1459話・興味津々な都督
刹那の章IV・月の姫(3)も更新しております。
そちらも宜しくお願いします。
入口の衛士が暫く固まる事態に直面するが、何とか予定通りの時間に待合室へ通されたディーイー達。
後は都督に呼ばれるのを待つだけである。
因みに都督府の中は、建築様式が傭兵ギルドと似通っていた。
恐らく同じ建築士が設計した物なのだろう。
その所為か整然とした無駄の無い内装で、とても清潔感に溢れている。
その反面、何とも言えない人間味の欠けた印象を覚えてしまう。
どこぞの王宮のように華美では無く、かと言って厳か過ぎでもない。
正に機能美を優先した内装と言えた。
一方、ディーイー等が案内された待合室は、賓客用の物だったのか非常に豪華な内装になっていた。
幾ら都督?の方針でも、来賓に機能美の押しつけは烏滸がましいと考えたのかも知れない。
『ふ~ん…この部屋は他の国と余り変わらない感じね』
都督が他者を慮れる為人のようで、少しホッとするディーイー。
そうして10分ほど待たされ後、漸く晩餐の場へ案内される。
そこは3階分を吹き抜けにした広い食堂で、天井は天窓により夜空を眺められるようになっていた。
そして食卓はと言うと、20人が掛けられそうな程に長細く大きい。
既に食器類は整然と並べられ、壁際には数人の使用人が控えていた。
上座は都督の席なのは明らかであり、その向かって左側の席にディーイー達は案内される。
上座に最も近い席に貴賓であるハクメイ、その隣に続いて団長のディーイーが座った。
更に隣へティミド、ガリー、リキ、シンと続き着席させられた。
因みに精霊?のペタルダは、邪魔にならぬように姿を消している。
こうして待つ事5分…上位の役人然とした風貌の男性と、ディーイーに負けず劣らず露出度の高いドレス姿の女性が入室して来た。
「良く来てくれた」
そう告げて上座に向かう男性。
その見た目はホウジーレンに似た雰囲気を持ち、非常に整った顔立ちをしていた。
何より目を見張るのは、北方の人間には珍しく金髪で碧眼なところだろう。
ディーイー等が起立して会釈しようとすると、男は上座に座りながら告げた。
「私が君達を招待したイェシン・チャンシーだ。堅苦しい挨拶は必要無い、そのまま座っていてくれ」
イェシン・チャンシーの後を付いて入って来た女性は、右側…丁度ハクメイの対面に座った。
この妙齢の女性は端正過ぎる顔立ちも然る事乍ら、病的に白い肌と、長い髪の毛の右半分が金髪で、左半分が漆黒なのだった。
その彼女を見ながら紹介する都督。
「これは私の娘ヤオシュだ。傭兵ならば黒金の二つ名の方が馴染み深いかも知れぬな」
ハクメイは緊張しつつも、自分の役目を果たす為に自己紹介を始めた。
「晩餐にお招き頂き有難う御座います。私はロン・ホウジーレンの娘、ハクメイでございます」
「君がロン領督の御息女か…噂に違わず美しいな。龍国随一の美姫と呼ばれるのも頷ける」
「きょ、恐縮です…」
チャンシーの視線がハクメイの隣に移った。
「そちらは…傭兵団の団長殿かな?」
いつものディーイーならば無愛想に返す所だ。
何故なら単純明快に、世の中の権威者が好きではないからだ。
しかしながらハクメイが主賓であり、場の空気を乱す訳にはいかない。
「はい、傭兵団・眠りの森の団長ディーイーと言います」
と不敬な為らぬよう端的に答えた。
それでも愛想を振りまかないのは相変わらずと言える。
「仮面を着けているのは、何か理由があるのかね?」
不思議そうにチャンシーが尋ねた。
『う……やっぱり突っ込んきたか』
少しばかり焦るディーイー。
見過ごしてくれると淡い期待を抱いていたが、世の中そんなに甘く無かった訳だ。
そもそも権威者相手に顔を隠すなど、不敬この上ない振る舞いである。
それをチャンシーが咎めずに"尋ねた"のだから、運が良かったと言わざるを得ないだろう。
「仮面をしておかないと周囲に迷惑が掛かるからです」
再度ディーイーは察しろとばかりに端的に答えた。
『嘘は言ってないぞ…』
これが返って裏目に出てしまう。
空気を読まず?またチャンシーが尋ねたのだ。
「ほほぅ…顔に酷い傷痕でも残っておるのかね?」
「いえ…何と言うか…」
逡巡してしまうディーイー。
『おいおい…そんな事どうでも良いじゃないの!』
この場の主賓はハクメイであり、自分では無いのだ。
なのに何故か都督が興味津々な様子…正直、迷惑甚だしい。
だがそんな暴言を吐ける訳も無く、どう誤魔化すか困惑する羽目になる。
『うぅ…どうしよう』
するとハクメイが必死に助け舟を出そうとしてくれた。
「都督閣下、その…お姉様…いえ…団長は事情が有って顔を隠さねば為らないのです」
耳聡く聞き逃さないチャンシー。
「ほぅ…ハクメイ姫は団長殿と随分仲が良いようだね」
「え…あ、はい…」
『うわぁ〜ん、矢先がこっちに向いたよ…』
ここでチャンシーが苦笑した。
「フフフッ…別に粗を探して丸裸にしたい訳では無い。可能であれば腹を割って話したいと思っただけなのだ」
「さ、左様ですか…」
「うむ。本当なら皆で風呂にでも入り、裸の付き合いが一番良いのだが…そちらの殆どは淑女のようだしな」
そう告げたチャンシーは苦笑いを浮かべた。
『これは意外に…』
都督が悪く無い為人だとディーイーは感じた。
決して権威を振りかざす質では無く、柔和な問いかけにより対話を試みようとする。
そんな相手なのに、此方は端から警戒し過ぎて居たのかも知れない。
ならば此方から尋ねるのも有りだろう。
「腹を割っての対話と言うのなら、他言しない事を前提として貰えるのですよね?」
頷くチャンシー。
「当然だ。ここでの事は他言しない事を約束しよう」
「分かりました…なら先ずは仮面を外すとしましょう」
そう告げたディーイーは、徐に仮面へ手を掛けたのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




