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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1455話・都督との会食

何とか傭兵団の登録を終えたデーイー達。

色々とバタバタしてしまった所為か、時刻は午後の4時半を回っていた。



「う~ん……思ったより時間が掛かっちゃったなぁ」

ぐったりとソファーに寝転がりながら呟くディーイー。



「フフッ…慣れない環境で、慣れない手続きと言うのは心身共に疲れるものですからね」

などと隣に座り同調するハクメイだが、言葉とは裏腹に随分と元気な様子だ。

流石は本当の15歳である。



「で、晩餐に呼ばれてるなら、それなりの格好をしなきゃならんよな。そんな服、俺は持ってないぞ」

と嫌そうに言ったリキは、皆の格好を見渡した。

『う〜む…俺とガリーさんがヤバそうか、』


権威者の晩餐に招待される…これは謂わば出世の糸口であり、一介の傭兵や冒険者には絶対に逃したく無い機会だ。

故に有り金をはたいて何とか衣装を用意したりする。

しかしながらリキにとって予想外の展開であり、簡単に衣装を用意出来る訳も無かった。


『うぅぅ…何とかしたいが、今後の生活費が…』

屈強な傭兵だろうが冒険者だろうが、食べねば為らないし雨風を凌ぐ寝所も必要になる。

それら全てに金が掛かるのだから、組織に所属しない自由な単身も中々に大変なのだった。



そんなリキの状況を察した…のかは分からないが、ディーイーが皆を見据えて言った。

「今後の生活費や活動費を、皆んなは心配しなくても良いからね」



これに当然の如く反応するリキ。

「え…ディーイーさん、大丈夫なのか?」



「ここに居る皆んなは、私の傭兵団"眠りの森"の仲間だからね。団長の私が諸々の資金を用意するのは当然だよ」



「おぉ!! ありがたや〜〜!」



するとシンがソッとディーイーの傍に屈んで告げる。

「ですが今から礼服を調達するのは、全員分を考慮すると時間的に厳しいかと…」

最早その振る舞いは、優秀な秘書官か補佐官である。



「フフッ…流石はシンさんだね。え〜と…会食は何時からだっけ?」



「午後の7時です。移動を鑑みれば中町の関所を、6時には通過しておかねば為りませんね」



「後1時間ちょいか…」

と呟きながらディーイーは感心していた。

シンが配慮して具体的な時間を提示した為だ。

『只の侍女のままにするには勿体無いな』



皆が不安そうな表情を浮かべた。


金が有っても時間が無い。

このままでは会食に相応しい格好が出来ず、恥を掻くのは明白だ。

また傭兵団・眠りの森は資金力が無く、格も低いと認識される事になるだろう。

これは傭兵団として最悪の出発点となり、今後の活動に支障が起き兼ねない事態だ。



傭兵として玄人なリキとガリーは、先を見通したのか特に悲壮な表情を浮かべていた。

「ど、どうするんだ…?」

「ディーイー……」



「おいおい…そんな捨てられた子犬みたいな顔をしないでよ」

余りにも2人が悲壮で、ついディーイーは笑ってしまうところだった。

『やれやれ……傭兵の名声なんて、後から幾らでも上げれるだろうに。何をそんなに心配するのやら…』



「だってぇ~~」

と珍しく女々しい態度をとるガリー。



片やハクメイはディーイーへ全幅の信頼を置いているのか、全く心配していない様子だ。

「お姉様…何か妙案が御有りなのでは?」



「まぁ~ね。取り敢えずギルドで個室を借りられないかな? ちょっとした商談や会議とかで使えるような広さで良いんだけど」



直ぐに反応するシン。

「それでしたら音漏れ防止がされた部屋を、確か50聖貨で1時間借りられた筈です」



「おお~! 流石はシンさん!」

そうシンを褒めた後、ディーイーは「どっこいしょ」とソファーから起き上がって続けた。

「じゃぁ早速部屋を借りよう。そこで詳しい話をするよ」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






ギルドには個人的な商談や依頼を行う為、一級から三級までの個室が3種類存在した。

当然一級個室は広く大人数を収容可能で、中央には大きな会議卓が用意されている。

もうここまで来ると個室と言うより大広間で、貸し賃も1時間1000聖貨と中々に高額だ。


二級個室は500聖貨で、一般の会議室と言って良い広さだ。

そしてディーイー達が選んだ50聖貨の三級個室は、中央にテーブルが1つ、それを挟むように2人掛けのソファーが1つずつ配置されている。



「うん、丁度良い広さだね。じゃぁリキさんは少し外で待ってて」



「え……お、おう……」

そうディーイーに言われて、一人寂しく個室の外に立たされるリキ。

『えぇぇ?! 俺だけ除け者扱い?!』

しかし団長の指示なので従わざるを得ない。



そうしてディーイーは個室に残った4人を見渡して言った。

「さて、皆は下着姿になってくれる?」



「え? 服を脱ぐのですか?」と戸惑うシン。


「は~い! 承知しました、お姉様!」などと全く疑う様子を見せないハクメイ。


ディーイーが無意味な事を指示しないと知っているので、ガリーも素直に頷いた。

「うん、分かった」


ティミドはと言うと、突拍子も無いが何時もの事と認識していた。

なので早々に服を脱ぎ始める…多少のボヤキは有るが。

「はぁ……大体予想はつきますが、前もって説明された方がよろしいのでは?」



「フフッ…では皆の準備も出来た事だし、団員服を支給するわね」



「団員服ですか…?」

まさかの展開にシンは目を丸くする。



「実は私専属の意匠師が居て、その子に色々と服を用意して貰っていたの。元々は団員服の予定では無かったけど、まぁ有る物は使わないと意味が無いからね」

そう答えたディーイーは何処から取り出したのか、次々に衣装を出してテーブルやソファーの上に置いた。



「わぁ~~綺麗な布地ですね」

置かれた衣装を見てウットリするハクメイ。



「いや……驚くのは、そこじゃ無いでしょ…一体どこから出したの?」

今更になって驚くのも馬鹿らしいが、今まで募っていた率直な疑問をガリーは口にした。



「ん? あぁ~~この指輪…収納魔導具から出したんだよ。これよりは多少性能は落ちるけど、ちょっとした旅の荷物位は、簡単に収納できる指輪を皆にも渡すよ」



幾ら相手が”あの聖女王”でも、余りにも常軌を逸している。

その所為かガリーは、「え……えぇぇ?!」と声を上げて暫く硬直してしまう。

当然、皆も一緒で呆気に取られて無言になるのだった。


因みに永劫の騎士(アイオーン・エクェス)のティミドは、過ぎた主君の施しに頭を抱えるのであった。

『もうプリームス様ったら…収納魔導具は私達の特権なのに!』


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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