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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1491話・試練の迷宮内初日

刹那の章IV・月の姫(11)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

100体以上は居た大トカゲ(デイノス)を、ものの1分程度で殲滅してしまったディーイー。

しかもたった1人でだ。



これを目の当たりにしたサーディクは、この現実味の無い事態で腰を抜かす羽目になる。

「ディーイー様は…本当にお強いのですね……」



「だから言ったでしょう…大丈夫だと」

呆れた様子でシンは返すと、地べたに座り込んだサーディクへ手を貸した。



「はい…信用せず申し訳ありません」

今になって皆の楽観的な態度を理解するサーディク。

『これだけディーイー様が規格外に強ければ、一般的な脅威は消し飛ぶわね…』


だが此処はまだ中層なのだ。

大トカゲ(デイノス)は確かに危険な魔獣だが、一個体単位で見れば然して脅威では無い。

慣れた中堅の傭兵なら3〜4人で上手く連携して、被害を皆無にして処理する。


問題は別種の大型魔獣や、この階層以下に生息する危険個体だ。

これらは最下層に近付くにつれ、同じものでも強さが格段に上昇する。

つまり先ほど殲滅したデイノスであっても、次に遭遇すれば状況が変わるかも知れないのだ。


何より迷宮の主が対策する筈であり、今より過酷になるのは明白だった。

それが心配でならないサーディクは思わず尋ねてしまう。

「その…デイノスより強力な魔獣が現れても、ディーイー様は大丈夫なのでしょうか?」



『まだこの人は疑問を持つの…?』

少しばかり呆れてしまうシン。

これだけ強大な戦闘能力を目の当たりにして、未だに危惧が払拭できないのは異常だからだ。

「私は心配無いと思っています。と言うか、副団長殿は心配し過ぎなのでは? 何か理由が有るのですか?」



「……」

逆に聞き返されたサーディクは、気不味そうに黙り込むのだった。



『やれやれ……何か隠しているようですが、今ここで追及するのは良くなさそうですね』

サーディクを下手に追及をして、皆から孤立させるのをシンとしても望んでいない。

こう言った迷宮では、”建前でも”仲間同士の信頼関係が最も重要なのだから。

「まぁ良いでしょう。取り敢えずは野営の場所を決めないと」



そうするとデイノスの死体群を乗り越え、こちらへディーイーが戻って来た。



「あれ…お姉様? 先に進まれるのでは?」

不思議そうに首を傾げるハクメイ。



「いや…差し当たっての邪魔も処理したし、迷宮の主も”次の準備”まで時間が掛かる筈よ。だから通路側に戻って野営しよう」

そう答えたディーイーは、銀色の鞭をクルクルと纏めていた。



「そうか…じゃぁ俺らは野営の支度をしとくよ。ディーイーさんは適当に休んでいてくれ」

「ディーイー、お疲れ様。野営の準備は俺達に任せておいて」

とリキとガリーが踵を返しながら告げる。



「あぁ~~悪いね。それじゃお言葉に甘えて休憩するかな。実は久々に鞭を使って腕が……」

などと言ったディーイーは、傍まで来たハクメイに態とらしく寄り掛かった。



「フフッ…では湯浴みでもして疲れをとりますか?」



「うん……それも良いかもね」

時刻的な所為か、或いは疲労したのか、ディーイーは若干ウトウトし出す。



そんな仲間を尻目に、ティミドは大トカゲ(デイノス)の死体を調べていた。

『竜の亜種みたいだけど…こんな魔獣は初めて見たわ』

東方や南方では見掛けたどころか、話も聞いた事が無かった。


ひょっとすれば迷宮固有の魔獣なのかも知れない。

そうなると試練の迷宮は独自の生態系を成しているのか、或いは迷宮核に因って生み出された魔獣の可能性がある。


『嫌な予感がするわね…』

”この程度”で済むのが一番楽で良いが、実際そうは行かないだろう。

きっと危機感を抱いた迷宮の主が、更に強力で物量の増した対応をするに違い無いのだ。



「ティミドさ~ん! そんな所にいつまでも居たら、大トカゲ(デイノス)の臭いが付いてしまいますよ」



ディーイーを背負ったハクメイに呼ばれ、ティミドは少し嫉妬しながらも慌てて戻るのだった。

「えぇぇ……そんな嫌な事を言わないで下さいよ…」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






通路内に野営を設置したディーイー達。

その様子は余りにも奇異で、迷宮に慣れているが故のサーディクを困惑させる。

「え………」



「どうかしましたか?」

シンは不思議そうにサーディクへ尋ねた。



「い、いや…そ…何と言うか野営と言うには、余りに掛け離れていませんか?」

などと半ば呆気に取られるサーディクだが、そうなるのも当然ではあった。

何故なら幅広い通路の半分を、堂々と野営の天幕が占めているからだ。

更に奥行きは、その幅の倍以上も有りそうで、もはや野営と言うより仮拠点である。



「ん~~まぁ確かに迷宮に設営するような代物では有りませんね。ですがディーイー様が万全を期しているので、こんなに大掛かりでも大丈夫です」



あの冷静そうなシンが、まるで狂ったかのような発言。

これにサーディクが異を唱えられない訳が無かった。

「迷宮でこれ程に目立つ野営は危険です。それに視界が天幕で遮られて、先立って魔獣を視認する事が出来ませんよ」



「と…副団長殿が申されていますが?」



シンが話を振ったのは、この傭兵団の長であるディーイーだ。

そのディーイーは今、ハクメイに膝枕をされて休憩中であった。

「んぁ? あぁ~~大丈夫、大丈夫。通路一杯に警報結界を敷いているから、何かが接近したら即座に知らせてくれる。態々視認で見張る必要も無いよ~」



「警報結界……ですか?」

聞いた事も無い言葉に、サーディクは困惑するばかりである。



「兎に角、大丈夫だから皆は好きに休んだらいいよ。お風呂も用意するし、なんだったら先に入ってくれても構わないわよ」



「ちょ! だ、駄目です! 一番風呂は私とお姉様で入るのです!」



「はいはい、そんな怒らないでよ…ハクメイの可愛い顔が台無しだよ~」



そんな二人の甘々な会話と、迷宮内なのに警戒心皆無な皆へ、サーディクの胸中は呆れと落胆で満たされるのであった。

『はぁ……本当に大丈夫なのかしら……』


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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