔をせぬなら殺しはせぬ、道を開けよ」



『まさか?!』

目を見開くガリー。


ここに居ない面子と言えばハクメイ、シン、サーディク、それにディーイーだ。

この中で既にディーイーは足止めされている。

そしてサーディクは黒金の蝶の副団長で、迷宮に馴染み深い彼女が今更狙われるのは変だ。

残るはハクメイとシンではあるが、そもそも後者は侍女であり狙われる理由が無い。


『元からハクメイ姫を狙っていた? それとも狙う理由が出来た?!』

どちらにしろ指を咥えて見過ごす訳にはいかない。

仲間が攫われたり殺されでもしたら、きっとディーイーが悲しむに違いないのだから。


故にガリーは絶対に道を開けないと意を決した。

「嫌よ! 通りたかった俺達を倒す事ね!」



「ほほう…面白い。元聖女の使徒…いや雷鳴の二つ名が如何様か見せて貰おう」

そう告げたアドウェナは、微笑みを浮かべながら音も無く歩を進めたのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ