1436話・火炎島で顔合わせ(3)
「出来れば呼びたくなかったけど…任せられるのは1人しか居ないかな」
そうプリームスが呟いた直後に、拳大の宝珠が突如姿を現す。
それはディーイーの上をフワフワと浮いており、高度な魔導具なのは明らかだった。
「これは……シンに付けた物と同じですよね?」
とハクメイが言った。
シンはハクメイの専属侍女で、以前に暗殺されるのを警戒した事があった。
その際に攻防一体の機能を備える宝珠を、ディーイーが護衛としてシンに付けてくれたのである。
『何をされる気だ?!』
あまり良い予感がしないホウジーレン。
居合わせたガリーとリキは良く分からず、固唾を飲んで見守る。
「「……」」
只一つ分かるのは、ディーイーの行為は規格外で突拍子も無いと言う事だけだ。
そしてティミドはと言うと、凡その推測が付いていた。
何故なら、この宝珠の製作者が誰か…それを知っていれば自ずと答えは出るからだ。
だが軍事支援の指揮をするには、火炎島かヘイス公国に居なければ為らない。
本国に居る場合や、或いは任務で他の地域に居れば、とてもでは無いが直ぐに駆け付けられない。
「うん…この宝珠で連絡を取るよ。それで直接来て貰おう」
などと然も問題無いように返したディーイーは、宝珠にソッと右手を添えた。
そうして待つこと5分…。
ディーイーは右手を離すと一同に言った。
「直ぐに来てくれるそうだ。只…また騒がしくなるから、そこは我慢して欲しい」
「え? 直ぐ…ですか?」
ホウジーレンは半ば唖然とした。
「うん…火炎島の座標と帰送点の情報は、この宝珠で共有してるからね。直ぐに来れるよ」
ディーイーの説明に、ハクメイは期待で胸が高鳴る。
今から現れる人物がディーイーに匹敵する実力者だからだ。
しかしその反面、為人が分からない上に性別も分からないので、色々と不安になってしまう。
『お姉様のお気に入りの人だったらどうしよう…』
そうして更に5分ほど待つと、外から地響きのような轟音が聞こえた。
これに直ぐさまホウジーレンが窓を開けて確認する。
「あれは…!」
ディーイーが次元魔法とやらを使った?時と同じ現象を目にした。
またティミドとディーイー以外は窓に駆け寄り、何者が来るのか気になって仕方が無い様子だ。
轟音が止んで暫くすると、天空の巨大な白渦が消えて何かが降りて来るのが見えた。
しかしながら余りに遠い為、直ぐには人なのか物体なのか区別がつかない。
「んんん? ん?! ん!!」
何かに気付いたリキが、咄嗟に目を逸らす。
「え? どうしたの…リキさん?」
怪訝そうに尋ねるガリー。
「いや、その……俺と領督殿は見ない方が良い…かも」
などと歯切れ悪くリキは答えた。
そうこうしていると天空から降り立った存在は、皆が視認出来る距離まで近付く。
すると一同は色々と驚く羽目に……何と半裸の女性が飛行魔法?で此方へ向かって来ていたのだ。
「えっ!? ちょっ?! 何事!?」
つい声を上げてしまうガリー。
その半裸姿が非常に艶かしいのだから尚更だ。
ハクメイは直ぐに父親の両目を押さえに行った。
「お父様は見ては駄目です!!」
などと言う自分は棚に上げてガン見である。
『うわぁ……凄い色っぽい…』
とうとう窓際までやって来た人物は、褐色の肌を持つ麗人グラキエースだった。
「プリームス様、遅れて申し訳有りません。実は湯浴みをしておりまして…この様な格好で失礼致します」
グラキエースの第一声にズッコケそうになるティミド。
『おいおい! せめて何か羽織って来て欲しかったわ』
「あ〜〜ごめんね。急に呼び出した私が悪かったよ」
対してディーイーは気にした風も無く、ソファーに寝そべったまま怠惰に返した。
色々と呆気に取られそうになるハクメイ。
『えぇぇ?! この人は何者なの!?』
今の会話と"その格好"から、この褐色麗人がディーイーと相当に距離が近いのを窺えた。
またもや現れた競争相手?に、ハクメイの中で危機感が増すばかりだ。
ホウジーレンが目を押さえられたまま、困惑した様子で尋ねた。
「その…貴女は一体どちら様で?」
「あ……これは失礼しました。私はプリームス様の臣下のグラキエースと申します。非公式ですが、一応は永劫の騎士を拝命しております」
と丁寧に自己紹介をするグラキエース。
しかしタオルを体に巻き付けただけの姿なので、全くもって格好がつかない。
「わ、私は火炎島の領督ロン・ホウジーレンと申します」
『非公式の永劫の騎士だと?!』
驚愕するホウジーレン。
それは要するに聖女王にとって、暗に"秘匿戦力"なのを物語っていた為だ。
「あのぅ……グラキエースさん…体中濡れたままですし、ちゃんと拭って服を着た方が良いのでは?」
ティミドは遠慮気味に言った。
相手が初代ペクーシス連合王国の女王だけに、強気に言えないのは仕方ないだろう。
何せティミドは"元"ペクーシス連合王国の国民なのだから。
「あ…そうですね。お見苦しい姿を晒してしまいました」
そうグラキエースは言った後、窓から執務室に入り体を拭いだす…その体に巻いていたタオルで。
「ちょっ、グラキエースさん!! こんな所で真っ裸にならないで下さい!」
結果、ティミドが慌てて止める羽目になる。
そして傍で直視してしまったハクメイは、ついディーイーに囁いてしまう。
「す、凄いですね…引き締まってるのにバインでボインでしたよ!」
「そうでしょ。グラキエースはウチでも特に良い体付きをしてるからね!」
などと2人で盛り上がるディーイーであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




