1499話・不確定の襲撃者(2)
刹那の章IV・月の姫(14)も更新しております。
そちらも宜しくお願いします。
突然鳴り響く耳障りな金切り音。
それはディーイーが張り巡らせた警報結界に、何者かが侵入した知らせだった。
「えっ?! な、なにっ?!」
初めて聞く音に戸惑うガリー。
一方シンはと言うと、冷静にディーイーへ尋ねる。
「……これは、ひょっとして結界の効果ですか?」
「うん。直ぐに鳴り止むけど、次々に別の何かが侵入する都度鳴るよ。兎に角、ハクメイ達が心配だから直ぐに戻ろう」
ディーイーの言葉に頷いたガリーとシン。
直ぐさま野営へ戻ろうとした時、妙な気配が広間中からした。
「…?!」
「…!」
大トカゲに襲われた際、皆が感じた危機感…それを彷彿とさせる何かが現れたのだ。
だがその時に増して異様な音が聞こえる。
多足的な何かが蠢くような、人ならば無意識に嫌悪を覚える音。
ディーイーは2人へ告げた。
「先に行って! 私は此処に現れた奴らを処理するから」
「う、うん!」
「承知しました」
ディーイーの強さを十二分に知っている故、その指示にガリーとシンは素直に従った。
ゴネて此処に居続けた所で、自分達では邪魔になるだけだからだ。
ガリーとシンが広間から通路へ消えると、ツツーっと何かが大量に降りてくるのが見えた。
「うわっ! きもっ!!」
つい率直な気持ちがディーイーの口から漏れる。
天井から降りて来たのは巨大な蜘蛛だったのだ。
しかも大トカゲ並に大きい所為で、その体の構成が詳細に見えてしまい、気味が悪い事この上ない。
『数は…また百体を超えるか』
うんざりするディーイー。
この迷宮の管理者は此方の事を良く理解している様で、強力な個体に因る攻撃を選ばなかった。
その代わりに飽和的な物量による攻撃で、此方を疲弊させるのが狙いなのだろう。
人間は生き物である以上、疲れからは絶対に逃れる事は出来ない。
それはディーイーも例外では無く、そこが唯一の弱点…否、この方法しかないと判断したのかも知れない。
それだけ脅威だと認識されている証拠だが、仲間の事を考えると体力を温存しつつ戦うのは時間が掛かり過ぎる。
ここを一早く処理し、急いで野営へ戻られねば為らないのだから。
『仕方ない…消耗は激しくなるが、アレを使うか……』
ディーイーは│大トカゲ《デイノス》の際に使った鞭を選ばなかった。
理由は簡単だ。
大量に降り立った巨大な蜘蛛は脊椎生物では無く、無脊椎生物のためである。
こう言った魔獣は例外なく分厚い外骨格を有し、生半可な武器では刃が通らないのだ。
それでも伝説級武器と言える鞭と、ディーイーの技術が有れば容易に切り裂ける。
しかしながら数が多すぎ為、│大トカゲ《デイノス》とは比較にならない程に時間が掛かってしまうのは明らかだった。
ヒュッ…と風切り音がした。
その直後、ディーイーに群がろうとしてた巨大な蜘蛛等が、一瞬で真っ二つになった。
「フフッ。迷宮の管理者よ…見ているのだろうが、私が何をしたのか分かるまい。物量で圧倒するつもりでも、これでは無意味だったな」
誰にともなくディーイーは告げた。
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シンとガリーが野営に駆け付けると、異様な2体の何かにリキとティミドが対峙していた。
「あれは…!」
ガリーは直ぐに気付いた。
人の形を模した様な外見、しかし明らかに人外と分かった。
何故なら体躯は2mを超え、まるで分厚い装甲を纏ったような外骨格だからだ。
そう…それは伝説上の存在と言われた”魔神”だった。
そんな異様な怪物が2体…シンも尋常では無い事態だと察した。
「ガリーさん…これは不味いのでは?」
「そんな事、言われるまでも無く分ってる!」と叫びそうになるのを堪えるガリー。
ここで感情を露わにしても、冷静さを失うばかりなのだから。
「はい…あれは恐らく魔神。階級にも因るけど、人間では太刀打ち出来ないかも知れません」
それでも此処には│永劫の騎士のティミドが居る。
彼女が居れば1体位なら倒せなくとも、抑えられる可能性は有る。
その間にリキと自分とで残り一体を処理すれば良い…後先考えずに全力を出さねば為らないが。
「シンさん、貴女はハクメイさんの傍へ。きっと天幕の中で精霊が守ってくれる筈です」
「分かりました。でも副団長殿の姿が見当たりません」
「天幕の中でしょう。早く行って!」
苛立ってしまうガリー。
外にハクメイとモノケロースが見当たらないなら、天幕の中に決まっているのだ。
ここでそれを問答した所で時間の無駄である。
シンが何も言わずに天幕へ向かった後、ガリーはリキとティミドの傍へ駆け寄る。
「手伝います! ティミドさん、1体お任せしてもいいですか?」
しかし返って来たのは切迫したティミドの言葉だった。
「ガリーさん…魔神2体は私が一人で対応します。貴女とリキさんで”もう一人”を押さえておいて下さい」
ちぐはぐな返答にガリーは困惑する。
「え…もう一人?!」
「問題は魔神じゃねぇ、その後ろに居るやつだ。気配を消してるみたいだけどな」
とティミドの代わりにリキが答えた。
『後ろ…?!』
魔神の奥の暗闇に目を凝らすガリー。
そこには朧げだが人の姿が見ってとれた。
「”あれ”が動く前に、先に仕掛けて機先を制して下さい。その間に魔神を処理しますから」
永劫の騎士のティミドが此処まで言うのだ、ならば相当に危険な相手に違いない。
「了解。リキさん、行くよ!」
そうしてリキが踏み出すのに合わせて、ガリーも前方へ突進したのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




