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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1496話・更にガリーの吐露

刹那の章IV・月の姫(13)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

リキの告解にも似た吐露を聞かされ、ディーイーは妙な疲れを覚えていた。

「はぁ………どうしてこうなった…」

何でも首を突っ込んでお節介を焼く質…そんな自分が悪いのは自覚している。

それでも此処まで事態がややこしくなるのは、とても自分の所為だとは思えない。


『いや…違うか。ややこしい状況に飛び込んだゆえの今か…』

などと自己完結してしまう、正にいつもの事であった。



「…!」

いつの間にか通路が終わり、”例の”大空間に出ていた。

『ほほう…やはり迷宮の機構が働いているのか』


百体を超える大トカゲ(デイノス)の死骸が有った筈。

否…自分が殺したのだから当然目の前に有って然り。

しかし実際は跡形も無く、綺麗に死骸が消え去っていたのだった。

これは詰まり迷宮の管理機構が働いた所為だ。


迷宮の管理機構とは内部施設の破損などを、元の形に修復するのが主な役目となる。

これは経年劣化した通路や広間の内壁、或いは傭兵などに破壊された罠の復元も含まれるのだ。


更には迷宮内で生息する魔獣や傭兵等の死体も、この管理機構に因って綺麗に片付けられる。

これに使用される手段はゴーレムなどが一般的だが、稀に生体機構を駆使したスライムに因る浄化も確認されていた。



そして今、ディーイーの眼前に在る大広間では、ゴーレムらしき活動の痕跡は見当たらない。

恐らくスライムに因る死骸の浄化が、ディーイー等が野営をしている間に行われたのだろう。



「時間にして2、3時間…いや、4時間くらいか。中々に迅速な管理機構だな」

と呟きながらディーイーは1人で感心してしまう。


何せ100体を超える大トカゲ(デイノス)の死骸なのだ。

あんな物を数時間で全て片付けるなど、普通なら絶対に不可能である。

人力だったなら数日は要していたに違い無い。



「何が迅速なの?」



背後から声が聞こえ、ディーイーは苦笑いしながら振り返った。

「おいおい…気配を消して近付くのはやめてよね」



「フフッ…気付いていた癖に」

と微笑みながら返した声の主は、仲間のガリーであった。



「何? ガリーも眠れないの?」



「うん…久々の迷宮だからかな。何だか気が昂っちゃってね」



「そっか…なら私も一緒だよ」



「そう言えばリキさんは? 起きてた筈だけど…」



ディーイーの問いに、ガリーは苦笑しながら答えた。

「凄い爆睡してたよ。図太い神経と言うか、流石はリキさんだよね」



「ふ〜む…」

『私に打ち明けて気持ちが楽になったのかね。こっちは前途多難でイライラしてるのに…』

仲間の精神状態が安定しているのは良い事だ。

しかし団長である自分の気苦労が増えるのは、ディーイーとしても納得のいかない処である。



「何だか機嫌が悪そうね?」

心配そうに問うたガリーは、ソッとディーイーの右手を握った。



その手は武人らしからぬ柔らかさがあり、やはり女性なのだとディーイーは自覚させられる。

また同時に優しい感触と人肌の温かみが、苛立っていた気持ちを柔和に導くのだった。

「大丈夫、ガリーと同じで寝付けなくてイライラしてただけよ」



「なら良いのだけど…」



「ガリーこそ何だかソワソワしてない? 何か有ったの?」



「あ……え〜と、流石にディーイーは鋭いね」



「フフッ…まぁ寝食を共にした仲だし、些細な変化で漠然だけど分かっちゃうよ。で、何か話があるんでしょ?」

因みに寝食の"寝"は体の関係も含む。

そこまで行くと本当に細かな変化でも、敏感に察してしまうものなのだ。



「実はね…カリド王国から貨物旅船に乗った時、海賊団に襲われたでしょ。あれは確実に俺を狙った襲撃なの…」



「あ〜〜だろうね。そもそも無名な私が狙われる理由が無いし、多分そうだと思ってたよ。それでガリーを狙ったのは"元使徒"だからかな?」



ガリーは申し訳無さそうに頷いた。

「うん…きっと龍王派の刺客だと思う。俺は反体勢派で自由に動ける数少ない1人だから…」



「ふむ…でもガリー1人に海賊船団って規模が大き過ぎない?」



「それは…俺もそう思う。でも龍王派の謀軍ぽい奴が居たから、十中八九は間違いないよ」



「謀軍?」

聞き慣れない言葉にディーイーは首を傾げた。



「え〜と…王直下の近衛軍が禁軍でしょ。それで対外的な活動をしてるのが謀軍なの、これは本来聖女が統括している軍ね」



「ほほぅ…そんな名称なのか。謀軍とは言い得て妙だな」

対外的…つまり工作員などの暗部を含む組織なのだろう。

表立った侵略が不可能な北方四国だけに、そう言った名称になるのも必然と思えた。



「それで…多分なんだけど……」

と言い難そうにするガリー。



「ん…何? 私とガリーの仲で、今更話し難い事なんて無いでしょ?」



「うん…その、俺の足取りは把握されてる筈なんだ。きっと目立たない場所で仕掛けてくると思うの」



つまり刺客が来ると言っているのだろう。

「ガリーを目障りに考えるなら、迷宮の中なんて格好の場所よね」



揶揄うようなディーイーの言い様に、ガリーは冗談半分で憤慨して見せた。

「もうっ!! 本当に危険なんだってば! 相手は暗部だし絶対に搦手からめてで来るよ」



「はいはい、そんなの分かってるわよ。だからこうして警報結界を張って、不意打ちを未然に防ごうとしてるんでしょ」



「でも……」

妙に引き下がらないガリー。



『んん? 私の実力を知っているのに、ここまで心配するなんて…』

「因みになんだけど、謀軍と言うか…その追手は暗部だけなの?」



「実は…」



ガリーが言い淀みながらも言及した内容は、ディーイーが驚かされる物だった。

何と龍国の暗部は、亀国の暗部と繋がっていると言うのだ。

「えぇぇ…何それ?! 敵国同士が繋がってるって…」



「う〜ん…表向きでは北方四国は敵国同士じゃないんだよ。そもそも中央麟国の傘下で、帝に代わって四方を治めてるから…要するに大総督みたいな感じかな」



そん事を言われても、ディーイーからすれば「だから何だ?」となってしまう。

結局のところ色んな利害が複雑に絡み合って、今の状況に至るのは分かる。

しかし"その面倒事"の渦中に自分が居るのは、正直納得がいかない。


加えてリキと同じく、裏で亀国が糸を引いている。

こんな偶然が有るだろうか?

『何か変だ…偶然にしては出来すぎだわ』



黙り込んだディーイーを前に、ガリーの不安ばかりが募った。

その結果、しゅん…と落ち込んでしまう。

「ごめんね…面倒な事に巻き込んじゃって」



「え? あ…いや、大丈夫、大丈夫。ちょっと考え事をしてたの。取り敢えずは情報を整理して、今後の方針を決めておこう」

などと慌ててガリーの機嫌を取るディーイーであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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