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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1440話・出し抜きと後ろめたさ

居間から寝室に聞き耳を立てていたシン。

寝室はディーイーとグラキエースの2人だけだった筈…なのに3人分の会話が聞こえてきた。

『え…?! 何事?!』

何者かが侵入したのなら一大事である。

しかし雰囲気からは全く危険性を感じられない。


『確認だけはした方が良さそうね』

「ディーイー様、何かございましたか?」

扉をノックしてから言葉に気を付けて尋ねてみた。

聞き耳を立てていたと知られては不味いからだ。



「あ〜〜ごめん、騒がしかった? え〜と…」

とディーイーの声がして、暫くしてから続きが聞こえて来た。

「シンさん…同行する仲間として頼みが有るんだけど」



「え? あ…はい、承りますよ」



「取り敢えず入ってくれるかな」



しっぽりしけ込んだ2人の空間に入るのは、シンとしては少し気が引ける。

それでも頼まれては仕方が無い。

「承知しました…」


そうして寝室に入ると、思った通り2人は下着姿だった。

そしてディーイーの傍に居る存在に驚かされる羽目になる。

「えっ…?!」



「はは…ははは……びっくりするよね。え〜と、この子の服を見繕って欲しいのよ」

そう苦笑しながら告げるディーイーの胸に、チョコん…と座る全裸の小人?



しかも小人はディーイーに瓜二つで、シンは困惑する。

「え? えぇぇ?!」

いつも冷静で居るよう心掛けているが、今回ばかりは話が別だ。



「驚かせて申し訳ない。話せば長くなるから…その…兎に角は危険な子では無いから、世話をして貰えないかな?」

ディーイーとしてもロギオスに"こんなもの"を押し付けられて困惑しているのだ。

『ここは皆んなの理解と協力が必要だわ』



すると小人がフワリと宙に浮いて、シンへお辞儀をした。

「ベタルダと申します。貴女は…」



「あ……わ、私はハクメイ姫様の専属侍女のシンです」

咄嗟に返したシンは、助けを求めるようにディーイーとグラキエースを交互に見やった。



「私はグラキエースと話が有るから、暫くペタルダの相手をしてやって欲しい」

などとディーイーは申し訳なさそうに返す。

グラキエースに至っては見てみぬ振りである。



「はぁ……分かりました。ペタルダさんのお世話を承ります」

こんな正体不明な存在の相手など、本音で言えば嫌だ。

しかしながらシンは"只の侍女"でしかない…嫌と言える訳も無かった。


だが素っ裸なペタルダの姿を見て、不覚にも胸の鼓動が激しくなってしまう。

その容姿が余りにも美し過ぎるからだ。

『うぅ…これは……ある意味で役得なのでしょうか…』



「では宜しくお願いします、シンさん」

とペタルダは言うと、シンの肩へチョコんと乗った。



これに少しばかり腰が引けるシン。

「……ペタルダさんは自由に飛べるのですね」

この正体不明の存在に触れられれば、誰でも恐怖を抱くものだ。

それが僅かだったのは、人の言葉を話し、更には魅惑的な外見をしていたからだろう。



「はい。人とは少し違う仕組みですので」



「…!」

屈託の無い笑顔で答える小人に、またもやシンの胸が高鳴った。

とは言え自分の座右の銘は冷静沈黙なのだ。

気持ちを切り替えたシンは、ディーイーへ会釈をして直ぐに寝室を出た。



それを見送った後、ディーイーは首を傾げる。

「何か…変な雰囲気だったね?」



「そうですね。ですが、それも当然かと。あんな得体の知れないものを押し付けられてはね」

邪魔者を追い出せたのは良いが、グラキエースとしては侍女シンが気の毒に思えた。



「う〜ん……可愛いと思うけどなぁ」



ベッドに横たわるディーイーに、ソッと近付くグラキエース。

「フフッ…ご自分が可愛らしい事に、自覚が有るのですね?」


ディーイーにペタルダが似ていて、そのペタルダが可愛いならば、理屈で言えばディーイーも可愛い事になるのは当然だ。



『そう言うつもりで言ったんじゃ無いんだけどな…』

「え? う〜ん……客観的に見れば整ってるわよね。でも私の好みは"私以外"だから、ペタルダが可愛く見えるのは外見以外の要素だよ」



「左様ですか。では私も外見以外の要素で、プリームス様をお慕いしております」



「そ、そうなの…? え〜と…」

グイグイ来るグラキエースに、ディーイーは戸惑ってしまう。


以前に比べて随分と親密になったが、まだまだディーイーの方がぎこちない。

その理由は魔王だった頃の振る舞いに、後ろめたさを感じているからだった。



そうしている間に、グラキエースが優しく口付けをしてきた。



「あ……ま、待って。今後の方針を話し合っておかないと」



「後では駄目ですか? 恐らく2人きりの時間は多くは有りませんよ」



「……うん。そうだね…」

そんな事を言われては、ディーイーは身を委ねるしか無い。

『何をやってるんだ私は。これじゃあ…』

初心うぶな生娘だ。


こうしてグラキエースと体を重ねるのは、"この世界"に来てから初めてでは無い。

なのに未だに慣れないのは、グラキエースに対して心を開いていない証拠だろう。


『ははは……私って腰抜けよね…』

意を決したディーイーは、自分からグラキエースの体に両手を回した。



「プ、プリームス様…?」

いつもより積極的な主君に、今度はグラキエースが戸惑ってしまう。



「何だか緊張してるみたいなの。だからグラキエースが私を解してくれる?」



何と甘い言葉か。

毅然としている主君が、日頃では他者に決して見せない態度だ。

これにグラキエースの心身が蕩けない筈が無い。

「はい…」


ふとグラキエースの脳裏にスキエンティアの姿が過った。

それは出し抜いたと言う情動と、妙な申し訳無さが混同した所為かも知れない。


だが以前の世界のように遠慮ばかりしていては何も進展せず、また今は遠慮する必要も無いのだ。

『悪いけど、もう譲る気は無いわ』



「どうしたの…?」

抱きしめ合ったまま身じろぎしないグラキエースに、不安になるディーイー。



「いえ…何でも有りません」

そう優しく返したグラキエースはディーイーを胸に抱いたまま、徐にベッドへ倒れ込むのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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