表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1600/1767

1476話・ヤオシュの目的と透け透け

刹那の章IV・月の姫(8)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「はい…私の目的は試練の迷宮にあります」

ディーイーの問いに、ヤオシュは思わせ振りに頷いて答えた。



『ん…?』

だが、この返答にディーイーは違和感を覚える。

それは皆が同じ目標とする、試練の迷宮を"閉じる"と言わなかったからだ。

「つまり…言葉通りに"迷宮の中"に、ヤオシュの目的が"在る"のね?」



「はい。今ここで明確には答えられませんが、私の目的完遂には迷宮踏破は関係ありません。只、南門省の事を鑑みるならば、それに越した事が無いのも事実です」



「成程…」

誰にでも秘密は有る…故にディーイーは追求しなかった。

それでも凡その推測は可能だ。

『特定の階層に有る秘宝が必要か、或いは倒さなければ為らない何かが居るのか…』

どちらにせよ、今あれこれ詮索するのは無粋だろう。



ヤオシュが意外そうに言った。

「…問い質さないのですね」



「まぁね…貴女が私の事を詮索しないから、そのお返しかな」



これにヤオシュは何故か申し訳無さそうに呟く。

「左様ですか…」



『う〜ん…これは何か面倒事に巻き込まれたかな?』

飽く迄も勘だが、ヤオシュが抱える問題は随分と"ややこしい"ように思えた。


兎に角、このままでは気不味いので話題を変えるディーイー。

「所で早々に試練の迷宮へ潜りたいんだけど、どうすれば良いのかな?」



「え…あ、はい。潜るだけなら身分証を迷宮の関門で提示して、名簿に記入するだけで問題有りません。でも私からの支援も付けますので、余り急がれても…」

遠回しに準備が出来ていない…そうヤオシュは言っているようだ。



「ん〜〜なら、先に眠りの森だけで潜らせて貰うわ。こちらには迷宮に詳しい雷鳴と金剛拳が居るし」



少しばかり慌てるヤオシュ。

「ひょっとして本日から潜られるつもりですか?!」



「え? 何か不味いの?」



すると控えていた副団長サーディクが、我慢できなかったのか話に割って入って来た。

「ディーイー様、本来でしたら十二分に準備を整えて迷宮へ潜ります。安易に挑まれますと、お仲間の命が幾つ有っても足りませんよ」



それを聞いたディーイーは、久方ぶりに胸が躍る高揚を感じる。

「ほほう…そんなに凄いんだ? 骨が有りそうで楽しみね」


以前の世界では多種多様な迷宮を踏破してきた。

どれも甲乙付け難い良さが有ったが、この世界では1つしか経験していない。

その所為か刺激が足りない状態なのだった。



「迷宮が楽しみって…初めて聞きましたよ」

サーディクが呆れた様子で頭を抱えた。



一方ヤオシュはと言うと、僅かに憂いを帯びた表情を浮かべる。

例えるなら名残惜しい、又は寂しい…そんな情動が伝わって来そうだ。



「なに? もっと私と一緒に居たいの? それだと副団長が嫉妬してムクれるんじゃない?」



ディーイーに揶揄われたヤオシュは、苦笑しながらも柔らかく返した。

「フフッ…そうですね。では情報交換"など"を含めて合間合間でお会いしましょう」


片やサーディクは図星なのか、本当にムクれてしまった。

「……」



『ははは…副団長はヤオシュにゾッコンみたいね』

揶揄い過ぎて嫌われては、今後の活動に支障をきたしそうだ。

なのでディーイーは再び話題を変えた。

「さてさて、思い立ったら吉日だと言うし、私は仮拠点に戻って迷宮に潜る準備をするよ」


そうして立ち上がった後、ヤオシュへ悪戯顔を向けて続ける。

「ちゃんと"など"も忘れてないから」



対して少し恥ずかしそうに返すヤオシュ。

「分かりました。次の機会を楽しみにしていますね」



こうしてディーイーは浴衣のまま帰ろうとして、2人に止められてしまうのだった。

「お、お待ちを! その格好は流石に…」

「ちょっ?! そのまま帰る気ですか!?」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






仮拠点…満腹亭に戻って来たディーイー。

時刻は午前9時半に差し掛かる頃だ。



一階の食堂フロアで待っていたハクメイが、「え……」と声を漏らして唖然とする。



「ただいま〜〜って、どうしたの?」

片やディーイーはハクメイの様子に首を傾げた。



「………どうしたじゃ有りませんよ! 朝帰りですよ! それにその格好は何なのですか?!」

我に返ったハクメイは怒りと"相反する情動"とで、妙な語調になってしまう。



「えぇぇ…?! な、何? 怒るか嬉しがるか、どっちかにしてよ…」



そんな突っ込みなど無視して、ハクメイはディーイーの周りを回って舐める様に眺めた。

「むむむ……これは…」

『素晴らしいわ!』



「だから一体何なのよ?!」

ハクメイの振る舞いが不気味過ぎて、流石のディーイーも問い質さずには居られない。



すると店の入り口に控えていたサーディクが、

「これはヤオシュ団長からディーイー様に贈られた衣装です。気に入って頂けると自負しております」

などと聞いてもいないのに言い出す。



「はいっ! 気に入りました! って…どちら様ですか?」



「私は傭兵団・黒金の蝶の副団長サーディクと申します」



「これはこれは御丁寧に、私はロン・ハクメイです」



「貴女が火炎島の……龍国随一の美姫とは納得がいきました」



「まぁお上手ですね」



ディーイーを他所に、勝手に盛り上がるハクメイとサーディク。

社交辞令な会話だが、妙に意気投合している感がある。



そうこうしていると、二階からティミドとシンが降りて来た。

「え……ディーイー様、そのお召し物は…」

「これは中々に…」



「え…? 何? 二人とも?」

妙な反応が理解出来ず、ディーイーは首を傾げた。

『んん? そんなに変な格好か? 普通の旗包風ドレスなのに…』



怪訝そうなディーイーの腕に、ハクメイが抱き着いて言った。

「お姉様、このドレスは凄い透け透けなんですよ。下着なんか丸見えですし、私としては身内以外に見せて欲しくない恰好ですね」



「へ…? 透け透け?! 何処が?」

幾ら自分の恰好を客観的に見ても、”ディーイーの視点”からは普通の黒の布なのだ。

そして着替えた時の事を思い出した。

『そういえば…姿見を見せられなかったわね』


即座に収納魔道具から姿見を取り出し、ディーイーは自分の前に置く。

そうして姿見に映った姿に驚いてしまう。

「ちょっ! 透け透けじゃないの!!」


体の線どころか胸の形や、割れた腹筋が薄っすらと見える程に透け透け。

ちゃんと下着を付けているのが不幸中の幸いと言えた。



「フフフッ…これはヤオシュ様が開発された新素材の布なのです。如何です? お気に召したでしょう?」

そう告げたサーディクは自信満々の笑みを浮かべたのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ