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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
刹那の章IV・月の姫 (短編集)
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月の姫(15)

フィートの解放された力は、解放した時と同じ方法で封印される事が分かった。

これは先を見据えていたフラウが、事前にオスクロ神から聞いていた様だ。



「成程…つまりフラウは初めから”こうなる事”…いえ、この事態になるよう”誘導”したのですね」

そう告げたアポラウシウスは、ジロリ…とフラウを睨めつけた。



「は、はい……差し出がましい事をして申し訳ありませんでした。ですが事を収拾するには、時に強引であったり”毒”をも利用せざるを得ません。ご理解の程を…」

と返したフラウは深く首を垂れた。



「はぁ……仕方有りませんね。今回は不問としましょう」

深い溜息が出てしまうアポラウシウス。


元はと言えば自分の配慮が、フィートへ行き届いていなかったのが原因なのだ。

ここでフラウを責めるならば、自分を戒めなければ為らなくなる。

そんな自虐的行為など真っ平御免だ…自分は聖人君主などに成るつもりはないのだから。



「有難う御座います…」

アポラウシウスの判断を見越していたとは言え、中々に肝が冷えたフラウ。

『やれやれ…お二人とも捻くれていらっしゃるから、私としても気苦労が堪えませんね』



そんな二人をボ~っと見詰めながら、少しだけ嫉妬心が芽生えたフィート。

この主従関係が少し羨ましく思えたのである。

互いの事を良く知り尽くし、また信頼しているが故に、今回の様な事態でも容易に収拾が着く。

以前の自分に、この様な仲間や部下が居れば、只一人で荒野をさ迷う事も無かったに違いない。



そんな半ば呆けていたフィートへ、アポラウシウスが怪訝そうに告げた。

「フィートさん…何をしているんですか。早く力を封印してくれませんか?」



「え……あ、はい。あ……その前に、私からマスターに渡したい物が有ります」



『んん? 力の封印よりも”渡す”方が重要だと?』

「……分かりました。何を頂けるのでしょうか?」

少し腑に落ちないが、アポラウシウスは受け入れる事にした。



するとフィートは右手を目の前に差し出し、その掌を上に向ける。

直後、僅かだが魔力が高まり、その掌の上に何かが凝縮していくのが見えた。

それは次第に丸い物体を形どり、2cm大の石?へと変化すると、見る見る内に透き通った赤い宝石へ変化したのだった。



「これは…?」



「これは私の魔力と血で作った結晶体です。きっとマスターを守ってくれますから、肌身離さずに持っておいて下さいね」



これを仮に名付けるならば、”血玉の宝石”が良いだろう。

そう思えるほど血を連想させるが、不思議と嫌悪感を覚えなかった。

「お守りとして有難く頂くしましょう」



そうしてフィートは自身の力を封印し、テラス内を支配していた強大な威圧感は消失する。

ホッと胸を撫で下ろすアポラウシウス。

「一時はどうなるかと思いましたよ…」


一応、屋敷には結界が張っており、万が一にフィートの力が暴走した場合の対処を施していた。

それでも完璧なものでは無く、飽く迄も万が一に対する気休め程度だったのだ。



「ごめんなさい……私が無理を言って、オスクロ神に封印を解く方法を授けて貰ったんです」

フィートはシュン…と俯きながら告げた。



そこへフラウが慌てて割って入る。

「違います! そうなる様に私が誘導したのです」



「ふぅ……もう分かりましたから。不問にすると言ったでしょう…それに私は疲れているのですから、そう騒がないで下さい」

などと2人を制した後、不思議と体が軽くなっていくのをアポラウシウスは感じた。


『これは、ひょっとして…』

フィートが手ずから作った、血玉の宝石の効果かも知れない。


それもその筈…これは”月の民の王族”が生み出した宝石なのだ。

その内包する力が尋常でないの意は、想像に容易いと言えた。

『大変な物を貰ってしまいましたね…』


それは妙な情動だった。

後悔と言うには何かが異なり、贈り物を貰った喜びとも少し違う。

そう…それは誇り高く誰にもかしずかない自分が、他者に施された初めての感覚だった。



急に黙り込んだアポラウシウスへ、心配そうに尋ねるフィート。

「マスター…どうかしましたか?」



「いえ……何でも有りません」



「あのぅ…1つ良いですか?」



「1つ…ですか。はい、伺いましょう」

先程の事を考えれば、あれ以上の事は無い…そう高を括ったアポラウシウス。

この判断は少しばかり浅慮だったかも知れない。



フィートはモジモジしながら言った。

「その…可能な限りで良いので、ここに居ない時は手紙を"沢山"送ってくれませんか?」



「……」

フィートの言い様が矛盾しているとアポラウシウスは思えた。

『可能な限りなのに、沢山ですか…』



「駄目ですか…?」



「いえ…それは現状報告のような物でも良いのですか?」

面倒ではあるが習慣付ければ不可能では無い。

しかしながら沢山と言うのは、流石のアポラウシウスも気分的に引っ掛かる。



「はい、マスターの現状が知りたいです」



「そうですか…分かりました。では"可能性な限り沢山"の手紙を送るとしましょうか」

そして結局は受け入れてしまうアポラウシウスであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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