表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
1514/1769

1421話・イリースィオの進物(2)

刹那の章III・政略結婚(28)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

贈り物の箱を開けたティミドは、その中身に驚きを隠せないでいた。

何と扇状的な下着の上下が入っていたからだ。

「こ、これは流石に…」



「流石に…何ですか?」

不思議そうに尋ねるイリースィオ。



「……隠すべき場所が隠せていないと言うか…」

細かく指摘する事をティミドは躊躇う。

『こんなの…が見えちゃうわ!』



「んん? どうして隠す必要が有るのですか?」

イリースィオは首を傾げる。



「へ…? どうしてって…そもそも下着は、大事な秘部を隠す為に有るのよ」



「普通はそうでしょう。でも私が贈る物は2人だけの逢瀬に使って貰いたいのです。つまり、どうせ裸になるのですから、映える下着をと思ったのですよ」



「……」

憚る事なく説明する妹に、ティミドは唖然としてしまう。



「え? どんな下着なの? 私にも見せて」

明らかに動揺するティミドの様子から、プリームスは好奇心が刺激された。



イリースィオは手早く下着を取り出して、動けない主君の前に広げて手で吊るして見せた。

「どうぞ! 聖女陛下」



「おおっ?!」

奇抜?な意匠にプリームスも驚かされる。

『こんなの誰が考えたのやら…』


上下一組の下着で色は黒だ。

そして下のショーツは美しいレースで彩られているが…透け透け。

しかも隠すべき場所が見事にパカっと開いている。

また上の下着も同じくレースで飾られ、同様に突起になる部分がパカっと開いているのだった。



「如何でしょうか? 愛する者同士の逢瀬にぴったりだと思いませんか?」

自信満々に感想を聞こうとするイリースィオ。



これにプリームスもタジタジである。

「え〜と…うん…良く考えられてるわね」



「後は色違いの物や、スリップ、キャミソール、ビスチェ、テディなど揃えてあります。きっと御満足頂けるかと」



鼻息荒く説明するイリースィオだが、プリームスとティミドはドン引きだ。

「そ、そうなの…凄いわね…」

「そんなに沢山…」



すると鈍感なのか、又は反応を気にしていないのか…イリースィオの力説は続く。

「下着は確かに秘部を隠し守る物です。しかし、その必要が無い場合は無用の長物なのでしょうか? いいえ…違います!」



「え? ち、違うの?」

つい反応してしまうプリームス。



その所為でイリースィオの説明は勢いを増した。

「はい! 睦事には脱がせる楽しみもあるでしょう。ですが後は用を為しません…それでは勿体無いのです。なので下着を脱がせず、そのまま目でも楽しめる意匠を考案したのですよ」



「ちょ、ちょっと待って! 今…考案と言った?」

慌てて聞き返すティミド。



然も当然のようにイリースィオは答えた。

「はい…そう言いました。これらの下着などは私が考案し、私自身が作成した物ですよ」



「あ、貴女が…1人でこれを?!」



「そうですが…何か変ですか?」



「そ、そうなんだ……」

何の才能も無いと思われていた妹…その彼女が裁縫や意匠の才能を持っていた。

この事実にティミドは驚かされるばかりだ。



その驚きはプリームスも同じだった。

『ほえ~~15歳の女の子が考えるには少し過激だが…物自体は素晴らしいな。これは著名な裁縫士の銘柄にも引けを取らないぞ』



「それで…如何でしょうか? 受け取って頂けますか?」

ここで急に怖々(おずおず)となるイリースィオ。



『あぁ…そう言う事か』

プリームスは察した。

ここまで捲し立てるように力説したのは、イリースィオの中で自信は有っても喜ばれる確信が無かったからだろう。

故に理解して貰おうと力んでしまった…そう考えると可愛らしく思える。

「うん、有難く受け取らせて貰うよ。それと意匠に対する繊細な感性には感服した。実に素晴らしいよ」



「あ、有難う御座います!」

プリームスの言葉に、イリースィオは感激する。


本音で言えば、聖女王とティミドとの関係が更に良くなる事を願って下着を作ったのだ。

それは詰まり聖女王への贈り物と言いつつも、姉の幸せを願ったに他ならない。

『なのに…このお言葉』

有難さと申し訳なさで気持ちが一杯になった。



「そこで提案なのだが…いいかな?」

少し改まった様子で確認を取るプリームス。



「え? あ、はい! 何なりと」

怪訝さを抱きつつも、イリースィオが嫌と言える筈も無い。



「君の意匠は本当に素晴らしいと思う。例えば用途や状況に沿った考え、また見るからに着心地の良さも窺える。それでだ、良ければ私専属の意匠師、若しくは裁縫師にならないかね?」



まさかの提案にイリースィオは固まってしまう。

「え………」



いつも主君の言動には驚かされるが、今回もまた突拍子も無くティミドは半ば唖然とする。

「……よ、宜しいのですか?」


"王の専属"と付けば、それなりの権威を有する事になる。

そんな地位に何の実績もない15歳の少女が就くには、些か問題が有るように思えた。



「ん? 何か心配する事があるの?」

不思議そうに問い返すプリームス。



「いえ…プリームス様が宜しいのなら、私は特に異議は有りません。只、どんな仕事にも期日は有り、また要求される一定の水準が存在しますよね? それをイリースィオが満たせるかと思うと…」

正直、妹の事ながらティミドは不安で仕方がない。



「んん? その考えは良く分からないな…。ティミドが言ってるのは建前で、他に真意が有るんじゃないの?」



鋭いプリームスの突っ込みに、ティミドはハッとさせられた。

「…!」

『あ……私は無意識に…』

妹を主君から遠ざけようとして居たのかも知れない。


実際、自分の事ばかりを考え、妹が主君プリームスに近付くのを良く思っていなかった。

挙句の果てには監視する為、2人の後を付け回す始末…恥ずかしくて仕方が無い。

「申し訳有りません…私は利己的な行動ばかりしていたようです」



「まぁまぁ、そんかに落ち込まないで。誰だって利己的な部分は絶対に有るから。問題は度が過ぎず、他者との関係を崩さない事が重要なのよ」

そこまで言ったプリームスは、イリースィオを見つめて尋ねた。

「で、貴女の返答は?」



「え? あ! 聖女陛下のご提案を断る理由は御座いません。私なんかで務まるか自信は有りませんが、ご期待に添えるよう頑張ります」



「そ、そう…良かったわ。兎に角は肩の力を抜いてね…」

世界は多種多様な才能で動かされている。

その中でも衣食住は人にとって欠かせない物で、だからこそ重要度も高い。


だがプリームスはイリースィオの意外性に着目した。

何か面白い事をやってのける…そんな淡い期待を抱いたのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ