表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1618/1767

1494話・リキの吐露

刹那の章IV・月の姫(12)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

中層に入って直ぐの通路で、規格外の野営を張ったディーイー達。

そのまま特に見張も立てずに夜を過ごした。

これはディーイーが通路全体に仕込んだ結界呪法…警報キンディノス・アンゲリアが有ったからだ。


"本来"のディーイーならば、それさえも必要無い。

しかしながら常時展開していた魔法障壁も無く、更に仲間の安全を担保するとなると話は違ってくる。

故に念には念を入れたのだった。




何故か夜中に目を覚ましてしまったディーイーは、モゾモゾと1人天幕を抜け出した。

「うぅぅ……」

『まだ深夜の2時か…』


睡眠の質が良過ぎたのか?

或いは気が立って眠りが浅かったのか?

どちらにしろ少し損した気分になる。


因みにハクメイは傍に寝ていたが、爆睡している所為か全く起きる気配が無かった。

ある意味で羨ましいばかりである。



ふと灯りに気付くディーイー。

天幕の外で寝ている筈のリキが、起きて灯りの前に座っていた。



「あら…リキさん、どうしたの?」



薄い寝巻き姿のディーイーに、リキは目のやり場に困った様子で返す。

「いや…以前の事を思い出してよ、少し気が立って眠れなくなっちまった。それよか何か羽織ってくれねぇか?」



「え? あぁ〜〜ごめんごめん」

直ぐに就農魔導具から薄い毛布を取り出し、ディーイーは体を隠す様に羽織った。



「起きるには随分と早過ぎるだろ。どうしたんだ?」



「ん〜〜目が覚めちゃってね、久々の迷宮で気が昂ってたのかもね」

そう答えたディーイーは、地面に置かれたランタンの前に屈み込んだ。

その炎はガラス越しに柔らかい灯りを発し、不思議と気分を落ち着かせた。



「火ってのは危ねぇのに、何故だか見惚れちまう。まぁこうして見る分じゃあ安全だがな」



「そうだね…」



「ディーイーさん…相談事があるんだが……」



リキに改まった様子で言われ、ディーイーは苦笑いを浮かべてしまう。

「急にどうしたの? 相談だなんて珍しいわね」



「いや、その…あんまり隠し事はしたくないんだ。それにディーイーさんの実力が有れば、きっと迷宮を閉じるだろう。なら、その後の事を考えるのが当然ってもんだ」



「成程…分かったわ」

ディーイーは収納魔導具から小さな椅子を取り出し、ちょこんと座った。

話が長くなりそうなので、取り敢えずは楽な態勢を…と考えたのである。



「ハハハッ! 本当に収納魔導具は便利だよな。ディーイーさんが居なかったら、今頃は大層な荷物を抱えて上層で野営してただろうよ」



「これに慣れ過ぎるのも良く無いけどね。で、相談事って何?」



「お、おぅ…気付いてたかも知れんが、俺が請け負ってる依頼主は南門省の都督じゃ無いんだ」



「うん…多分そうだと思ってた」

然も大した事の無いように返すディーイー。



「え……気付いてて俺を問い詰めなかったのか? それにいつから気付いてたんだ?!」



「皆で最初に都督と会った時かな。あの時の都督は、リキさんに大した反応を見せなかったでしょ。そもそも依頼主だったら私を含めた”傭兵団・眠りの森”と会う前に、報告なりでリキさんと先に会ってたのでは?」

南門省に着いて都督に会うまで、リキとは別行動をしていない。

ならば都督が依頼主でない可能性は、ディーイーからすれば簡単に推測できたのだった。



「な、成程……流石は一国の王だな。洞察力が凄い…と言うか目聡いよ」

などと言ったリキは、参ったとばかりに苦笑した。



「フフッ…それで依頼主は誰なの? まさか龍王とかじゃないよね?」



「違う違う!! 依頼主は東の外様…東陽省の都督だ」



「依頼内容は?」



少しばかり辛辣な声音で問われ、リキは自分がすくみ上がるのを自覚する。

ディーイーは海賊船団を容易に沈める魔術師であり、武力も剣聖を超えるかも知れないのだ…そんな相手を怒らせれば只で済むはずが無い。


『いや…違う』

自分がディーイーに抱く思いは、恐怖でなく”畏敬”だ。

これ程に超絶な人物に尊敬の念が堪えず、故に嫌われたくない、また誠実に対面したいと思ってしまうのだ。


『嘘は絶対に付きたくない…』

だからこそ真摯に答えようと意を決した。

「東陽省の都督は、南門省の併合を狙っている。その為に迷宮の氾濫を画策していてな、俺はその先駆けの工作員として送られたんだ」



「え…? 迷宮の氾濫? それってまさか…」

その言葉面からディーイーは大体の推測は付いたが、それが正解して欲しいとは思えなかった。

仮に推測が正しければ、同じ国民同士での殺し合いを意味するからだ。



「うむ……迷宮の氾濫は古代北方語でホンスウィと言われててな、魔獣が溢れ出て都市を滅ぼす事を指す」



「やっぱりか……」



「軽蔑したか?」とリキは怖々(おずおず)と尋ねた。



これへ如何に答えるべきか逡巡するディーイー。

「……」


それぞれ人には人生が有り、また矜持が有る。

更に相容れぬ価値観や、譲れぬ使命を持ち合わせているかも知れない。

それら事情を無視して、簡単に言い捨てる訳にも行かないのだ。


何より相手は協力すると約束した”仲間”…今更になって断罪する事など出来ない。

なら自分に出来うる事は、詳しく話を聞いて歩み寄るか、或いは別の道を模索させるしか無いだろう。

「今になってツベコベ言いたくない。取り敢えず詳しく話を聞かせてくれる?」


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ