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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1483話・一角獣と契約と使役

刹那の章IV・月の姫(9)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

銀冠の女王ノクスに馬車を収納させたディーイー。

皆が呆気に取られる中、今度はハクメイへ突拍子も無い事を告げた。

「次は馬車を引く馬だね。ハクメイも欲しがってたし、私が一頭だけ用意してあげるよ」



「え……馬ですか? でも世話の手間が掛かりますよ? 厩舎も必要になりますし…」

ディーイーの言葉に、楽観的なハクメイでも流石に心配になった。



「フフッ…大丈夫。手間も掛からないし厩舎も要らないから」

などと返したディーイーは、馬車が有った場所へ右手を翳して呟いた。

「顕現せよ…モノケロース」


すると空間が歪んだ直後、甲高い破砕音が周囲に響き渡った。

そう…それは恰も鏡のように、歪んだ空間が粉々に砕け散ったのである。

そして砕けた部分は奈落の如き闇を穿ち、そこから何かの足?が姿を見せた。



「ぅわぁ…大きい……」

現実離れした状況に、半ば呆然と呟くハクメイ。



割れる筈も無い空間…そこに出来た穴から現れたのは、巨大な漆黒の馬?

否…馬と呼ぶには余りにも大きく、また額に鋭い一本の角が生えていたのだった。



「これでも一応は上級精霊でね、名はモノケロースと言うの。気性は荒いけど女が好きだから、きっとハクメイに懐くよ」

などとディーイーは言った後、モノケロースの体にポンポンと手で触れた。



そうするとモノケロースはハクメイに歩み寄り、彼女の体をクンクンと嗅ぎ始める。



「うわっぷっ!? な、なに?!」

その鼻息たるや体躯に比例して凄まじく、ハクメイは驚いて尻餅をついた。



「こらこら、モノケロース…初対面で匂いを嗅ぐのは不躾だぞ」



ディーイーにたしなめられたモノケロースは、ピタリと嗅ぐのを止めた。

それから直ぐに踵を返すと、今度はディーイーに迫り匂いを嗅ぎ出す始末。



「ちょっ!? や、やめい! うおっ?!」

勢い余ったモノケロースに押されて、ステ〜ンと後ろへ転倒するディーイー。

結果、盛大に裾が捲れ上がり、下着が丸見えになってしまう。



その機に乗じたのか、モノケロースは大広げになった股へ頭を突っ込んだ。



「こ、こら!!! この変態駄馬が!!!」

これにはディーイーでも流石にブチ切れる。

その振り上げた右拳が、加減も無くモノケロースの顔面に直撃した。



「X☆○△+!?!」

声にならない妙な音を放ち、もんどりを打って後ろに倒れるモノケロース。

その無様さときたら滑稽この上無い。



だが居合わせた面々は唖然とするばかりだった。



「はぁ……やれやれだな。この駄馬は本当に女好きでね、特に処女が好きで節操が無いんだ。失念してたよ…」

と後悔した様子でディーイーはボヤいた。



「そ、その…精霊なんですよね? 馬として扱っても良いのですか?」

ディーイーを信じてはいるが、色々と不安になってハクメイは聞かずには居られない。



「うん、問題無いよ。馬車馬としてコキ使ってやって。あ〜〜それからハクメイが気に入ったなら、護衛として傍に置くといい」



「お〜〜この立派なお馬さんを頂けるのですか!?」



「まぁ私の使役精霊だから、厳密には貸す形になるけどね。その辺りはモノケロースに言って聞かせるから大丈夫よ」



「やった! お姉様、ありがとうございます!」

未だに痛み?で悶えるモノケロースを他所に、ハクメイは諸手を上げて喜んだ。



そんな2人の遣り取りに、居合わせた面々はドン引きである。


『えぇぇ?! あんな得体の知れない馬?を受け入れるの?!』

『おいおいおい! あんなの連れて歩けねぇぞ!』

と驚愕のガリーとリキ。


シンはと言うと、この展開に少し慣れてきた様子だ。

『まぁディーイー様なら、この程度は普通でしょうね』

しかし呆れ感は否めない。


そしてティミドは一番冷静だったと言える。

『はぁ……周囲の反応を予測して、事前に準備しておかないといけないわね…』

このまま迷宮の関所へ向かえば、確実に大事になるだろう。

それを今から見据えてゲンナリするのだった。



その後は態とらしく悶えている一角獣モノケロースの尻を蹴り上げ、さっさと立ち上がらせるディーイー。

そうして皆を仲間だと認識させ、特にハクメイを守るように言聞かせる。



普通の馬の3倍は有りそうな体躯なのに、小さくて華奢なディーイーに頭が上がらないモノケロース。

その対比が面白くて、ついハクメイは吹き出してしまう。

「プッ! プハハッ! 気性が荒いと言う割には随分と従順ですね」



「それはそうだよ…私が主で使役する側なんだから」

ディーイーは然も当然のように返す。



「ん? え~っと……使役する側と言う事は、何らかの契約をしているんですか?」



このハクメイの疑問は、ガリーとティミドも同じく気になっていた。

先ほど呼び出した銀冠の女王もそうだが、これほど強大な存在を使役するなど、生半可な代償では無い筈なのだ。

「ディーイー…本当に大丈夫なの?」

「ディーイー様はたまに突拍子も無く御自身をお座なりにします。ご無理はされていませんよね?」



「大丈夫、大丈夫。自我を持つ中級以上の精霊は、見合った相手と契約して更に力を得るの。それに主の私が見たり感じたりしたことが、そのまま精霊にも伝わるし、それが心身の栄養にもなるのよ。まぁこの子達の場合は少し例外で、それとは別の強力な制約が掛かっているけどね」



などと説明されるが、いまいち要領を得ない一同。


それでもハクメイだけは大して気にしていない様子だ。

「小難しことは分かりませんが、つまり御飯は要らないんですよね? しかも私の護衛もしてくれるなんて…感激です!」

気にしないどころか、実にご満悦そうである。



「フフフッ…それは良かった。って、早っ!」

いつの間にかモノケロースの背に乗っているハクメイに、本気で驚いてしまうディーイー。

『私以外には中々懐かない筈なのに…やっぱりこの駄馬は、只の面食いで処女好きなだけか…』

少しばかり落胆するのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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