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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1460話・興味津々な都督(2)

刹那の章IV・月の姫(4)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「分かりました…なら先ずは仮面を外すとしましょう」

互いに腹を割って話す…ならば己を隠したままでは論外だろう。

そう考えたディーイーは徐に仮面を外した。



「…!!」

ディーイーの素顔を目の当たりにした都督チャンシーは息を飲み、そこから直ぐに固まってしまう。



『まぁ、そうなるわよね…』

都督の様子に苦笑いを浮かべるハクメイ。


だが娘のヤオシュは違った。

確かに驚愕したようだが、父親のように固まりはしなかったのだ。

そうなると相当に意志が強いのか、又はディーイー並みの美女を他に見た事があるかになる。


いずれにしろ逆にハクメイが驚かされる事態で、

「あのぅ…ヤオシュ様は大丈夫なのですね?」

と、つい訊いてしまう。



「大丈夫とは?」



「その…団長の素顔を初めて見た人間は、皆一様に自失したようになるのです」



「あ〜〜そう言う事ですか。成程…確かにそうですね」

そう呟いた後、ヤオシュは続けて告げた。

「私も例外無く同じ状況ですよ。只、耐性と言うか、万が一の事態に対して"処置"しているので、そう見えたのでしょう」



「そうですか…」

いまいち理解し難い返答だが、取り敢えず相槌を返すハクメイ。



そうして3分程待つと、都督チャンシーが我に返った。

「これは失礼した。確かにディーイー殿が仮面を着けねば、周囲が大変な事になるな…実際に体験して合点がいったよ」



「理解して頂いて幸いです」

軽く会釈で返すディーイー。



未だ興奮冷め止まぬのか、チャンシーは半ば呆然としつつも賞賛を口にした。

「しかし…これ程の美貌は見た事が無い。いやはや…世界は広いな」



「都督閣下も私が知る中では1、2を争う美丈夫ですよ。それにヤオシュ殿も相当にお美しい」



絶世の美貌を持つディーイーに褒められ、チャンシーは照れつつも苦笑する。

「フフフッ…ディーイー殿に褒められると自信が付くな。素直に喜んでおくよ」


隣に座るヤオシュも微笑みながら会釈した。



その後、漸く食事が始まる。

ここでチャンシーが再び驚きを口にする事態に。

「ディーイー殿は肝が据わっておるな…」


地位や立場に差が有る場合、何らかの席では下位の者が萎縮しがちである。

なのにディーイーは食卓に並べられた料理を、"遠慮無く"飲み食いしたのだ。



「え…? そうですか?」

と小首を傾げるディーイー。



「うむ…身分証には18歳で登録されているが、それよりも実際は若く見える。また何十年も戦場に居た武人を彷彿させる雰囲気… 小姐は…いや…卿は只者では無いな」



このチャンシーの言葉に、居合わせたティミドとガリーに緊張が走った。

聖女王だと露見する事は有り得ないが、有り得ないと分かっていてもドキッとするのだ。

事情を知る立場からすれば、これは仕方無い心情だろう。


一方、ハクメイは少しズレた反応をする。

「はい、お姉様…あ……団長は父上にも一目置かれる武人なのですよ」


リキはと言うと、腹が減って居たのか食事に夢中だ。


そしてシンは故意なのか素知らぬ顔である。

ディーイーの素性を勘繰らせない意図なら、これが一番の方法と言えた。



「ほほぅ…あのロン領督が認めた武人か、実に興味深い。で、そのような一廉の女傑が、どうして傭兵団の団長を?」

このチャンシーの問いは、他に幾らでも良い登用先が有るのでは?…と暗に言っているのだ。



これにディーイーが如何に答えるか、ティミドとガリーは固唾を飲む。

「「……」」



「理由は3つ有ります。1つ目は迷宮の攻略、2つ目は私の人探し、3つ目はハクメイに世界を見せる為です」

とディーイーは率直に答える。

そこから何かを隠すような揺れ動く感情は、一切見受けられない。



「ふむ…中々に興味深いな。ディーイー女士の武力がハクメイ姫の話し通りなら、迷宮攻略に大きな成果を上げるに違い無い。ならば私からも支援したい所だが…」

そこまで言ったチェンシーは、ディーイーの反応を窺うように態と言い淀んだ。



「都督殿の仰りたい事はご尤もです。要するに何の成果も上げていないポッと出の傭兵団に、あからさまな支援は出来ませんものね」



頷くチェンシー。

「うむ、そんな所だ。私の肝入りになりたければ、南門省全ての傭兵が納得する成果が必要だ。まぁ私と懇意になりたければの話だが…」


チャンシーからすれば、優秀な傭兵団が自領に居るのは心強い。

迷宮の攻略や副産物は、殆どが傭兵に頼る事で成り立っているからだ。

何より強力な辺境領督との伝手は、喉から手が出る程に欲しくもあった。


その反面、他領督の嫡子に何か有っては、チャンシーが責を問われる可能性が有る。

晩餐に招待した以上、知らなかったと言い逃れは出来ないだろう。


そこで1つ提案する事にした。

「君達が良ければ、ヤオシュの傭兵団から補助を受けるのは如何かね?」



「補助…ですか?」



「私からの露骨な肝入りは反感を生み兼ねない。しかし将来有望な傭兵や冒険者を、副ギルド長が目を掛けるなら問題無いだろう」



チャンシーの言葉に、再びディーイーは首を傾げた。

「んん? どちらも肝入りと言う意味なら同じでは?」



「いやいや、そうでも無い。現在、試練の迷宮攻略は暗礁に乗り上げていてね…黒金の蝶が優秀な傭兵を募っている所なのだよ。それに君達も一枚噛んではどうかな?」



「黒金の蝶…?」



又もや首を傾げるディーイーに、チャンシーは苦笑いを浮かべた。

「ディーイー殿は此処の事情に疎いようだな。ふむ…ならば仕方あるまい。黒金の蝶はヤオシュが率いる南門省随一の傭兵団だ。まぁ私が言うのは親馬鹿に聞こえるかも知れんがね」



そうチャンシーが言うのだから"仕方無い"のだろうが、状況は全く以って真逆だ。

権威者の晩餐に招待されて、その権威者に関連する素性や事情を知らぬは不敬に他ならない。


故にハクメイが慌てて割って入った。

「都督閣下、私は存じております。黒金の蝶の団長であるヤオシュ様には、実は憧れておりまして…こうしてお会いするのが夢だったのですよ」



「ほほぅ! そうかそうか…娘の名は火炎島まで轟いていたか!」

ハクメイの言葉が嬉しかったのか、随分と上機嫌になるチャンシー。



この状況にティミドとガリーは、ホッと胸を撫で下ろしたのであった。

『はぁ…冷や冷やさせられるわ』

『もぅ…勘弁して』



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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