1412話・急襲?の聖女王
刹那の章III・政略結婚(25)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
シンセーロとティミドの前に現れた人物…バドズィーナミア。
彼は東方諸国の治安維持軍司令を務め、東方きっての武人でもある。
元々はラスィア女王直属の特務騎士で、女王の断罪人の二つ名を持つ…現在は永劫の騎士なので、そう呼ばれる事はないが…。
加えて拳王イースヒースの弟子となり、その武を更に磨き上げた生粋の武芸者だ。
その実力は極凶級魔獣を単身で撃破可能で、単純な兵力数で鑑みれば一騎当千を優に凌ぐ。
故に偶然とは言え主城に立ち寄った彼に、シンセーロは歓喜を抑えられ無かった。
「おおっ! 何と良い間か! 卿が来てくれて心強いぞ!」
「んん? 状況が良く分らないが…取り敢えずは有事のようですな。私で何とかなるのなら、是非にでも協力しましょう」
これに訳も分からないなりにも、バドズィーナミアは快く頷く。
「バドズィーナミア殿…お久しぶりです」
間髪入れずにティミドが挨拶を口にした。
”同格”の永劫の騎士が此処にも居るぞ…と控えめに主張したのである。
「久しいなティミド卿。先日に結婚したと聞いたが…贈呈出来る物を持ち合わせて無くてね、済まない。兎に角、結婚おめでとう」
バドズィーナミアに謝罪と祝辞を同時にされ、ティミドは慌てた。
「いえいえ! とんでも無いです。有難う御座います」
その後、3人で会議卓を囲み、主城を中心に描かれた見取り図を眺める。
この図面には主城の防衛機構が事細かく記され、籠城などの防衛戦時に参考にする物だ。
「近衞騎士は防備に、他の者には主城周辺の調査に向かわせている。何らかの来襲か襲撃ならば直ぐに分かるだろう」
シンセーロの説明に、ティミドとバドズィーナミアは頷く。
「はい、今は報告を待ちましょう」
「うむ…」
ここで過剰に反応しては、仲間や部下を混乱させるだけである。
故に"冷静に待つ"事も、指揮官としては重要な振る舞いと言えた。
しかし待てど暮らせど一向に襲撃者の情報が入って来ない。
また、これと言った被害の報告も入らなかった。
『どう言う事だ? もしや…結界の誤認反応なのか?』
だが聖女王が施した結界が、果たして誤認など起こすだろうか?
不思議で為らないシンセーロは、どうすべきか頭を抱えた。
警報も鳴り始めて5分程で止まり、今は実に静かなものである。
されど主城内の人間は警戒体勢のままで、この温度差が随分と滑稽に見えなくもない。
痺れを切らせたバドズィーナミアが言った。
「結界の誤認反応なのでは…」
とうとう躊躇っていた事を代弁され、シンセーロは顔を青ざめさせる。
「そんな筈は無い。聖女陛下が施した結界に不備が有る筈も無い…」
などと反論するが、その語尾からは力が失われる始末。
「一旦ですが、警戒体勢を解くが良いかも知れませんね」
見兼ねたティミドが補佐官らしく意見を呟いた。
その時、1人の近衞騎士が、慌てた様子で大食堂へ駆け込んで来た。
「大総督閣下!!」
「何事か?! やはり襲撃者か?!?」
シンセーロは漸く姿を見せたかと、つい柄にも無く大声を上げてしまう。
『襲撃者め…随分と勿体振りおって』
「い、いえ…今しがたセンシア騎士団長が…」
妙に言い淀む近衞騎士。
「何だ? はっきり言わぬか!」
「その…聖女陛下をお連れされたのですが…」
「なっ?!」
この瞬間、全てを悟ったシンセーロは言葉を失うのだった。
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「いや〜〜すまない。疲れて主城の屋根で居眠りしてしまったよ」
などと苦笑いしながらプリームスは言った。
現在、夜の9時。
プリームスを含めた主城の主要面子は、大食堂にて歓談中だ。
シンセーロは酷く疲れた様子で相槌を打った。
「左様ですか……」
「あ…ひょっとして警報を作動させたのを怒ってる?」
恐る恐る尋ねるプリームス。
これにシンセーロは完全に諦めた語調で返す。
「いえ…ご自身で施された警報結界に、ご自身で引っ掛かっても我らは何も言えませぬ。十分な試験運用が出来たと思う事にしましょう」
「何だか棘を感じるんだけど…」
「それは錯覚かと?」
とぼけるシンセーロに、傍で聞いていたバドズィーナミアが吹き出した。
「ぶはっ! いつもシンセーロ閣下は、こんな感じに聖女陛下と遣り取りを?」
「いや…そんな訳があるまいて」
さっきの遣り取りは勢いと流れ故だが、本来なら有り得ない事だ。
なので慌ててシンセーロは否定した。
「プリームス様はお優しいですから、皆んなザックバランになってしまうんですよね。ですからバドズィーナミア卿も気を付けて下さい」
とティミドが気を利かせて、尚且つ釘も刺す。
正直、身内に甘く優しすぎるプリームスに、ティミドは心配で為らなかったのだ。
「ははは…留意しておきましょう。で、聖女陛下は単身で来られたのですか? 見たところ随行者も居ないようですが…」
バドズィーナミアの質問に、プリームスは少し言い難そうに答えた。
「実は大総督に頼み事が有ってね。話せば長くなるのだけど…」
シンセーロは居住まいを正した。
自分たち東方の民は、聖女王プリームスに返せない程の恩義が有る。
ならば可能な限り聖女王の要請に応え、尽力すべきなのだ。
「はい、私どもで役に立てるなら、幾らでもお伺い致しましょう」
『おおぅ…そんなに気張らなくても良いのだけど…』
「そ、そう言って貰えると心強いわ」
若干だがプリームスは引いてしまう。
確かに東方を救う形にはなったが、全ては興味と自己満足に因る結果なのだ。
そんな軽い気持ちなのに、ここまで畏まられると何だか居た堪れなくなる。
『と、取り敢えず用件を伝えて、直ぐ火炎島に戻ろう』
しかしながら現実とは中々に上手く行かないものだ。
この後に色々と起こり?、想定より随分と帰還が遅れる羽目になるのだった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




