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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1485話・南南東迷宮の関門(2)

刹那の章IV・月の姫(10)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

ディーイーに脅された一角獣モノケロースは、ブルブルと震えながら小さく頷いた。


一体何が起こったのかと言うと、”出来得る事をして見せろ”とディーイーに言われたからである。

それが出来なければ契約解除の現実が待っている…モノケロースからすれば一大事な状況であった。



「随分と怯えていますね…そんなに契約解除とやらは厳しい事なのですか?」

不思議そうに首を傾げるハクメイ。



「基本的に精霊は物質界へ顕現出来ない。なので契約者との親和性で体を構成して、こうして物質界で体を維持しているんだよ。だから契約を破棄すると体を維持できなくなるの」



ディーイーの説明からは少し要領を得ず、ハクメイは益々首を傾げた。

「んん? 体を維持できないと困るのですか?」



「あ……ごめん、説明不足だったか。精霊全てが物質的な体を欲している訳じゃ無いんだ。殆どが人間には興味が無くてね、こいつ(モノケロース)だけが例外なんだよ。つまり人間…特に女子が好きで、だから体の維持に拘る訳さ」



「あ~~成程」

漸く納得のいったハクメイは、モノケロースを撫でながら続けた。

「でも私と一緒に居る為には、このままじゃ色々不便ですものね」



「うん。精霊は…特に上級精霊は特別だからね、何かと融通が利く筈なんだけど」

そう返したディーイーは鋭い眼光をモノケロースに向ける。



するとビクッとモノケロースは震え、まるで人間が溜息をつくように息を吐いた。



「え……?!」

直後、目の前で起こった事態に目を見張るハクメイ。

何と3mは有ったモノケロースの体高が、半分…否、6分の1程度まで縮んだのだった。



「やれば出来るじゃないの……あんな体躯じゃ邪魔になるのは分かってた筈なのに」

ぼやくディーイー。



「えぇぇぇ?! 凄く可愛い!! こんなに小さくなっちゃって!」

感極まったハクメイは、そう叫んで小さなモノケロースを抱き締めたのだった。



それを目の当たりにした他の仲間は、皆一同に目が点になる。

「え……あの巨馬が…中型犬並みに……」と半ば唖然に呟くティミド。

「た、確かにこれなら邪魔には為らんが、ある意味で目を引くと言うか……」と困惑するリキ。

「はは……愛玩動物?…として連れ回せる…かな?」と苦笑気味のガリー。


シンとサーディクはと言うと、完全に諦めているのか先に関所へ入ってしまった。



「取り敢えずは首輪をさせておくか。誰かの飼い馬と他人に認識させないとね」

ディーイーは収納魔道具から犬用?の首輪を取り出し、それをハクメイに手渡した。



「嫌がりませんか?」

心配になるハクメイ。



「嫌がるなら送還するまでだ」



これを聞いたモノケロースはブルっと震えた後に、自ら率先して頭を差し出した。



「フフッ…本当に送還されたくないみたいですね。じゃぁ早速っと…」



こうして中型犬のように首輪をされ、尚且つ引き紐を付けられたモノケロース。

上級精霊としての自尊心は粉砕されたが、何とか送還の危機を脱したのであった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






迷宮関所に入ると、奥に鉄製の門が見えた。

そして門の少し手前の両側に、受付のカウンターが備え付けられていた。



「あの門が迷宮に続く防塞への入口かな?」



ディーイーの問いに、サーディクが頷いた。

「左様です。両側のどちらでも良いので身分証の提示、それと名簿の記入を済ませれば先へ進めます」



「じゃぁ早々に済ませて迷宮に潜ろう」

ディーイーは軽い足取りで受付に向かう。

勿論、仮面を着け忘れない。

ここで自分の顔を直視して硬直されては、無駄に時間を浪費するだけである。



ディーイーが受付に向かうと、傍に居たサーディクに受付の男性が反応した。

「これはこれは黒金の蝶のサーディク様、本日は如何なご用件でしょうか?」

ここに来ると言う事は”迷宮に潜る”のが当然だが、いつもの面子では無いので別件だと思ったようだ。



「今日は傭兵団・眠りの森の支援の為、私が同行する事になりました。こちらが団長のディーイー様です、早々に手続きの方をお願いします」



端的に、又テキパキと用件をサーディクから告げられ、受付の男性は慌てて行動に移った。

「さ、左様ですか! 承知しました…では眠りの森団長のディーイー様、身分証の提示と名簿への記入をお願い致します」



こっそりとサーディクに尋ねるディーイー。

「ひょっとして迷宮関所は傭兵ギルドの出資で成り立ってるの?」



「はい、傭兵ギルドと都督府の出資で運営されています」



『おぉ! 流石は黒金の蝶の副団長だな』

と言うか流石は都督の娘であり、傭兵ギルドの副ギルド長である。

ここまでヤオシュが影響力を持つとなると、ディーイーとしても今後は無下には出来ない。

迷宮から戻ったら色々と奉仕?すべきだろう。



こうして全員分の手続きが終わるが、やはりと言うべきか…中型犬化した一角獣モノケロースが受付男性の目に留まった。

「え~と……この馬?は迷宮に連れて行くのですか?」



返答に困ったサーディクは、助け舟を求めてディーイーへ視線を向ける。



「え?! あ……こ、これは私が魔術で作ったゴーレムです。試験運用も兼ねて迷宮に連れて行く予定でした」

『うぐぐ……少し苦しいか?!』



すると意外な事に受付男性は、そのまま真に受けて納得してしまった。

「成程、了解しました。それではお気を付けて迷宮の探索へお向かい下さい」



『おおぉ!? 何だか分からないけど大丈夫だった』

ホッと胸を撫で下ろすディーイーであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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