表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
1523/1769

1430話・転送目前とティミドの苦悩

「フフッ…物理的には邪魔になりませんよ」

などと思わせ振りな言い様をするロギオス。



これにディーイープリームスは背筋に悪寒が走った。

『こいつ…私に何を持たせる気だ?!』



怪訝そうにする主君へ、ロギオスは不気味な笑みを浮かべて告げた。

「私は聖女陛下の臣下ではありますが、主治医でもあります。私が随行出来ない以上、代わりとなる物をお持ち頂くしか無いかと」



魔力出力を制御出来ない…かも知れないディーイー。

これを治療するには、どうやらロギオスに因る細かな観察が必要らしい。

かと言ってディーイーが龍国行きを止めないのは明白。

ならば、せめて観察用の道具を持てと言う訳だ。



「う、うん…分かった。気は乗らないけど…」

ディーイーは渋々受け入れる。



「では、これを…」

白衣の内側から何かを取り出したロギオスは、それをディーイーへ徐に手渡した。



「んん? 卵?」

首を傾げるディーイー。

それは鶏の卵より二回りほど小さく、卵にも見えるが鉱石のようでもあった。

何よりロギオスが手ずから渡したにしては、大して魔力も一切感じず魔導具にも見えない。



「火炎島に到着してから、それを優しく割って頂けますかな?」



「やっぱり卵なんだ?」

特に模様も無い真っ白な卵?を、ディーイーはマジマジと見つめた。



「さて、どうでしょうね。只、注意点が1つ…それを肌身離さず持っておいて下さい」



『まぁメディ.ロギオスが私に危害を加える訳も無いしな…』

「ふ〜ん……分かった。じゃぁ此処に入れとこ、」

頷いたディーイーは、その卵らしき物を胸の谷間に仕舞う。



それを見たティミドが何故か慌てる。

「ま、待って下さい! そんな怪しい物体を、その様な場所に入れるのは如何なものかと」



「ふぇ? そう…?」

しかしティミドの制止など気にも止めず、ディーイーはロギオスに告げた。

「じゃあ早々に転送魔法の補助をしてくれる?」



「プリームス様ぁ〜〜」

「えっ?! もう向かうの?!」

「準備とかしなくていいのか?!」

意に介さない主君へ泣き付きそうティミドに、突然の火炎島行きに戸惑うガリーとリキ。



一方、ロギオスは淡々と返した。

「承知しました。では魔法機構を発動して下さい」



「大丈夫、大丈夫。取り敢えず、皆は私の傍に集まってね」

そうして直ぐにディーイーは魔法を発動させてしまう。



「ちょっ! 本当に転送する気?!」

慌てるガリー。



ディーイーは意外に感じる。

『ほほう…転送魔法自体を信じるのか』


そもそも転送魔法自体が人間の域を超えているのだ、なのに転送されるのを確信じるのは変だ。

つまり見知っているか、或いは体験した事が有るかだろう。


『ふむ…そうなると神獣の加護で転送魔法、若しくは転送呪法が普通に可能そうだな』

実際、火炎島の騒動には他国の聖女が絡み、転送呪法まで行使した。

そう考えると北方の魔法水準は、大陸屈指と言えるかも知れない。



因みにリキは、何が起きるのか良く分かって居ない様子だ。

「おいおい! 今から火炎島に飛んで行くのか?!」



「飛んでって…違うわよ! 転送するの!」



ガリーに突っ込まれるが、いまいちリキは釈然としていない。

「んんん?」



そしてティミドはと言うと、こちらも色々と納得していない様子である。

『はぁ…何だか嫌な予感しかしないわ』


主君の病状?が気になるだが、これをメディ.ロギオスに委ねるのが一番の懸念だ。

その次に、そんな状態のまま北方に向かうのも本当は同意出来ない。


『せめてメーロースさんでも居れば、少しは私も安心出来るのに…』

かつて二代目ラスィア女王を倒そうと、行動を共にした戦友。

それほど以前の事では無いが、妙にメーロースの事が懐かしく思えた。


そして直ぐに、そんな自分へ落胆する。

『駄目ね…他人に頼ろうとするなんて』


過去を懐かしく思うのは、別に悪い事では無い。

しかし過去に囚われ思考停止するのは、正に只の現実逃避でしかないのだ。

どんなに納得いかずとも、また不安ばかり募ろうとも、何かを理由に考える事を止めてはいけない。

それが南方最強の軍事国家である騎士なら、尚更の事である。


『兎に角は、私が最善を尽くしてプリームス様を守るしかない』

そうティミドが心に誓った時、ディーイーの真上に黒い球体が顕現した。

転送魔法の要である斥候魔法エクスプローラートルだ。



するとロギオスが窓辺に立って尋ねた。

「聖女陛下…火炎島には帰送点を設置していますよね?」



「うん。後は主城ウラニオトクス上空の帰送点から、火炎島の帰送点を繋げるだけ。その繋げるのが大変だから魔力補助をして欲しいの」



「ふむ。ならば次元を圧縮して距離を縮めるか、又は斥候魔法エクスプローラートルの魔力補助か…どちらかになります。如何しますか?」



「え…? 火炎島の座標が分かるの!?」

流石のディーイーも驚いてしまう。

次元を圧縮する…それは要するに圧縮する方向が分かっているに他ならないからだ。



「私が分からない場所は殆ど有りませんよ」

然も当然のように返すロギオス。



『うへっ…それが分かってたなら、わざわざ帰送点を利用したりしなかったのに!』

などと文句を言いかけるが、我慢するディーイー。

勝手に斥候魔法エクスプローラートルを発動させたのは自分な為だ。

「じゃ、じゃあ次元を縮めながら斥候魔法エクスプローラートルを飛ばすから、両方への魔力補助をお願い」



「承知しました。では失礼して…」

とロギオスは言うと、躊躇う事なくディーイーの右手を握った…それも両手で包み込むように。



「こっ…!」

こらっ!…と言いかけて、何とか堪えたティミド。

『くぅぅっ!! 私にプリームス様を補助出来る魔法力と叡智が有れば…』

悔やまれて為らなかった。


この世は力と能力の有る者が、その独自の行動や判断を許される。

つまり"資格"な訳だが、無いなら黙って見守るしかない…それが世の常なのだから。


それを十二分に分かっているだけに、ティミドは己に言い聞かせるしかし術が無いのであった。

『今だけの我慢…今だけだから…』




楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ