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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
刹那の章IV・月の姫 (短編集)
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月の姫(12)

屋敷の地下に案内されたフィートは、その漆黒の空間に息を飲む。

そう…ただ灯りの無い地下室では無く、そこは厳かな祭壇だったのだ。



フィートの背後で、静かに告げるフラウ。

「もう既にオスクロ神は顕現なさっています。ご挨拶を…」



言われるまでも無く、フィートは超常的な威圧感を感じ取っていた。

「オ、オスクロ神様…お久しぶりです」

もっと良い言葉が有った筈だが、緊張の余り上手く頭が回らなかった。



「フフフッ…そう畏るでない。そなたはスキアの大切な信徒…いや、女王なのだからな」

と魔力の篭った言霊が返って来た。

それは限り無く抑えて尚、これ程に威圧的になってしまう。

その配慮が無ければ、フィートとフラウは気圧されて気絶していたに違いない。



「あなた様とスキア神は一体どのような間柄なのですか?」

このフィートの素朴な疑問は余りにも不躾だったのだろう、背後のフラウが極度の緊張で固まってしまった。



察したオスクロは、柔らかな口調で2人へ告げた。

「フフッ…構わぬ。無知とは罪ではあるが、若さの証でもある。その若さこそが情動を生み出し、余の糧となり余を愉悦に導くのだからな」



これが意図した言霊だったのか、硬直したフラウの体から緊張が抜ける。

「ご、ご配慮痛み入ります」

そしてフィートはと言うと、完全に緊張が解けたのか逆に振ら付いてしまう。



「さて、先程の問いだが、答えは余の娘と言って差し支えない。只、スキアが如何に思っているかは別ではあるがな…」

とオスクロは自嘲気味に言った。



「成程…」

と相槌を打ったものの、何が成程なのか正直理解に至っていないフィート。

兎に角はスキア神とオスクロ神が敵対するような関係で無く、胸を撫で下ろすばかりだ。



「さて…余に会いに来て、只の挨拶だけで終わらせるのも味気なかろう。何か望みが有るならば申してみよ」



このオスクロ神の言葉に、フィートの心臓がドキッと跳ね上がった。

全く期待をしていなかった訳では無い…だからこそ、まさかの言葉に身体中へ緊張が走ったのでる。

「は、はい…」

それでも本当に口にして良いのか逡巡してしまう。



「如何した? 言い難い事なのか?」

相変わらず強大な魔力を含む言霊だが、それは先程にも増して抑制されていた。



「い、いえ……その、私の封印された能力は、必要とした際に使う事が可能なのでしょうか?」



「ほぅ…折角の封印を解いて力を行使したいと?」



そのオスクロ神の問いは、"神の施しを拒むのか?"…そうフィートの耳には聞こえた。

そもそも王族の力を封じたのは、魔神を呼び寄せる体質を完全抑制する為なのだ。

「も、申し訳有りません」



「フフッ、フフフッ…初めに会った頃の威勢は何処へ行ったのだ? 余は、そんな其方を気に入っていたのだがな」



「え……」

呆気に取られるフィート。

不敬を働いて気に入られるなど、普通なら有り得ないのだから。



「何より其方は、余にとって重要な存在なのだ。多少の不敬など何の問題も無い」



「……」

フィートの背後に居たフラウは、そのオスクロの言葉に驚愕した。

何故ならオスクロ神は信徒に寛大ではあるが、それ以外には非常に厳格だからだ。


フラウが思うにフィートの扱いは信徒以上で、神子や大司祭に匹敵する。

つまり他神の信徒であっても、それを物ともしない重要性がフィートには有るのだ。



一方フィートは、如何に振る舞えば良いのか分からずに居た。

「恐縮です…」



すると闇の中でオスクロの気配が揺れる。

「どうやら逆に萎縮させてしまったようだな。すまない…スキアの子よ」



果たして神に謝罪された人間が居るだろうか?

この事実にフィートは慌て、フラウは再び硬直する羽目に。

「め、滅相も有りません!」

「…!!」



「フッ…兎に角だ、其方に掛けた封印を限定的に解除する事を許す」

そうオスクロは告げた後、僅かに言霊を強めて続けた。

「されど3度までだ。加えて余が納得する理由で無くては為らない」



「理由は……有事の際に力が無くては自分も、それに同朋も守れないからです」



「ふむ…当然の理由ではある。が、其方を守る為に"そこの男"や"奴"が居るのだ。其方が案ずる事では有るまい?」



フィートは小さく首を横に振った。

「ただ守られるだけでは嫌なのです。私は民を"脅威"から守る為に存在する王族…その誇りが許しません」



闇が、この空間の全てが大きく揺れ動く。

それは決して怒りなどでは無く、柔らかくて、なのに強い波動を含んでいたのだ。

「フフフッ…ハハハッ! 実に小気味良い。今世の下劣な権威者に聞かせてやりたい程だ」



これ程に愉悦を表現して見せた神が、未だかつて存在しただろうか?

否…そもそも超次元の存在が、人の前に顕現するかど有り得ないのだから。


故にフィートとフラウは、この状況を目の当たりにして呆然とせざるを得ないのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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