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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1501話・背水のリキとガリー

刹那の章IV・月の姫(14)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

リキとガリーは目の前の魔神2体を避けて、後方に居る存在へ向けて駆け出した。

その存在とは朧げに見える人影…しかし本当に人なのかは定かでは無い。


ひょっとすれば2体の魔神を配下に置く、更に強大な上位魔神かも知れない。

そうなれば自分達では手に余る事は明白だった。


それでもガリーとリキは戦いを挑まざるを得ない。

そもそも自分達で2体の魔神を止める力は無く、その2体をティミドに任せるしかないのだから。

故に自分たちの使命は、ティミドが魔神2体を処理するまで”時間稼ぎをする”事である。



『無理をしちゃいけない。何とかして相手の気を逸らすだけでも!』



そのガリーの考えはリキも同じだったのか、ボソリと彼は呟いた。

「ガリーさんよ、絶対に無理はするな」



頷くガリー。

「うん…」



横を2人が擦り抜けるが、何故か魔神2体は自分達に反応しなかった。

運が良かったのか、それとも歯牙にも掛けられていないのか?…どちらにしろ好都合だ。

そうして二人は10m程奥に居た存在へ接近した。


「…!?」

「ん?!」

予想外の展開に二人は咄嗟に足を止める。


なんと目の前に居たのは、魔導士風のドレスを身に纏った妙齢の女性だったのだ。

魔神を従えるのだから、もっと禍々しい存在かと思っていただけに拍子抜けである。

しかし見た目とは裏腹に妙な違和感と、それを裏付ける威圧感を覚えた。



「見た目に惑わされるな」



リキの警告にガリーは当然のように返した。

「分かってる。もしかしたらディーイーが言う迷宮の管理者かも知れない」


ここは中層の入口だ。

なのに迷宮の主と大差ない管理者が現れるなど、普通なら絶対に有り得ない。

だが先の大トカゲ(デイノス)の襲撃と言い、普通では考えられない事が起きている。

恐らくは超絶者ディーイーの存在を看破して、迷宮側が危機感を持った可能性が考えられた。


『そんな相手を俺とリキさんで抑えられるの?』

ガリーの胸中が不安で満たされてしまう。



その時、凄まじい振動と地響きが傍で起きた。

リキが震脚を起こし、超高速で魔導士風の女へ突進したのだ。

それは恰もガリーの危惧を払拭するように、何もかも薙ぎ倒す勢いだった。



これに魔導士風の女は、徐に右手を差し出す。



直後、リキの巨躯が宙を舞った。



「なっ!??」

ガリーは何が起きたか理解が出来ず、何も出来ないまま硬直してしまう。

それが明らかに人の域を超えた速度だった所為だ。


雷鳴と二つ名で呼ばれる自分が、全く目で追えないほどの、また兆しさえ捉えられない攻撃。

そんな物を容易に放てる相手へ、自分達が束になった所で敵う訳が無いのだ。



リキの巨躯が地面に落ち、鈍い音が鳴った。



「リ、リキさん……」

何とか声だけは振り絞って出たガリー。

されど余りの緊張と恐怖で、体が全く言う事を利かなかった。



俯せに倒れたリキから重い呻き声が漏れるが、周囲が暗がりの所為で、その被害が如何ほどかは視認出来ない。



ガリーは逡巡した。

今ここで気力を振り絞って立ち向かうべきか、若しくはリキを抱えて後退するか。

今のところ幸いな事に、魔導士風の女からは追撃が無い。

だが自分達が道を塞ぐ以上、相手が薙ぎ払って通ろうとするのは時間の問題だった。


『駄目だ! ここで退いたらティミドさんに負担が集中してしまう』

意を決したガリーは立ち向かう事を選択した。



その時、リキが呻きながら立ち上がると、「行くな!」と言わんばかりに片手でガリーを遮った。



「リキさん…」



「あれはヤバい。あんたじゃ正面から当たっても速度で負ける、それに防御力は俺の方が上だ」

痛みを堪えつつリキは言った。



「フフッ……流石は金剛拳と呼ばれるだけの事はある。私の魔弾を受けて立てるとは驚きだ」

魔導士風の女が初めて口を開いた。


その声音は透き通っており、実に聴き心地が良い。

その反面、語調には強い鷹揚さが含まれており、聞く者を畏怖させるような迫力があった。



『こいつ…人間なのか?』

自分の事を知悉ちしつしている風な口振りに、リキは薄ら寒い不気味さを抱いた。


また外見は人間然としているが、全く人間味を感じさせない異質さを放っている。

それこそが違和感と威圧感の原因だと認識した。



出方を待つような2人に、魔導士風の女は微笑みながら告げた。

「隣は雷鳴のガリーよね。貴方達2人が如何に足掻こうとも、私を止める事は出来ない。死にたくなければ道を開けなさい」



「…?!」

困惑するガリー。

リキだけで無く、自分の事まで既知だとは思いもしなかったからだ。



「何だ? 知り合いなのか?」

リキが冗談半分でガリーに尋ねる。

だが口振りとは裏腹に、魔弾とやらを受けた被害か、その表情は苦悶に歪んでいた。



「そんな訳無いでしょ。あんな不気味な奴、ここでも外でも会った事が無い」



「そうかい…なら、やっぱり迷宮の主か管理者なのかもな」

眼前の女が何者なのか、リキの中で凡その見当が付いていた。

恐らく迷宮の主や管理者は、何らかの方法で迷宮内に侵入する者を監視していたのだろう。


それは視覚情報だけで無く、会話などの音声情報までもを捉え収集していたに違い無い。

或いは迷宮側へ情報を流す者が、"冒険者や傭兵の中"に居る可能性も有る。

そうで無ければ会った事の無い存在に、此方の情報が知れているのは辻褄が合わない。


「チッ…!」

『こりゃあ、こっちの手の内がバレてるかもな』

不利すぎる状況に、ついリキは舌打ちが漏れた。


それと同時に背後から奇怪な悲鳴が聞こえ、ガリーとリキはゾッとする。

「「…?!」」


2人が振り返ると、

「お待たせしました。魔神は処理したので、次は親玉?を処理しましょうか」

と告げたティミドが、丁度倒れ込んだ魔神を跨いでいる所であった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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