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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1498話・不確定の襲撃者

刹那の章IV・月の姫(13)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「あ……お邪魔でしたか?」

いつの間にか広間まで来ていたシンが言った。

何がお邪魔なのかと言うと、ディーイーとガリーが2人きりで抱き付いていたからである。



「シンさんか…」

ホッと胸を撫で下ろすガリー。



「いや、別に邪魔では無いよ。シンさんこそ、こんな時間にどうしたの?」



どう見ても逢引きの最中であり、それを全く憚らないディーイー。

これにシンは苦笑いを禁じ得ない。

「そうですか…実は込み入った話が有りまして」



ディーイーは「お前もか!」と言いそうになるが、グッと堪えて尋ねた。

「え〜と、ガリーには聞かれたくない?」

込み入った相談なら、第三者が居るのは当然に不味い筈である。



「いえ、問題ありません。只、火炎島に関係する事ですので、ガリーさんには面倒な話になるかもしれません」



『うはっ! 巻き込む気満々みたいね…』

一聴して情報共有なように聞こえるが、それすなわち他者を頼る事が見え透いていた。

冷静沈着なだけで無く、図々しいまでの胆力に感心するばかりだ。

「そう? じゃあ話を伺おうかしら」



少し居ずらい様子のガリーを他所に、シンは落ち着いた口調で話し始める。

神獣ロンヤンを暴走させようとした輩は、ディーイー様の活躍で退けられました。ですが、これを手引きしていた内通者が問題だったのです」



「え〜と…表向きでは筆頭封臣家門のジア・イーリュウが主犯だったのよね? それとは別にって事かな?」



「はい。実はハクメイ様の母君… ベイパン様が内通者だと断定されました。しかもジア・イーリュウを殺害後、行方を眩ませています」



「え……」

半ば呆気に取られるディーイー。


居合わせたガリーも居た堪れず、「聞こえない!」と言わんばかりに手で両耳を塞ぐ。



「まだハクメイ様には伝えていませんが、いずれ知れる事になるなるでしょう。ホウジーレン閣下から"出来る範囲"で行方を探るよう仰せつかいましたから」



「な、成程……」

聞きたい事を先回りして言われ、取り敢えずは納得するしかないディーイー。



「因みにですが、亀国きこく鳳国ほうこくかの工作員が関係しているかと。私の推測では亀国の可能性が高いかと思いますが…」



『また亀国か…』

ディーイーは少し辟易へきえきして来た。


それだけ亀国の蠢動が活発な証拠であり、このまま放置しては大事になり兼ねないだろう。

何より仲間のシンやハクメイの因果と繋がっている。

彼女達を苦しめる結果になる位なら、面倒でも自分が出張って対処せざるを得ない。



「ディーイー様…?」

急に黙ったディーイーに、シンが顔色を変えずに尋ねた。



「あ…いや、何でも無いよ。つまり亀国の動向に注意した方が良いって事よね」



「左様です。また"私が預かる件"に於いては、今すぐに私達への影響は無い筈かと。ですので取り急ぎ何かをする必要も御座いません」



『つまり一応の報告って事か』

「分かったわ、気に留めておくよ」

仮に亀国が裏で糸を引いていたとしても、その目的が何なのかは、流石のディーイーでも今は分からなかった。


ただ確実に言えるのは、亀国が龍国を利用しようとしている事だ。

『それとなく探りを入れたいが…』

傍には自由に動かせる永劫の騎士(アイオーン・エクェス)が居らず、結局は自分で動くしか術は無い。


着の身着の儘で出て来た所為で、こう言った場合に弊害が出てしまう。

大雑把で計画性の無い自分に呆れるばかりだ。



「ねぇ…ちょっと気になったんだけど、」

ガリーが不安そうな面持ちで言った。



「ん? どうしたの?」



「その…俺は龍国と亀国の暗部に狙われてる筈で、そこに火炎島で暴れたディーイーが居る訳でしょ。それって纏めて処理する好機と捉えるんじゃないかな?」



「…! まさか…ハクメイの母親ベイパンが出奔したのは、逃げる訳じゃ無くて…」



「うん…俺達の動向を探って、処理する機会を窺ってる可能性が有るよね?」



全くもってガリーの言う通りであり、そこに気付かなかった自分が恥ずかしくなった。

『うぅ…私とした事が…』

「不味いわね…迷宮だけじゃ無く、刺客にも意識を割かないといけないか」


迷宮攻略自体は問題ない。

しかし仲間を守りながらとなると、その難度は何倍にも跳ね上がるに違い無いのだ。



「どうする? 一旦地上に戻って準備し直すのも手だよ?」



「う〜ん……」

ガリーの提案にディーイーは逡巡した。


仲間の安全を考えるならば、当然に戻るべきだろう。

されど今回を躱しても、次にいつ襲ってくるかが分からない以上、同じ不安が常に付き纏う事になる。


そうなる位なら此処で迎撃し、1人2人程度を捕縛して情報を引き出すのも1つの手だ。

上手く行けば今後の襲撃も抑制出来るかも知れないのだから。

「いや…このまま迷宮攻略を続けよう。でも襲撃者を最大限に警戒するのが前提でね」



ディーイーの判断にガリーは頷いた。

「そう団長のディーイーが言うなら、それに俺は従うよ」



特に異を唱えずシンも頷く。

「分かりました。では他の方々にも私から説明しておきましょう」



「うん、じゃあシンさんに任せておくね」



「はい…」

襲撃の可能性を予測出来なかっただけに、シンの胸中は実に複雑な状態だった。

『元暗部と言うのに…』



その時、突如耳障りな金切り音が聞こえた。

ディーイーが張り巡らせた結界に、何者かが侵入した知らせであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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