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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1463話・褐色の副団長

刹那の章IV・月の姫(4)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

ディーイーがシンを伴って一階へ降りると、カウンターの前に舎人とねり然とした女性が立っていた。

その佇まいを一言で表すなら"凛々しい"が相応しいだろう。


彼女は淡い金色の打掛の上へ、漆黒の羽織りを身に纏い実に上品にも見える。

また黒髪は短めだが女性らしさを残し、その肌は北方人には珍しく褐色だ。

そして彼女の端正な顔が、凛々しさの根幹なのが窺い知れた。



『ほほぅ…随分と美人さんだな。しかし知らぬ顔だし…』

ディーイーは褐色の美女を見つめて首を傾げた。



褐色の美女はディーイーに気付き上品に会釈する。

「その仮面…眠りの森の団長ディーイー様ですね?」



「うん、こんな夜更けに何用ですか?」



「これは…夜分遅くに失礼しました。私は黒金の蝶の副団長サーディクと申します」



『副団長…? って事は都督側の人間か、』

敵対派閥の接触かと思い警戒したディーイーだが、少し肩透かしを食らった気分だ。

「その副団長様が態々出向くなんて、何か重要な話しですか?」



「あ…いえ、その様に込み入った事では無いのです。実は団長が個人的にディーイー様とお会いしたいそうで…」



サーディクの申し出に、ディーイーは唖然とした。

「……」

『えぇぇ…さっき会ったばかりじゃん』

厳密に言えば公式的な記録に残る会食だった。

だがディーイー側からすれば、公式だろうが個人だろうが同じである。



シンがディーイーの耳元へ囁いた、

「夜も遅いですし、断っても差し支え無いかと。ですが万が一にヤオシュ様が出張っているなら話は別ですね」



常に冷静で客観的視点のシン。

その彼女から常識論を元に助言されるのは、ディーイーにとって助けとなった。

『確かに馬車を停めてるっていってたし…ヤオシュが直接来てる可能性もあるわね』


ディーイーはシンに頷いた後、サーディクへ尋ねた。

「サーディク副団長は、お一人で来られたのですか?」



「いえ、ヤオシュ団長と参りました。ディーイー様が宜しければ…」

そう答えたサーディクは、外へ誘うように片手を差し出した。



『ちょっ?! これじゃぁ断れないじゃん!』

こう見えてもディーイーは、人として最低限の礼節を重んじる。

つまり夜更けに態々尋ねて来た"目上の人間"を、無情に門前払いなど出来る訳が無かった。

「えっと…馬車に乗れと?」



「はい、ご存知かと思いますが、馬車は密会や密談に適した空間です。ディーイー様にも都合が宜しいかと」



『この人…何を言ってるんだ?! 密会?密談?!』

ディーイーの中で困惑が深まるばかりだ。

しかしながら断る訳にはいかず、諦めて店の出口に向かう。

「分かったわ…」



これに随行しようとシンも後を追うが、サーディクに遮られてしまう。

「お待ちを」



「……ディーイー様のお世話をしなければ為りません。道を塞がないで頂けますか?」

珍しく不快さを隠さずに言うシン。



負けじとサーディクは辛辣な声音で返す。

「お世話でしたら私がしますので、貴女の心配には及びません」



「ちょっ!! 2人とも落ち着いて!」

慌てて止めに入るディーイー。

こんな所で揉められては、余計に状況が面倒になるだけである。



「失礼致しました」

直ぐにディーイーへ謝罪し一歩下がるサーディク。

だがシンには謝罪する素振りさえ見せない。

どうやらシンを格下だと見ているようだ。



それでもシンは気にした様子も無くディーイーへ告げた。

「断られた方が宜しいのでは? 随行を許可しないなんて、誘拐と変わりませんよ」



サーディクはムッとしたのか、苛立ちを抑えながらも反論した。

「失礼な事を言いますね。私はれっきとた黒金の蝶の人間です。犯罪など犯す訳が無いでしょう」



「さて、それは如何でしょうね。権威者は真実を捻じ曲げて、都合の良い事実に書き換えますから」



辛辣なシンの言葉に、流石にサーディクも顔色を変えた。

「言ってくれますね、高々付き人風情が」



対してシンは一切顔色を変えずに告げる。

「付き人? 確かに私はハクメイ様やディーイー様のお世話を致しますが、"歴とした"眠りの森の傭兵ですよ」



「え……団員?」

と少し驚いた顔をするサーディク。

本当に只の従者が付き人と思っていたようだ。



「2人とも良い加減にしてくれる? ここで言い争いを続けるなら、私は1人で貴女達の知らない所へ出掛けるわよ」

このディーイーの声は凛として澄んでおり、怒りの語調など全く含まれていない。



なのにシンとサーディクは表現し難い恐怖を覚える。

「「……!」」

そうして自分達がディーイーを"差し置いて"、勝手な振る舞いをした事に後悔した。

「申し訳ありません…」

「不躾な行為でした、お許しください…」



2人から深く頭を下げられ、ディーイーは溜息をついた。

「はぁ……反省したのなら別に構わないわ。で、私は馬車に乗れば良いのよね?」



「はい…宜しいのですか?」

怖々(おずおず)と尋ねるサーディク。



「宜しいも何も…仕方無いでしょ」

とサーディクへ嫌そうに返したディーイーは、シンへ続けた。

「シンさんは2階に戻って皆んなに伝えておいて」



「承知致しました…」



「さて…馬車まで案内してくれる?」

ディーイーは片手を差し出した。

それは恰もエスコートを求める淑女のようである。


だがディーイーの姿はパーティーへ赴く様な姿では無い。

何故なら部屋着と言うか、もはや寝巻きだからだ。

しかもキャミソールにショートパンツと露出度が高く、上に羽織っている薄いローブが無ければ痴女である。



そんなディーイーから差し出された手を、サーディクはジッと見つめた。

『ふむ…女の私でも"守りたい(エスコート)"したくなる華奢さだわ』


「はい…馬車の中で団長がお待ちです」

故にサーディクは当然の如く、ディーイーの手を取り出口へ誘ったのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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