1497話・色々有つつガリーと情報整理
刹那の章IV・月の姫(13)も更新しております。
そちらも宜しくお願いします。
取り敢えずディーイーは、ガリーと持ち得る情報を整理する事にした。
「え〜と…さっきね、リキさんに相談された事が有って、それがガリーと被ってるのよ」
少し困り顔を見せたディーイーに、ガリーは首を傾げた。
「んん? 被ってるなら序でに片付けられて楽なんじゃ?」
「いや…そう言う意味じゃ無くて、実はね…」
リキが東陽省の都督から迷宮の氾濫を起こす依頼を受けていた事、またその背後に亀国が居る事をディーイーは端的に説明した。
「なっ!?」
これにガリーは驚愕する。
『まぁ、そんな反応になるわよね…』
少しガリーが気の毒になるディーイー。
ガリー側の話を要約すると、龍国の謀軍(暗部)が亀国の暗部と繋がっており、恐らく反体制派の排除を支持している。
そしてリキ側は依頼主が東陽省の都督だが、その都督が亀国の工作員?と繋がっていた。
こんな偶然は有り得ず、これらは亀国が画策する大きな計画で繋がっていると考えられるのだ。
そうなれば反体制派であるガリーが驚愕…もとい愕然とするのは当然だろう。
「しかも…迷宮の氾濫だなんて……」
ガリーは遣る瀬無い様子で呟いた。
「うん……でもリキさんは迷宮の氾濫を起こしたくないと言ったよ。だから秘匿任務なのに私に打ち明けたんだよ」
「でも…故郷を人質に取られてるんでしょ?」
「それは試練の迷宮を閉じた後に、私が責任をもって対処するよ。彼が私を頼って、それを私が受け入れちゃったからね」
そう言ってディーイーは惚けた仕草をした。
ここで深刻な顔をすれば、きっとガリーも自責の念を抱いてしまうからだ。
「ディーイー……」
ガリーは感極まり、ついディーイーを抱き締める。
「ちょ、ちょっと…急にどうしたの?」
「ううん…皆がディーイーを慕う理由が、いま本当に分かった気がしたよ」
闇に差した一条の光明……そうディーイーの存在をガリーは感じた。
世の権威者は力を蓄え、出し惜しみばかりする…まるで富や権威を、己一人だけで勝ち得たかの様に。
しかし実際は民から搾取し集めた物に過ぎない。
『本来であれば”民の為”に、富や権力を使わなければ為らない。そんな当たり前の事が出来ない権威者ばかりなのに…』
片やディーイーは身分や権威の垣根を越え、自ら動くことを躊躇わない。
果たしてこれ程に慈悲深く、誇り高い権威者が他に居るだろうか?
居ない……ガリーは一人として見た事が無かった。
「う~ん……慕われてる自覚は有るけど、何で慕ってくれるのかは良く分らん。やっぱり私の顔や体が目当てなのかねぇ~?」
などと再び惚けた言い様をするディーイー。
「フフッ…! それは否定できないね! こんな体と美貌…一度味わったら離せないよ」
ガリーも負けず劣らず冗談交じりに返す。
だが手は体を弄り、唇は細い首筋へ何度も口付けをする有様だ。
「ま、待って! こんな所で盛んないでよ!」
『うおぉ!? 抜け出せない?!』
ガッチリと抱きすくめられて、ほとんど身動きが取れないディーイー。
体格差も然る事乍ら、流石は”雷鳴”と呼ばれる武人なだけに、その身体操作は馬鹿に出来ない。
「最近は皆と一緒で、こうして二人きりが無かったから…」
ガリーは熱い吐息を吐きながら言った。
『駄目だ…このままでは押し切られる』
押し切られれば”行為”に発展する訳で、そうなっては最早ディーイーでも拒めない。
しかしながら今は大事な話の最中である、勿体ない気もするが心を鬼にするべきだろう。
「ていっ!」
「ぶほっ!?」
と吹き出して突如後ろへ蹈鞴を踏むガリー。
「ふぅ……やれやれだわ。本当に馬鹿力なんだから」
溜息交じりに呟いたディーイーは、何故か右手の人差し指を立てていた。
「くぅぅぅ……指で突いただけでその威力って……本当にどうなってるのよ?!」
「フッ…100年修行すれば、多分これくらいは誰でも出来るようになるわよ」
「100年って……冗談に聞こえないよ」
『冗談じゃ無いんだけどな。まぁ良いか…』
「え~と…話の続きなんだけど、兎に角は迷宮を閉じる、それからリキさんの故郷に向かう事になると思うわ。それでもガリーは構わない?」
「え? あ~~うん、俺は全然構わない。本当は急いで本国に戻る準備をしたいけど、亀国の画策が気になるから。それに聖女の使徒へ戻れても、何も出来ない気がしてきたの…」
「何も出来ない? どうして?」
「リキさんの件を思うに、実際は根が深いと思う。いや…深いだけじゃ無い、きっと規模も大きい筈なんだ。俺一人が頑張るんじゃなくて、もっと仲間を集めなきゃって感じたんだ」
「ほほう…で、私は仲間として合格なのかな? 今の言い様だと足りない感じもするけど?」
ニヤニヤとしながらディーイーは尋ねた。
「もうっ、揶揄わないでよ。ディーイーが居たら百人力…いや万人力に決まってるでしょ。俺が心配してるのは力じゃ解決できない事だよ」
そのガリーの言葉に、ディーイーも同調せざるを得なかった。
確かにドカ~ンっと1発やってしまえば、何でも楽に片付くかも知れない。
されど現実は簡単でも、また単純でも無いのだ。
それぞれの地域には多種多様な人々が暮らし、色々な事情や人生が有る。
それを力で解決しては遺恨が残り兼ねない…と言うか負の因果が埋積し、それがディーイーを苦しめる結果になるだろう。
だからこそ可能な限り穏便に済ませたいのだ。
だがガリーが言うように、陰謀は搦手を多用しがちだ。
これは仕掛ける方も手間だが、それへ対応する側は更に手間と苦労を強いられる。
「うん…分かってる。大変かも知れないけどね、まぁ何とかするしか無いでしょ」
半ば諦めたような口調のディーイーを、ガリーはソッと抱きしめた。
「ごめんね…どんどんディーイーの目的から逸れてしまって。俺と出会ったばっかりに…」
「何言ってるのよ。リキさんの事もそうだけど、受け入れたのは私なんだから、結局は私自身の責任なの。ガリーが一々気にする事じゃ無いわ」
「うん……」
ディーイーの言っている事は、無論ガリーは理解出来る。
それでも申し訳なく思う気持ちは、どうにもし難いものなのだ。
こうして空気が少し重くなった時、野営が在る通路の方から音が聞こえた。
「だれ?」
咄嗟に身構えるガリー。
一方ディーイーは特に気にした風も無く、抱きしめて来たガリーの柔らかさを堪能している始末。
「あ……お邪魔でしたか?」
通路の方から姿を見せたのは、常に沈着冷静なハクメイの侍女…シンであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




