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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1422話・配慮の行き違い

刹那の章III・政略結婚(28)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

聖女王専属の意匠裁縫師となったイリースィオ。

この大役に本人では無く、親であるシンセーロとドロースが大喜びした。

しかしその反面、不手際をしないか心配で仕方ない様子も見せる。


「本当に大丈夫なのか?」

家族団欒の夕食の席で、シンセーロはイリースィオへ複雑な面持ちで尋ねた。



「お父様も心配なさるのですね。聖女陛下は難しく考えず、肩の力を抜くように言われましたよ」



あっけらかんと返す娘に、やはりシンセーロは不安を拭えない。

だがプリームスが身内に対して、特に女子に優しいのも事実だ。

『ここは少し様子を見るしかないか…』

決まってしまった物を今更変えられないのだから。

「そうか…ならば誠心誠意尽くしなさい」



「勿論です!」

食事そっちのけでイリースィオは元気に頷いた。



色々と心配事が増え頭を抱えるシンセーロは、次にティミドへ尋ねる。

「で…ティミドは聖女陛下に随行すると、」

これもまた心配事の1つだ。



「はい。"ご存知の通り"、プリームス様にはお目付け役が必要です。そして今直ぐに動けるのは私しか居ません、ならば自明の理かと」



ティミドの言葉に反論出来ず、シンセーロは少しばかり唸ってしまう。

「う〜む……しかしなぁ…」

ティミドは補佐官として優秀であり、傍を離れられては困るのも事実だった。



「お父様…プリームス様と御自身、どちらが大切ですか?」



ティミドから強い眼光を向けられ、ついシンセーロは目を逸らしてしまう。

「うむむ…勿論のこと聖女陛下が最も大切だ」

『姉妹2人して、ここまで肝が据わっていたか?!』

以前のティミドとイリースィオには考えられない様子だ。



「では、私はプリームス様に随行致します。既にプリームス様のご許可は頂いているので、問題有りませんよね?」



「分かった。そもそも補佐官の任は本国で決まった事…そこには聖女陛下の意向が有った筈。それを変更されると言うならば、私は大人しく従うまでだ」

プリームスの名を出された以上、臣下のシンセーロとしては異議を唱えられる訳も無い。

要するに末娘イリースィオと同じ状況と言えた。



一方、ティミドはと言うと、

『お父様…ごめんなさい』

などと勝手な行為に内心で謝罪しつつも、ほくそ笑んでしまう。

後は滞り無く火炎島へ向かうだけだ。



「ところで聖女陛下のご様子は?」

一応、明日が主城ウラニオトクスを発つ予定だが、昼食以降から一切姿を見せずシンセーロとしては心配で為らない。



「大事をとってベッドで安静にされています。ですが魔法で戻るとなると、体に負担が掛からないか心配です…」

少し気落ちした様子で答えるティミド。

プリームスが全身筋肉痛なのは、自分の所為なだけに申し訳無さで一杯である。



「そうだな…急がないのであれば、船に因る移動も視野に入れた方が良かろう。それなら同時に軍事支援の先遣隊も随行出来る」



「はい…プリームス様のご意向を確認しておきますね」

先遣隊が随行すれば、万が一の際は心強い。

されどプリームスと2人きりになれないのは、ティミドにとって辛くもあった。

『はぁ…また利己的な事ばかりね、私は…』

そして自己嫌悪に陥るのである。


また2人きりになれない理由は、実は他に有ったりする。

それは主君を思い配慮した結果なのだが、何とも儘為らないと思わざるを得ないのだった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






ティミドが部屋に戻ると、プリームスは寝室のベッドでぐったりしていた。



「プリームス様、お加減は如何ですか?」



傍まで来て心配そうに尋ねるティミドに、プリームスは苦笑いを浮かべる。

「うん…痛みは随分とマシにはなったよ。何とか明日には発てるかな」



「左様ですか。食事はどうなさいますか?」

食欲が無かったプリームスは、招待されていた夕食会を断っていたのだ。

元から食が細いのに更に抜いてしまえば、尚のこと食べられなくなる。

だからこそ食べて欲しいのだが、ティミドが無理強い出来る訳も無い。



「スープでも貰おうかな。昼食も余り食べられなかったし…」

そう答えたものの、実は全く食欲が無いプリームス。

せめて何か口にしないと、ティミドを心配させてしまうので仕方無くだった。



「ご無理をしていませんか?」



「え…? な、何の事かな?」

咄嗟に惚けるが、うっかりプリームスはどもってしまう。



「やっぱり無理をされていたんですね。ひょっとして昼食会の時からですか?」



「う〜ん…」

何故か嘘を付けず、誤魔化しにもならないプリームス。



「はぁ……やはり魔力を使い過ぎた影響ですよね? そうなると明日は火炎島まで転送魔法を使えないのでは?」

ティミドは呆れてしまい溜息が出た。

臣下である自分に心配させないよう配慮したのだろうが、それで主君であるプリームスが無理をしては意味がない。



「多分…大丈夫だと思う…」



自信なさげに答えられては、ティミドとして取れる行動は1つだけだ。

「お急ぎでないのなら、もう船を使って火炎島に向かうしかりませんね。と言うか、船での段取りをしておきます。宜しいですね?」



「え?! そんなの何日掛かるか……ハクメイが心配しちゃうよ」



「私や他の臣下の心配は無下に為さるのですか? それでなくとも本国では…」

宰相や王妃が気を揉んでいるに違いないのだ。

だがそれを口にするのは、ティミドとしては躊躇われた。

本国から家出して来たのに、それを引き合いに出しては酷だからだ。



「うぅぅ……」

するとプリームスは、ぐうの音も出ず泣きそうな表情を浮かべた。



『あぁ……私とした事が…』

心配するあまり、ティミドは配慮に欠けた言動をしてしまった。

それで主君を傷付けたり、困らせては本末転倒である。

「も、申し訳ありません! 出過ぎた言い様でした」



急に土下座からの謝罪をされ、プリームスは呆気にとられ泣き顔が引っ込んだ。

「え?え? どうしてティミドが謝るの?!」



「え? あ……その…飽く迄も私は臣下ですので、諫めるにしても言い方が……」



「プッ…!」

そんなティミドを見て、プリームスは小さく笑いが漏れた。



「プリームス様?!」



「あ~~ごめんごめん。お互いに気を遣い過ぎたんだね…きっと。それで食い違うなんて滑稽だと思ったの」



「あ……」

全くその通りだとティミドも思えた。

ならば一方的に配慮するのでは無く、相手から直に気持ちを聞いて、そして意を汲んだ上で配慮すべきだろう。

「そうですね…では明日になってから、もう一度考えましょうか」



「うん…色々とゴメンね。それに有難う」


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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