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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
1505/1769

1412話・急襲?の聖女王

刹那の章III・政略結婚(25)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

シンセーロとティミドの前に現れた人物…バドズィーナミア。

彼は東方諸国の治安維持軍司令を務め、東方きっての武人でもある。


元々はラスィア女王直属の特務騎士で、女王の断罪人(カタディーキー)の二つ名を持つ…現在は永劫の騎士(アイオーン・エクェス)なので、そう呼ばれる事はないが…。

加えて拳王イースヒースの弟子となり、その武を更に磨き上げた生粋の武芸者だ。


その実力は極凶級魔獣を単身で撃破可能で、単純な兵力数で鑑みれば一騎当千を優に凌ぐ。

故に偶然とは言え主城に立ち寄った彼に、シンセーロは歓喜を抑えられ無かった。

「おおっ! 何と良い間か! 卿が来てくれて心強いぞ!」



「んん? 状況が良く分らないが…取り敢えずは有事のようですな。私で何とかなるのなら、是非にでも協力しましょう」

これに訳も分からないなりにも、バドズィーナミアは快く頷く。



「バドズィーナミア殿…お久しぶりです」

間髪入れずにティミドが挨拶を口にした。

”同格”の永劫の騎士(アイオーン・エクェス)が此処にも居るぞ…と控えめに主張したのである。



「久しいなティミド卿。先日に結婚したと聞いたが…贈呈出来る物を持ち合わせて無くてね、済まない。兎に角、結婚おめでとう」



バドズィーナミアに謝罪と祝辞を同時にされ、ティミドは慌てた。

「いえいえ! とんでも無いです。有難う御座います」



その後、3人で会議卓を囲み、主城を中心に描かれた見取り図を眺める。

この図面には主城の防衛機構が事細かく記され、籠城などの防衛戦時に参考にする物だ。



「近衞騎士は防備に、他の者には主城周辺の調査に向かわせている。何らかの来襲か襲撃ならば直ぐに分かるだろう」



シンセーロの説明に、ティミドとバドズィーナミアは頷く。

「はい、今は報告を待ちましょう」

「うむ…」


ここで過剰に反応しては、仲間や部下を混乱させるだけである。

故に"冷静に待つ"事も、指揮官としては重要な振る舞いと言えた。



しかし待てど暮らせど一向に襲撃者の情報が入って来ない。

また、これと言った被害の報告も入らなかった。



『どう言う事だ? もしや…結界の誤認反応なのか?』

だが聖女王が施した結界が、果たして誤認など起こすだろうか?

不思議で為らないシンセーロは、どうすべきか頭を抱えた。


警報も鳴り始めて5分程で止まり、今は実に静かなものである。

されど主城内の人間は警戒体勢のままで、この温度差が随分と滑稽に見えなくもない。



痺れを切らせたバドズィーナミアが言った。

「結界の誤認反応なのでは…」



とうとう躊躇っていた事を代弁され、シンセーロは顔を青ざめさせる。

「そんな筈は無い。聖女陛下が施した結界に不備が有る筈も無い…」

などと反論するが、その語尾からは力が失われる始末。



「一旦ですが、警戒体勢を解くが良いかも知れませんね」

見兼ねたティミドが補佐官らしく意見を呟いた。



その時、1人の近衞騎士が、慌てた様子で大食堂へ駆け込んで来た。

「大総督閣下!!」



「何事か?! やはり襲撃者か?!?」

シンセーロは漸く姿を見せたかと、つい柄にも無く大声を上げてしまう。

『襲撃者め…随分と勿体振りおって』



「い、いえ…今しがたセンシア騎士団長が…」

妙に言い淀む近衞騎士。



「何だ? はっきり言わぬか!」



「その…聖女陛下をお連れされたのですが…」



「なっ?!」

この瞬間、全てを悟ったシンセーロは言葉を失うのだった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






「いや〜〜すまない。疲れて主城の屋根で居眠りしてしまったよ」

などと苦笑いしながらプリームスは言った。



現在、夜の9時。

プリームスを含めた主城の主要面子は、大食堂にて歓談中だ。



シンセーロは酷く疲れた様子で相槌を打った。

「左様ですか……」



「あ…ひょっとして警報を作動させたのを怒ってる?」

恐る恐る尋ねるプリームス。



これにシンセーロは完全に諦めた語調で返す。

「いえ…ご自身で施された警報結界に、ご自身で引っ掛かっても我らは何も言えませぬ。十分な試験運用が出来たと思う事にしましょう」



「何だか棘を感じるんだけど…」



「それは錯覚かと?」



とぼけるシンセーロに、傍で聞いていたバドズィーナミアが吹き出した。

「ぶはっ! いつもシンセーロ閣下は、こんな感じに聖女陛下と遣り取りを?」



「いや…そんな訳があるまいて」

さっきの遣り取りは勢いと流れ故だが、本来なら有り得ない事だ。

なので慌ててシンセーロは否定した。



「プリームス様はお優しいですから、皆んなザックバランになってしまうんですよね。ですからバドズィーナミア卿も気を付けて下さい」

とティミドが気を利かせて、尚且つ釘も刺す。

正直、身内に甘く優しすぎるプリームスに、ティミドは心配で為らなかったのだ。



「ははは…留意しておきましょう。で、聖女陛下は単身で来られたのですか? 見たところ随行者も居ないようですが…」



バドズィーナミアの質問に、プリームスは少し言い難そうに答えた。

「実は大総督に頼み事が有ってね。話せば長くなるのだけど…」



シンセーロは居住まいを正した。

自分たち東方の民は、聖女王プリームスに返せない程の恩義が有る。

ならば可能な限り聖女王の要請に応え、尽力すべきなのだ。

「はい、私どもで役に立てるなら、幾らでもお伺い致しましょう」



『おおぅ…そんなに気張らなくても良いのだけど…』

「そ、そう言って貰えると心強いわ」

若干だがプリームスは引いてしまう。


確かに東方を救う形にはなったが、全ては興味と自己満足に因る結果なのだ。

そんな軽い気持ちなのに、ここまで畏まられると何だか居た堪れなくなる。

『と、取り敢えず用件を伝えて、直ぐ火炎島に戻ろう』


しかしながら現実とは中々に上手く行かないものだ。

この後に色々と起こり?、想定より随分と帰還が遅れる羽目になるのだった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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