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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1433話・漸く火炎島

狭間世界を経由した転送魔法で、一瞬にして火炎島の上空へ到着するディーイー達。

そうなると当然にして危機に陥る。



「あ……」

「うおっ!? く、空中?!」

「ちょっ!?」

「プリームス様!!」



ティミドは即座にディーイー(プリームス)を抱き止め、指輪に付加された浮遊魔法を発動させる。

しかしガリーとリキが、そのような物を持ち合わせている筈も無かった。


『くっ!』

ここで"主君にとって"大切な仲間を落下死させる訳にはいかない。

ならば出来る事は1つ…己の体を使って、強引に救うしかないのだ。



「え……」

「おぉ?!」

ガリーとリキが驚きの声を漏らす。

なんとティミドが両脚でリキを蟹挟みにし、左手でガリーの腕を掴んでいたのだった。

因みにディーイーは、ティミドの右脇に抱え込まれていた。



「ふぅ……間一髪」



安堵の声を漏らすティミドへ、ディーイーが申し訳無さそうに労った。

「すまないティミド。色々と苦労をかける…」



「いえ…プリームス様のお世話をするのが私の使命ですから。この程度の不手際…あ、え〜と…事故処理はお任せ下さい」



『うぐっ、いま不手際って言った!』

全くその通りなので何も言い返せないディーイー。

ただ内心で愚痴を呟くだけである。



そんな主君を見てティミドは首を傾げる。

「どうかなさいましたか?」



「いや…べつに。それよりも、このまま安全に降下出来る?」



「はい。絶対的な安全では無いですが、ゆっくり降下するだけなら全く問題有りませんよ」



「じゃあ、お願い。真っ直ぐに降りれれば、ちょうど居城の中庭だから」



「承知いたしました」



2人の遣り取りに唖然とするガリーとリキ。

「「……」」


それも仕方の無い事だ。

今は火炎島の全域が見渡せる程の高度で、尚且つ先程は死にかけたのだから。

しかも空中で安穏と会話をするのは、側から見れば正気の沙汰ではない。


『これが聖女王と永劫の騎士(アイオーン・エクェス)なの!?』

とんでも無い人間を仲間にしてしまった…そんな後悔にも似た情動がガリーの胸中を満たした。



「プリームス様…メディ.ロギオスは大丈夫なのでしょうか?」

下降中に、ティミドが少し思い詰めた声音で尋ねた。



「うん…無事ではないだろうけど、大丈夫と思うよ」



何とも矛盾する返答をするディーイーに、空中でズッコケそうになるティミド。

その所為でガリーとリキを落としかける始末だ。

「そ、それって結局は大丈夫なのですか? ひょっとして辛うじて生きているとか無しですよ…」



「いやいや、きっと大丈夫。彼は偏屈だし、何より死にたがっているようには見えなかった。今頃、のほほんとしてるんじゃないかな」



「左様ですか…」

いまいち釈然としないティミド。

それでも主君が"そう言っている"のだから、納得せざるを得ない。



「ところでティミド…」



「はい…プリームス様、何でしょうか?」



「今後、その"プリームス様"と呼ぶのは止めてくれないかな? 今の私は旅人のディーイーだから…そこのところ気を付けて欲しいの」



「あ……配慮が足らず申し訳ありません。これからディーイー様と呼ばせて頂きます」



「う、うん…」

丁寧なティミドの返しに、少しばかり項垂れるディーイー。

『その"様付け"が問題なのよね。これじゃあ只の旅人には思われないよ…』



そして、これを聞いていたガリーは、"そこが問題では無い"と突っ込みたくなる。

そもそもディーイーのような絶世の美女が、只の旅人と言うのは無理が有る。


『それなら一層のこと、貴族令嬢の旅行にすれば良いのに…』

などと言いたかったが、変に反感を買って落とされるのは勘弁だ。

なので地上に着くまで黙っている事にした。



こうして地上に近付くと、真下に人が集まっているのをディーイーは目にする。

「あれ? 何か…いっぱい人が居るんだけど…」



「それは当然かと。狭間世界へ門を作る際に、凄い轟音が空から鳴りましたから…たぶん確かめるために、皆んな慌てて集まったのでは?」



『参ったな…やっぱり出力の調整が出来てない』

ヘイス公国に来る時は、自分が1人だった事もあるが、最小限の魔力出力に努めたディーイー。

そのお陰か、巨大な白渦が上空に穿つ事態に為らなかったのだ。


これは恐らくだが100か0かに近いほど、極端に魔力調整の精度が荒くなっている証拠だ。

今は辛うじて100か1〜5程度に収まっているが、根本的な対策をしないと、この先に何が起こるか分かったものでは無い。


『うぅぅ…大人しくメディ.ロギオスに言う事に従っておくか、』

狂っては居ても流石は名医である。




「あっ!! お姉様!!」

真下から聞き覚えの有る声がした。



これへ直ぐに反応したのがティミドだ。

「お姉様…??」

しかも眉をひそめて実に怪訝そうである。



「え〜と、その…彼女が私を助けてくれたハクメイだよ」

何故か焦って説明してしまうディーイー。



「ほほう…彼女がディーイー様の恩人ですか。なのに自分を御姉様と呼ばせていると?」



「あ、え…その…それは…」

自分が身内以外と親しくしていると、どうしてか身内(とくに女子)の機嫌が悪くなる。

それを経験から知っている所為で、ついついディーイーは慌ててしまった。



「どうして慌てるのですか? 何か後ろめたい事でもしたのですか?」



脇に抱えられている接触部分から、凍り付くような感覚をディーイーは感じた。

「ちょっ!? そんな殺気立たないで!」



間近で聞いていたガリーも背筋が凍る。

『うわぁ……やっぱり永劫の王国アイオーン・ヴァスリオは、聖女王個人の為に有るって本当だったんだ』

それは詰まる所、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)にとってディーイー(プリームス)が唯一無二の存在なのを指しているのだ。


それなら当然に嫉妬される…などと思いガリーは溜息が出るのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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